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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第40話

 大歓声。

 ソロ部門の優勝者に向けられる歓声と拍手は、僕に向けられたものでは無かった。

 一閃、たったの一太刀で即死級のダメージを負った僕は、敗北と判断され場外に転送された。

 流水が放った斬撃は、速く鋭かった。避けることも防ぐことも出来ないまま負けたが、不思議と悔しい気持ちは無かった。

 何故なら、可能性が広がったからだ。自分が強くなって思い通りに事が運ぶなんて物語の主人公位の物だろう。負けて嬉しい訳では無いが、あんなものを見せられたら勝てるとも思えなくなる。


『それもそうでしょう。東の島国華の国は、国土の面では他国に圧倒的に劣りますが、圧倒的武力により他国の侵略を防いでいます。その国の五剣と言われる者達の一人、三の太刀相手では勝てなくても不思議ではありません』

「アイは知ってたの?」

『いいえ。五剣は性別以外の情報は公開されていませんので』


 まあ、運が悪かったと思って切り替えよう。コクマーからセフィラの欠片を貰えないのは残念だが、意外と楽しかったし次の大会の日に頑張ればいいし、それまでに強くなれば良いんだ。幸いこっちは時間の進みが早い、その内また開催されるだろう。


『取り合えずコクマーの試合が始まります。見に行きましょう』


 アイに言われるままに観客席に向かうと、丁度一つ席が空いていたのでそこに座った。

 最初は流水が戦うらしい。

 刀を使って健闘していたが、コクマーの咆哮で一瞬隙が生まれ、腹に膝蹴りを入れられそのまま倒れてしまった。

 

「流石に五剣でも我らが父王には勝てないか」

「それはそうだろ、あのお方は拳一つで地形を変えるんだぞ?」


 他の観客のそんな声が聞こえていたが、僕は次の試合を見るのが楽しみだった。

 男女のプレイヤーが戦っていたが、先に魔法を使って支援していた女性の方が倒されると、そこからは早かった。

 観客は三分の一ほどは満足していない様だったが、それでもいい試合だった。

 次はパーティー戦。五人組のプレイヤーで、上位プレイヤーのパーティー「鷹の目」だった。

 鷹の目とは、全員がレベル五十以上のパーティーで、前衛二、後衛一、サポート二のバランスのいいパーティーだ。ベノス火山の中ボスを倒した功績が、雑誌に載っていたのを覚えている。

 盾で防いでその隙を剣で攻撃、能力はバフで底上げされているのか見た感じSTR、攻撃力は1000はありそうだ。バフなしの最高が二千という事を考えると、結構高めだと思う。

 魔法のタイミングも丁度良く、連携がしっかりしている。

 

「ガハハハハ!良い連携だ!だがしかし、私の敵ではない!」


 そう言ったコクマーの体の刺青が光る。

 全身が緑色に発光し、少しすると緑の光は真っ赤に染まり蒸気が吹き出した。

 危険を感じたのか防御を固める鷹の目だったが、その後起こった大爆発によって吹き飛ぶ。

 コクマーのでたらめな強さが分かった試合だったが、これで終わりではない。

 表彰式もあるがその前に、王様の特権という物がある。

 毎回恒例らしく、気に入った人物一人と最後に試合をするという物だ。基本優勝者から選ばれるが、偶に参加者を指名することもあるらしい。

 流水が選ばれるかもと皆が予想していたが、コクマーと目が合った気がした。


「降りてこいケント!欲しい物は自分でつかみ取らないとな!?」


 少し驚いたが、同時に期待もしていた。もし選ばれれば、待たなくても済むかもしれないと、だがレベルを上げる時間も無いのに戦ってもいいのだろうかとも思っていた。

 けど、断っても仕方ないし大人しく試合場に降りた。


「よく来たな。そんなお前に良い事を教えてやろう」

「何?」

「俺の武器な、拳じゃないんだわ」

「へ?」


 そう言ったコクマーの目の前に、鉄の棒が降って来た。二メートル程の棒には文字が彫ってありコクマーの刺青と似ていた。

 それが降ってくると、観客の大歓声が響いた。


「おお!二十年ぶりだ!」

「いいぞーー!!」


 明らかに良くないものだという事は分かるそれをコクマーが握ると、蒸気を発し機械音を鳴らした。

 

「これな、旧科学時代の遺物で結構な代物なんだよ。最初で最後の古匠が鍛えた三振りの何とかで………。まあとにかく良いものだ。俺に勝ったらくれてやるよ」

「いやでも使えないしそれに………」

「勝てないって?面白くねえこと言うなよ!」


 棒で横薙ぎをしたコクマーは生き生きとした顔で言った。


「ガハハハハ!かっこいいぞ?欲しくなるぞお?まあ負ける気はしねえがな!おらお前ら!声上げろ!!」

「「「「おおお!!」」」」

「こいつの名前は!?」

「「「「破断!!!」」」」


 観客の声に応える様に、棒は赤く輝き先端部分から徐々にその形を変えていく。その殆どを剣身にかえ、細く長い剣は姿を現した。

 それを片手で構えたコクマーは、上段大振りで刀を振った。

 刀身はが赤く光ったと思ったら、剣は大きさを増した。長さも大きさも増した剣を避けた僕はそのまま走り出す。

 大振りの後は隙が大きいだろうと思っての事だったが、そんなことは無かった。

 試合場がひび割れ、粉々に砕ける。ふらついてしまった僕に、さっきの倍の倍トラック並みの大きさの剣の腹が迫る。

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