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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第34話

 大会期間の一か月は、時間の設定が変わるらしい。

 こっちの一か月が向こうの一日。有り難い設定だが、時差ボケというかなんというか、今まで気にしていなかったが時間の感覚がおかしくなるのではないだろうか?

 そう心配しながらも、今はこの期間を楽しむことにしようと前向きに屋台を回った。

 そう言えば、圭吾たちはギリギリ本選に出場できたようだ。最後の戦いで、格上のプレイヤーと当たり負けそうなギリギリで他の組の勝負が終わり、十五組目に滑り込めたようだ。

 ちなみに挨拶には行ってない。理由は無いが何となくだ。

 次は僕の番。2人も観戦するだろうから、その時にでもすればいいと思うし、今は僕も試合に集中したい。


「よお、坊主。そろそろ開始だな」

「王様。どうしてこんなところに?」

「おいおい、王様?俺が?。俺はただの男だ、な?」


 そう言えばそういう話だったな………。

 少し面倒に思ったが、話を合わせてそのまま会話を続ける。


「いやあ、タッグ戦を見てたら昔の事を思い出してな。お前に話に来たんだよ」

「昔の事?僕とどういう関係が?」

「あ?お前知らねえのか?その手の甲の紋章。あの小娘共のものだろ?」


 手の………甲?今は見えるようにはしてないはず。どうして見えるんだ?

 まさかコクマーもケテルと同じように特殊な能力を持ってるとか?


「まあ。細かいことは良いんだがな、お前には期待してるんだ」

「期待、ですか?」


 僕がそう問うと、コクマーは嬉しそうに笑みを浮かべて話を続けた。


「ああ、またあのレベルの奴と戦えると思うと、楽しみで仕方ねえんだ。それに………」


 拳と拳を打ち付けながら嬉しそうに話すコクマーの頭を、何者かが叩いた。

 コクマーの後ろに真っ白な翼が見えた為、正体は直ぐに分かった。


「貴方は何をしているんですか。この時期は忙しいんです!仕事が溜まってますよ!」

「ラジエル。主の頭を叩くとは何事だ!」

「………?はて?主とは何処に?」


 その言葉を聞いてわなわなと震えだすコクマー。

 自分を指さし、ここに居るだろ!と大きな声を上げている。


「失礼。貴方とは認識が違う様で………。主とは、優秀で頭もよく部下を大切にする者かと………。少なくとも部下に仕事を丸投げし。こんなところで遊んでいる者の事を主とは呼べませんね」

「お、お前………!俺が馬鹿だって言いたいのか!」

「ええ!私は空間管理や映像投影で疲労が溜まっているというのに、そこに書類仕事が上乗せされ疲労で!疲労で倒れそうなのに!貴方は!ここで—————」

「分かった分かった!戻る!戻るから!」


 ラジエルの圧にコクマーが負け、そのまま連行される形になった。

 置いて行かれた僕は、何だか不思議な気持ちになったが、それ以上に気になることがあった。


「小娘共………ね」

『旅をしていればいつかは会えるのでは?」

「それもそうだね」


 新たな旅の目的も増え、余計に大会の重要性が増した。

 優勝は無理でも、コクマーが満足すれば僕の目的は達成だ。気を引き締めていこう。

 

————————


「続いては!ソロ部門予選に移りたいと思います!選手の皆さんはお早めにゲートを潜ってください!」


 そのアナウンスを合図に、四部屋に分けられた約百名の選手が一斉に部屋の扉を潜りだす。

 開いた扉の先は廊下ではなく、見渡す限りの草原だった。

 この扉、ラジエルが作り出した転移扉で、会場に繋がっている。開始早々接敵するのはよろしくないという事で、選手ごとにランダムで飛ばされ、最低でも百メートルは離れているらしい。だが好戦的な選手は直ぐに走り出して、戦闘を開始する様で………。


「お、いたぜ。悪いな坊主、最初の脱落者はお前だ!」


 草原フィールドという事もあって、早速他の選手に見つかってしまった。

 武器は短剣。刃渡り十五センチ程で、少し反っているタイプのナイフだ。魔法書を使って対処出来たら楽だったんだが、こんなに早くに来られては展開する暇もない。

 が、幸いそういう場面が来た時用に先生からしっかり体術を教わっている。

 この大会、致命傷になる攻撃を食らった場合、無条件で闘技場に転移するようになっていて、ナイフを刺されても無傷の状態で戻ることが出来る。先生との訓練の時はそうはいかなかったので、少しだけ気が楽だったりする。

 僕の胸辺りを狙って突き出されたナイフ。明らかに、僕が反応出来ないと思って油断しているのが分かった。

 そのナイフを、体を右に捻って回避し突き出された相手の手を掴んでそのまま膝蹴りを食らわせる。猛ダッシュで来た勢いのまま突っ込んできたせいで、そのまま気絶してしまった。

 名も知らぬナイフの男性は、そのまま退場。転移してしまった。最初の相手はどうにか出来たが、このままここに居ればまた新しい人が狙ってくる。そうなる前に、少し隠れられるような場所に移動しよう。

 

「そう言えば、実況の声って聞こえないんだね」

『聞こえてしまえば他選手の情報が漏れるのでは?』


 それもそうだ。確かに聞こえちゃマズイのか。

 少し間抜けな発言をしてしまった恥ずかしさからか、周りを見渡し足早に場所を移動することになった。

 

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