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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第45話

遅れました

 街を出て直ぐの草原、そこで僕は破断を斜めに地面に付きさしていた。これで伸ばせば移動できると言われたからだ。

 物は試し、早速破断を速めに伸ばす。


「うお!?」


 一瞬の抵抗感の後、みるみる景色が変わって行った。

 さっきの失敗もあるので、適当なところで滑空に切り替え、城門から見えないようなところで降りる。

 五時間を数分で移動できたお陰で、速めに防具を作ってもらえそうだ。

 

「身分証を」

「はい、どうぞ」

「………問題なし。通っていいぞ」


 審査もすぐ終わり、帝都に入る事が出来た。

 やはり首都は賑わいが違うし、建物の数や綺麗さも違う。元は平民の住む地区は汚かったらしいが、今はどの地区も差が無いらしい。これも女帝の統治力が良い証だろう。同じプレイヤーとは思えない程しっかり王様の様だ。凄いな………。

 女帝さんを尊敬しながら、鍛冶屋の場所を聞きそこへ向かった。

 全国で一番大きい鍛冶屋で、ここの親方をしているのが九帝の一人。NPCを含む一万という多くの弟子を取っていることから、大親方ドン・アロエと呼ばれる。

 鍛冶の腕は並び立つ者が居ないと言われる程の凄腕だ。この人に仕事を頼めれば良いんだが、そんな人の予定が空いてるわけもなく………。


「申し訳ありません。予約は三年先まで埋まっています」


 と、受付の時点で断られた。

 理由も分かるから、もうこの素材は永遠に眠ることになるのかと肩を落としたが、せっかくだから中を見ていくことにした。

 販売場も兼ねているここは、剣や防具も多く展示販売されている。良い防具何てたんまりあるのだ。

 見た目も性能も良い感じの物が多く、一つ気になったものがあったから値段を見てみたが、想像よりゼロが多かったせいで購入を断念。今は少し諦めきれずに販売場の椅子に座っていた。何が変わるわけでも無いが、竜から貰った宝石を眺めながらボーっとしていた。

 

『そろそろ諦めて剣の師匠を探すかログアウトしてください』

「はあ………」


 アイが呆れてそう言った。

 それでも眺めていると、ひげを生やした煤汚れの目立つおじさんに声をかけられた。


「お前。こんなところで何してんだ?」

「少し、現実逃避を………」

「おお………そうか。ん?お前、その手に持ってるもんは何だ?」


 僕が持ってる宝石を指し聞いてきたので、貰いものという事を説明しその素材で防具を作ってもらいたくて来た事も話した。

 するとおじさんは目を輝かせて言った。


「つまり、その竜の貴重な素材で装備が作れるってことか?」

「え?まあ、予約も無いしお金も無いしで諦めて帰る所です」

「ああ!?逃がすかよ、予約なんぞ知らん。俺は俺の作りたいものを作る」


 おじさんに連れられて、奥の鍛冶場に付いた。

 

「ほら、早くその素材を出せ」

「え?加工は親方しか出来ないって言われたんですよ」

「はあ?お前俺の顔も知らねえで装備作ってもらうつもりだったのか?親方ってのは俺の事だ。良いから早く出せ」

「ええ!?」


 この小汚いおじさんが大親方だったらしく、自分の運の良さに感謝した。

 だけどお金もそんなにないし、このままじゃ借金取りに追い回される生活に………。とそんなことを考えていたが、金はいらないと言われた。

 この人は、依頼では金を取るが趣味では金を取らないとの事、でも全力で作るから安心しろと言われた。

 注文はお任せ、僕の事も知っていたらしく破断も持っていかれたが、強化されて帰ってくるらしい。期間は三日、流石に徹夜でログインは出来ないらしい。

 三日間破断も使えないから、適当に過ごすことに決め今日はログアウトすることになった。


————————


 次の日、竜の事が気になった僕は大図書館に収納されていた本を読んでいた。

 覇権を握った古龍種は、子孫を残すたびに力が薄れ今の竜が生まれた。

 力の強さで言うと、古龍・龍・竜になる。亞竜と言われるワイバーンなどは、竜には含まれない。

 古龍と呼ばれる五体の龍を生み出したのは、エンシェントドラゴン。竜の血縁を遡れば必ずこの龍にたどり着く。 

 何故力が薄れていったのかは不明らしいが、古龍は竜が百体居ようが勝てる見込みは無いらしい。それほどまでに圧倒的な存在だ。基本は自分の領域から出ないが、稀にその姿を確認することがあったらしい。

 この本にも、獄炎龍・イフリートの写真と、氷雪龍・ヘルの写真が載ってあった。どちらも天災とされており、火山の噴火で周辺に影響が出たり、海の一部が永久凍土化したり等、色々な事が書いてあった。

 確認されていないだけで、口伝や文献で知られている他三体の龍は未だ存在は確定したわけでは無いらしい。

 いずれ見てみたいと思っていたが、正直こんなものを見た後ではそんな気も無くなってしまった。絶対に目が合っただけで燃やされるか凍らされる、間違いない。

 でもあの竜は優しかったと思い、もしかしたら………。と一瞬考えたが、直ぐにその考えも消えてしまった。

 

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