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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第44話

 破断から飛び降りた僕は、破断を収納し羽衣を広げた。

 パラシュートを開いたときの様に、一瞬上に引っ張られる感覚があったが、それ以降は快適に飛ぶことが出来た。

 ライン山脈を上から見下ろし、遠くにだが街らしきものが見えた。帝国は完全王権制だから、あそこも帝国。貴族の領地とかではない。

 山頂の真上を通る位でふと下を見ると、何かが動いた気がした。尻尾と鱗………?トカゲか何かだと思うが………。

 そこで僕は違和感に気が付いた。この距離であそこまで大きく見える事と、明らかに羽がある。つまりあれは………!


「竜だ………」


 紹介映像でしか見たことが無い、本物の竜。確認された個体は数匹しか居らず、その全てが討伐済みだからあれは未発見の個体という事になる。

 色も派手じゃない黒だし、恐らく普通の竜だと思うが国と街に近すぎる。こんなところに居たら街に被害が出るかもしれない。


「あれ?どこに………」

『マスター上です!』


 突風が吹き、安定していた飛行が最悪な物に変わった。

 手を離してしまったせいで危うく落下死するところだったが、何とかギリギリで羽衣を使って着地できた。

 だけど問題はさっきの竜、明らかに速すぎる。目を離した一秒にも満たない時間で飛ぶにしても、認識できないのがおかしい。もしかすると——————


「※※※※※※※※※※※?」


 何を言ったか分からなかったが、確かにこの竜が声を発した。


「※れ※※※※※我※※※※※?」


 所々聞き取れる様になってきたという事は、スキルが働いてくれているという事かな?

 文字とは少し違うみたいだ。


「お前は誰だ?何をしに来た?」

「ああ、すいません。ただ山を越えようとしていただけで………」

「!?言葉が分かるのか!」


 はっきりと聞こえるようになったから、返答してみたが竜は驚きそう言った。

 その牙を見せて話されると結構怖いし、出来れば飛ぶのもやめて欲しいがそんなことをいったら、直ぐに殺されそうな気がするので言えない。

 それから少しして、竜は地上に降りてまた話しかけてきた。

 

「嫌な気配がしたから上を見たんだが、まさか人の子だとは思わなくてな、人化した竜だと思っていたのだ」


 どうやら人だと気づいたのは、話しかけてからの様で言葉も分からないしこのまま食ってしまおうと考えていたらしい。ギリギリで理解が追い付いて良かったと心から思った。

 一時間位捕まっていたが、満足したのか竜は飛んでどこかに行ってしまった。

 飛び去る前に、鱗と爪と牙。後は昔生え変わった角も貰った。後は光る宝石も貰った。


「またどこかで会うかもしれんな」


 そう言って飛び去った竜の羽は、星空みたいにキラキラ輝いていた。

 このまま下山するのも面倒だから、今度は山頂から飛び降りて滑空した。丁度街の入り口の様な所に降りれた。ここら辺は危険な生物は居ないらしく、外壁も作っていないみたいだ。王国との仲もいいとは言えないが別に悪くなかった様だから、侵攻の心配も無かっただろうしね。

 

「おいお前!何者だ!空を飛んで怪しい奴め!」

「あ………あ——————」


 もう少し山に近い所で降りればよかったと後悔した。

 取り合えず身分証を見せて持ち物検査も受けたら中に入れてくれた。ここからは歩きながら情報収集をするつもりだけど、さっき貰った物をどうしようか………?


『鍛冶屋にもっていけば装備に加工してもらえるのでは?』

「確かに、そろそろ防具とか欲しいもんね」


 幸い直ぐ近くに鍛冶屋があったため、今日中に持っていけたのだが、結果から言うと加工は出来なかった。理由は………。


「ああ?お前馬鹿か、竜から素材貰ったなんざ信じるかよ」


 最初はそう言われていたのだが、竜の素材は魔力を籠めると光るという性質がある。それを試してもらい、素材が本物という事は分かってもらえたのだが、それでも無理だった。いや、だからこそ無理と言った方が良いのかもしれない。


「黒竜の素材なんかここで加工できるわけないだろ、すまんが帰ってくれ忙しいんだ」


 こんなところの鍛冶屋じゃそんな素材は使えないと追い出されてしまった。

 帝都にある親方の所でなら加工できるとの事だった。


「そんなに怒る………?」

『忙しい時に来るべきでは無かったですね』


 別に装備も直ぐに欲しいわけでも無いし、焦ってせっかくのもらい物を駄目にするのも良くない。

 そもそも傷すら付けれないという事だったし、結構強い防具になるんじゃないか?

 少しはやる気持ちを抑え、情報収集をすることになった。結果は収穫無し、未だここら辺は革命の恩恵が少ないらしい。もう少し帝都に近づくか、それこそ帝都に行かないと情報は少ないようなので、先ず装備の問題を解決してから考えることにした。帝都までは馬車で五時間、日を跨ぎそうだからあまり馬車は使いたくない。


『では、破断を使っては?』

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