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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第43話

 ネットは今回の件でT社に対する評価が賛否両論あった。

 最初から考えられなかったのかという声や、長い時間遊んで欲しいという運営の考えは素晴らしかった。等々、暫くはこの話題が上がるほど多かった。

 FAの雑誌でも取り上げられていたが、それ以上に取り上げられているものがあった。

 雑誌の見開き一面、それも最初のページに載っていたのが、


「新たな帝級!?賢者現る!今回開催された大会で見せた技と力、宙に浮かぶ無数の本を操る姿は正に賢者!だってよ~♪なあ賢人?」

「おい、頼むからやめてくれ」


 帝級とは、FAで九帝と言われるプレイヤーを指す言葉で、多くのプレイヤーに認知されれば帝級の称号が運営より送られ、晴れて九帝の仲間入り………十帝になるわけだが、僕は皆に認知されたくてゲームをプレイしてる訳では無い。逆に顔が知れれば旅が面倒なことになるかもしれないし。それに………。

 

「なあなあ灰野、お前FAやってたんだ!」

「お前もゲームするんだな」

 

 クラスのFAプレイヤーが話しかけてくるのがつらい。

 ゲーム内や将太達との会話は普通に出来たから大丈夫だと思っていたが、どうやらゲームを挟んでおかないとまともに会話出来ないらしい。


「え……いや、ほら最近始めたばっかりというか………」


 それに、やっと初心者を卒業した位の実力でそう言われるのも嫌だ。

 これからはゲームをする時間も短くなるし、変に注目を集めてしまうだろうから、人が居そうな場所で特訓も出来ない。

 

「なあ、今度一緒に………」

「ご、ごめん。僕用事あるから!」


 ここで考え事をしていたら、何時まで経っても帰れない気がした僕は、放課後になっても人が減らなかった教室を後にした。

 家に帰り着き、メンテナンスの進捗を確認したが後一時間はかかるらしい。漫画でも読んで時間潰そうかな………。

 そんなことを考えていると、パソコンからアイの声が響いた。


『マスター。パソコン上にマップをコピーしました。使ってください』

「うわ!びっくりした………。お前ホントに自由だよな」

『マスターのサポートが使命ですから』


 その言葉を聞いて、コクマーとの戦いを思い出した。

 その時アイが言っていた事や、僕が聞こうと思っていた事を思い出しアイに聞いてみた。

 結局アイは何なのかと。

 自由な行動、自我を持ったような話し方等々。だがアイは答えなかった。約束と違う?いや、いずれ分かると。ただ一言、先に進めばわかるからどうか諦めないで欲しいと………。

 アイから貰ったマップを見て、大体の考えは纏まった。丁度いい事に、三番目のセフィラ『ビナー』が居るであろう場所の隣に、氷の帝国と呼ばれる国がある。

 こう呼ばれるようになったのは最近らしいが、この国を治めている人がプレイヤーで、九帝の一人。氷の女帝リーアという人らしい。

 前の皇帝は物語に出てくるような貴族主義の皇帝で、平民を奴隷の様にこき使い自分は贅沢三昧だった。それを良いと思わなかったプレイヤーが、革命の旗になり今玉座に座っているらしい。

 聞いた話だから真偽は分からないが、流石FAと言ったところだ。プレイヤーが一国の王様に成れるのはこのゲームくらいだろう。

 それで、何故都合がいいかと言うと、現帝国は完全実力主義。能力があればそれだけで国の上層部に入れる。人柄は問うらしいが、それでも実力を持った人物が多く集まるのは事実。

 つまり師事出来る人が多いという事だ。ここで実力をつけて、尚且つ知識も増やす。一石二鳥の美味しい国だ。


「さて………時間も良いぐらいだし始めよう」

『では、起動します』


 いつもの感覚に身を任せ、僕はゲームの中へと入った。

 入って直ぐ、荷物を整理し帝国へと歩き出した。でも、実は困ったことにここから向かうと山越えをしないといけない。

 流石にそんな装備は無いし、敵も強い。どうしようか………。


『確か、滑空用の布をラジエルに貰いましたよね?』

「ああ、天使の羽衣?それがどうしたの?」

『破断を使えば高い所に行けるのでそこから飛べばいいのでは?』

「高いって言っても山なんて越えれないよ?」

『………………』


 無言で本を出したアイ。その本は旧科学時代の遺物の三振りの剣について書かれており、破断のページに付箋がしてあった。

 内容は、簡単には天にも届く剣らしい。


『あの場で伸ばしても振り回せないし、観客に被害が出る可能性もあります。ですからあれが最長という訳ではありません』

「………」


 まあ伸びるなら試してみる価値はある。

 取り合えず山の近くまでは歩くことにし、破断は到着してから使う事にした。山の上は流石に冷えるだろうから、防寒用の毛皮を着ておいた。

 帝国とゴーラ王国の間に存在する壁の様な山、ライン山脈は標高三千メートルになる。一番大きい物で八千メートルと考えれば小さいほうかもしれない。

 三千だったら、大体四千位伸ばせば飛べるだろう。という事で早速破断を取り出し起動する。牙砕の時とは違い、しっかり音声認識で起動してるため何も問題は無い。

 起動した破断を地面に付きさし大体四千メートルぐらい伸ばす。みるみる上がる高度に少し恐怖心が湧いてきたが、この後空を飛べると考えると好奇心が勝った。

 伸ばした後は、大きくなった破断の鍔の部分に立つ。普通に伸ばすことも出来るらしいが、今回は景色も楽しみたかったので同じように大きくしてみた。今の破断を例えるなら四千メートルのビルだ。

 後にこの破断は、賢者の娯楽と言われるようになる。そんなことは考えもしない僕は、美しい景色をただ眺めていた。

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