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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第47話

 魔法を学びに来たわけじゃないので、そこそこ使える位の感じで試験を終わらせ、本命の剣術の試験に移る。

 対戦相手は同じ受験者で、武器は傍に置いてある木剣を使う。大剣も置いてあったのでそれを持つと、相手の男から馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。


「お前、その見た目で使えんのか?」

「一応は」

「まあいい。俺も運がいいな、楽に合格できる」


 最後の言葉は、聞こえないように言ったつもりだっただろうが、僕にはしっかり聞こえた。

 急に馬鹿にされて声を荒げてしまいそうになったが、人間性でバツを付けられたらたまったもんじゃないと言い聞かせた。

 

「始め!」


 開始の合図と同時に、相手が切りかかってくる。

 自信満々だったから警戒して、剣を受けずに回避したがそれで体制を崩して転んだ。

 こんな奴に馬鹿にされたのかと思うと、さっきの怒り何て吹っ飛んでしまった。相手をしてるのも馬鹿らしくなったので、剣の腹で頭を打って終わらせた。

 何とも言えない爽快感を覚え、満足しその場を去った。合格発表は明日の朝、明日は丁度日曜日なので今日を試験日に選んだ。仕様が変わってからスケジュールをしっかり考えないといけなくなったのは痛い所だ。

 まだ昼過ぎ。時間もたっぷりあるし少し街を見てまわることにした。

 ついでに情報収集を忘れずに行う。

 所々戦いの爪痕が見えるが、それでお住民は笑ってるし今の方が昔より百倍良いとも言っていた。余程昔の皇帝が悪かったのだろうか?

 逆に今の皇帝が良すぎるのかもしれない。それがプレイヤーらしいからビックリだ。もしかしたら政治家とかかもしれない。

 そんなことを考えながらウロウロしていると、如何にもな路地裏で如何にもな集団が人を囲んでいた。


『既視感がありますね』

「んー………確かに、多いねこういうの」


 無視する理由も無いので助けに入ることにした。

 男四人に対して一人。顔はフードで覆われて見えないが、背丈的に中学生ぐらいだろう。


「上が変わっても下は未だの様ね、あいつは何してるのかしら」

「ああ?何ブツブツ言ってんだ、良いから金出せよ!身なりからしていいとこのガキだろ」

「………こんなことになるなら爺のいう事を聞いておけば良かったわ」


 少し不穏な言葉も聞こえたが、今さら面倒な事に巻き込まれそうだからと回れ右するわけにもいかない。

 僕は破断を取り出して、一人の男の後頭部目掛けて投げつける。もちろん刃は出していない。

 想像以上に吹き飛び、自分のステータスの伸びを実感したところで二人に抑えられそうになる。が、左右から来た男達が伸ばした腕を引っ張り、頭と頭を打ち付け気絶させる。


「何だお前!」

「えっと………あ!通りすがりの旅人です」

『………マスター………』


 殴り掛かって来た最後の男は、膝蹴りで顎を砕いた。

 四人纏めて縄で縛り、丁度巡回していた兵隊さんに引き渡す。


「ありがと………まあ助かったわ」

「良かった、じゃあ僕は行くから」

「ちょ、ちょっと!」

「………何でしょうか」


 このまま無視していければ………。何も聞かずに立ち去れればどれ程良かったか、自分が面倒ごとに片足を突っ込んでいるという認識ですら甘かった。

 いつの間にか、面倒ごとに肩を組まれていたなんて、普通は思わないだろう………。


————————


 場所は変わって喫茶店。人も少なく日当たりも悪いせいか、あまりいい所では無いと思ってしまった。でも注文した料理は直ぐに来たし、味も良かったから気にならなくなった。従業員の人が慌てていたり、少し噛んだりしていたが新人だろうか?

 目の前で、コーヒーを飲みながらこっちを見ている少女。さっきまではフードで見えなかったが、今は長い真っ白な髪を後ろで一つに結んでいる。

 青い眼もあってか、クールな印象だ。


「貴方、名前は?」

「ケントです」

「そう………」


 話が続かず気まずい時間が続く。

 元々コミュニケーション能力に欠ける僕も悪いが、話を振って会話をぶった切るのもどうかと思う。今のところ何のために来たのか分からないし、正直帰りたくなってきた………。

 料理も食べ終わり皿が下がって少ししたころ、彼女の方から話を始めた。


「貴方はどういうスタイルでこのゲームをしてるの?」

「僕は旅人ですね。最近始めたばかりですがタタミア王国とゴーラ王国を見てきました」

「そう。ここへはどうやって来たの?ゴーラ王国だと空路かしら?」

「まあ、そうですね」

「へえ………。意外とお金持ちなのね」


 少し話がかみ合ってない気もしたが、そのまま他愛もない話が続いた。

 一時間ほど経つと、彼女が何かを思い出したように席を立った。


「ごめんなさい!用事を思い出したからもう行くわ。今日はありがとう」


 そう言ってコーヒー代以上のお金を置いて店を出て行った。

 僕も自分の代金を払い、一応彼女のお金は別でとっておいて店を出た。今日はログアウトし、明日の合格発表に備えることにした。

 次の日の朝、合否を確認しに会場へ向かう。名前はあったのだが、横に追試という不穏な二文字が見えた。やはりあれではダメだったか………。

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