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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第32話

 解呪は完了。リーシャさんの顔色もよくなっている。だが目の前の、恐らく呪いであろうそれは、死神と言うにふさわしいものだった。

 真っ黒な大鎌を持ち、認識できない顔からは赤い瞳だけが覗いている。

 浮遊しており、黒い靄の様でゆらゆらと揺れている。

 一瞬。鎌を認識できなくなったと思ったら、僕の左手が飛んだ。文字通り宙に舞った。肩から下が無い左腕と、床に落ちる僕の腕を認識した瞬間。激痛が僕を襲う。

 死の予感。トラウマ確定の目の前の光景を見たくない気持ちと、この二人を助けないといけないという使命感がぶつかる。

 このゲームをしていて初めて体験する感覚。だが所詮ゲームとは割り切れなかった。僕は死んでも生き返る。怖いのは一瞬、そう分かっていてもこの高い壁は超えられない。

 絶対的な死という恐怖を前にすれば当たり前の事だ。

 いや、倒さなくてもいい。どうせこれは倒せない。なら………。


「空間指定。魔導書起動。断絶………発動」


 僕と呪い以外の全てが消える。実際はこの二つが空間から切り離された。

 教会と同座標の全く別の空間を作り出し、発動者と対象者を閉じ込める一対一を強制的に作り出す魔法。だが僕は身体強化のせいで足が動かない。

 せめてもの抵抗。これで少しでも遠くに逃げてくれれば………。そう思い最後の攻撃を待っていると、ガラスが割れるような音が響いて空間が戻った。

 教会の景色が広がっており、最後の抵抗さえ失敗し人を死なせてしまう。クダさんにも教会の人にも申し訳ない気持ちだった。


「ガハハハハ!実にイイ!お前の漢気しかと見せて貰ったぞ。後は俺に任せろ!!」


 僕の目に映ったのは、さっきの上裸の男だった。

 男は右拳を力いっぱい握り、正拳突きの構えをとる。蒸気の様な息を吐くと、右手の文字が発行し爆発音のようなものが何度も響く。


「おらあ!!」


 男がその場で突くと、直線上に居た黒い呪いの腹に穴が空いた。そしてその穴から金色の光が漏れ出し、呪いは消滅し後には札にまかれた棒状の物だけが残った。

 

「成程。死刑執行人の大鎌の破片………。ラジエル!今すぐあの馬鹿から情報を吐かせろ!」

「既に終わらせてあります」


 急に現れたのは翼の生えた緑の長髪の女性。

 眼鏡の奥の深緑の目が綺麗で、知的な感じの女性だ。

 

「アンドレは犯罪組織黒い泥の構成員だったことが判明しました。最近活動範囲を広げている様なので恐らくその資金稼ぎの目的でクダ商会の娘に接触。頃合いを見計らって保険金に合わせ商会の資金も盗むつもりだったようです」

「後始末は?」

「はい既に」


 見たことのある光景。天使が従う男の正体は薄々分かって来た。あの時計が震え、そのことを強く肯定している。

 男はゆっくりとこっちに向かって来た。


「よし、難しい話は無しだ。セフィラのかけらが欲しいなら大会に出ろ。お前は実に面白い」

「え……?」


 足もまだ動かず、腕も無い状態でそう言われた。

 それに気が付いたのか僕の腕を拾って来た男は、それを僕の肩にねじ込んだ。


「ふん!!」

「いっ………たあ!!」


 切り落とされた時以上の激痛を感じ、腕を確認すると、治っていた。

 今まで付いていなかったことが嘘のように、手が動く。流石に服は元通りにはならなかったが、それでも腕が動いているのが信じられなかった。


「よし!これで大会に出られるな。期待しているぞ!」


 ガハハハと大きな声で笑いながら教会を去った男、コクマーを見ながらため息をついたのは、ラジエルだった。

 そして申し訳なさそうに僕の方へ向かって来た。


「本当に申し訳ありません。あれは少々頭が悪く………。腕は確かなのですが」

「いえ。痛くなかった訳では無いですけど、助けてもらったので」

「そうですか。あ、大会に出場するのは避けられなさそうなので私から説明しておきますね」


 戦王闘技大会。正式名称は戦王主催闘拳技術大武闘大会と長い名前。これもコクマーが付けた物らしく、ラジエルは頭が悪いと言っていた。

 まあ、この大会。各部門ごとに予選で十五組程を選抜し、そこからはトーナメント制。ソロ、タッグ、パーティーの各部門の優勝者とコクマーが戦うという物らしい。

 パーティー戦をレイドと呼び出したのは最近らしい。

 ルールは単純。毒物や明らかに武を修めた者に相応しくない行為以外の事は全てOK。魔法も剣も全てだ。

 審判の判断で戦闘不能となった場合、降参したときに勝敗が決する。場外は無し。

 

「開催は明後日の朝九時になっています。貴方にはソロの部門で出場してもらいます。我儘に付き合わせてしまってすみません」

「大丈夫です。自分なりに頑張ってみます」

「そうですか、それでは健闘を祈ります」


 そう言ってラジエルも教会を去って行った。

 呪い騒動から大会出場。何だかよく分からなくなっている気がしていた。

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