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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第51話

夜七時にもう一話投稿します

 災害デガ。こちらの言葉で止まらないものを意味し、人々がそう名付けた。

 それが通れば後は無し、森も海も生物も全てが死に絶える災害である。天使によって封印されていたが、デガが持つ死の力により封印すら死んだ。

 こいつが動くと面倒だから彼に処理を頼んでたけど、中々難しい。元々直ぐ処理出来るならやっていた事だし、彼の性格もあるからね………。


「でも、今は彼に感謝だ。さあ、君はどうやって切り抜ける?」


 見捨てて逃げるか立ち向かうか、これを乗り越えれば君は次の舞台に立てる。

 画面に向けられる眼差しは熱く、その笑いは不気味だった。


————————


「団長!考え直してください。皆死んじゃいます!」

「今我々が逃げれば、死ぬのは国民だ」

「だから一緒に避難を………」

「黙れ!今から避難して間に合う訳が無いだろう!少しでも時間を稼ぐのが我々の仕事だ!」


 団長の気迫に押されて、僕は黙った。彼らは騎士、国を民を愛し守ると誓った人たちだ。僕が何を言っても考えは変わらないだろう。

 それに気付いた僕は、決意した。必ず守ろうと………。僕が出来ることは限られているかもしれないけど、それでもこの人たちを死なせてはいけない。

 

「団長、陛下は………」

「女帝は北方の掃討任務に出られている。早くても援軍は五時間はかかる」


 皆が黙った。その場に重い空気が流れるが、団長はそれを一蹴した。


「全軍傾聴せよ!敵は災害。住民の避難が完了するまで我々が時間を稼がねばならない!臆するな、必ず我らが皇帝が民を守って下さる!」


 皆の目に光が灯り始めた。それだけ女帝の存在は大きいのだろう。


「剣を取れ!弓を構えろ!我らが故郷を汚い足で踏み荒らそうとする愚か者に教えてやるのだ!我らが帝国の力を!」

「「「「オオオオオオ!!!」」」」


 一斉に武器を取り隊列を組んでいく、中には友人を励ますものや首から下げたペンダントを握る人もいた。

 皆が覚悟を決めたその時、それが見えた。

 頭に生えた大きな黒い羊角。全身が黒い毛で覆われ、四本の足の先は鋭い爪が五本伸びている。尾は三本に分かれ、先には目のない人の顔のような物が付いている。

 黒から除く真っ赤な瞳は、確実にこちらをとらえた。


「ギィイェエエエエエ!!!」


 思わず耳を抑えたくなるほどの大きな声と共に、地面が黒く染まり黒い何かが現れた。

 

『あれは………あの時の化け物?』


 それには眼も鼻も無く、黒い人型の何かだった。ゴーラ王国に行く途中で見たあれだ。

 つまり、一度デガはあそこを通ったという事。でも何故一度も会わなかった?この前はクエストなんて表示もされなかったし………。


『恐らく山脈を抜けてきたからでしょう』


 それなら会わない可能性もあるな。

 あの時は運が良かったと思い、今は目の前の事に集中することにした。

 山脈と帝国の間の平野に、槍を突き立てる音が響く。その大きな音と共に、それよりも更に大きな声が戦場に響いた。


「我らに女帝の加護を!」

「「「我らに女帝の加護を!!!」」」


 戦闘が始まった。デガはゆっくりとこちらに近づき、黒いものが最前線の騎士達と戦闘を開始した。

 デガを避ける様に左右に逃げてきたモンスター達を、他の騎士団とクエストを受けたプレイヤー達が対処している。その数は倍以上で危険度も高い物が数体混じっている。

 全七団の内三団がデガの撃退、他四団が左右のモンスターの対応をしている。デガとの距離はおよそ三キロ、到達時間は二時間ほどだろう。女帝の援軍なんてとても間に合わない。それにデガに近づけば死の力で徐々に命を奪われる。黒いものを倒して進むのも難しいだろう。

 皆戦っているが、進軍はゆっくり。負傷者が出れば交代している。僕は未だ戦闘に参加していない、負傷者の手当てをしている状態だ。

 何か策があれば良いけど、デガの対処法何てどの本にも書いていない。こんな時どうすれば………。

 借り物の知識に絶望していると、アイが口を開いた。


『ケテルを頼りましょう。今はそれが最善です』

「でも………」


 一瞬、迷ったがそんな暇は無いと自分を殴り懐中時計を取り出した。

 会話の方法は、貰ったセフィラに触れてケテルの名前を呼ぶだけ、MPを消費するが微々たるものだ。

 セフィラが一瞬だけ発光し、頭の中でザー………という砂嵐の音の様な物が聞こえた。


『何かありましたか?』

「ケテル!急で申し訳ないんですが、デガの対処法を教えてください!」

『デガ?あれの対処法ですか………』


 少し歯切れの悪い感じでケテルが言った。デガの対処法は無いのか?皆が助かる方法は無いのかと考えているとケテルは言った。


『あれの対処法はあるにはありますが、私がそれを言っていいのか………』

『ケテル、早く言わないと姉上に報告しますよ』

『………良いでしょう。対処法を教えます』


 アイが何故かケテルを脅したことで、ケテルは情報をくれた。

 ケテル曰く、弱点はあの尾に付いている頭らしい、あれが黒いものを制御しておりあれが壊れれば撃退なら可能かもしれないそうだ。

 僕はこのことを急いで団長に伝えた。だが………。


『黒頭の弱点は黒属性です。デガは反転の呪いを受けた生物ですから、黒属性の本来の弱点である光属性ではなく黒属性が弱点になっています』


 そうケテルが言ったことまで伝えると、団長は目を見開いた。そして、小さく声を漏らした。


「うちの団に、黒属性の攻撃が出来る者は一人も居ない………」

「え………」


 実質終わりだった。絶対に勝てない、なら今していることに意味が無かっただろうか………。

 そんな考えが頭をいっぱいにしてしまった。

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