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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第31話

今日は二話投稿します

「防壁!」


 アンドレがリーシャさん目掛けて振り下ろしたナイフを、僕が張った光の壁で受け止める。

 クダさんは理解が追い付かず呆けていた。


「キャアーーー!」


 周囲の通行人の一人が、アンドレの持つ凶器に気が付き悲鳴を上げる。

 その声のお陰でやっと理解が追い付いたクダさんが、アンドレを取り押さえた。

 一瞬ナイフがクダさんに届きそうになったが、僕がもう一度防壁で防ぐ。


「クソ!お前さえお前さえいなければ!」

「貴方の考えは分かりませんが、どんな事情があっても人は殺してはいけない」


 興奮気味のアンドレを抑えるのも限界に近いのか、クダさんに疲労の色が見える。

 このままでは抑えが外れるのも時間の問題。僕は弱電(じゃくでん)の魔法書を取り出し、アンドレの首元に弱電を放った。

 スタンガンの要領で放ったから、アンドレはそのまま気絶した。

 意識が無い事を確認してから、アンドレの靴紐を拝借し手を縛った。


「これで大丈夫だと思います。後は兵士が来るのを待ちましょう」

「一体どういう事だ………?何故アンドレが」


 どうやら未だ目の前の光景が信じられないらしい。

 無理も無い。信じていた者に裏切られた時の絶望感は、想像を絶するものだろう。 

 クダさんを心配しながら兵士の到着を待っていると、人だかりの中から大きな男が歩いてきた。


「お前、いいな。男らしい!女子を守ってこその男。そして手際の良さ、どれをとっても男らしい」

  

 灰色の髪を短く切り、横を刈り上げている大きな男。岩肌の様にゴツゴツした肉体は、体の大きさを強調していた。

 上裸で下は七分のダボっとした白いズボン。あらわになった上半身には、肩から腕にかけて青緑色の文字のような刺青が入っていた。黒い眼は、真っすぐ僕を見つめていた。


「そこの馬鹿は俺が引き取ろう。お前たちは早く行くといい」

「流石に知らない人には任せられません。ですがお気遣いありがとうございます」


 男は少し不満そうな顔をして、首をかしげながら言った。


「良いのか?早くしないと助からんかもしれないぞ?」

「………どういう意味ですか?」

「いや、見た所術者の意思関係なく症状の進む呪いの様だ。それに、決まった行動をとると症状が加速するようにしてある。そこの馬鹿がさっき妙な石を割ってたから恐らくもって一時間ではないか?この人だかりだ。馬車では間に合わんだろうな」

「な!それは本当ですか!?娘は助からんのですか!?」


 何故そんなに呪いについて詳しいのか等、色々気になる所ではあるが、確かにリーシャさんの顔色が悪い。話している時間は本当になさそうだ。

 僕は身体強化の魔法が記してある本を取り出し、足に集中してそれを発動させる。肉体の限界を引き上げ、限定的だが身体能力を向上させる魔法。それを集中させれば効果は跳ね上がるが、後に待っている副作用は普通の倍以上。恐らく数時間は歩けないだろう。だが今はそんなこと気にしている場合じゃない。

 リーシャさんを背中に乗せ、思いっきり地面を踏み抜く。天高く飛び上がり教会の位置を視認。このままじゃ落下するだけだが、さっきの防壁を足裏に発動させそれを足場に空を駆ける。

 リーシャさんは位置の固定という魔法で落ちないようにしてある。

 空から行ったお陰で一分ほどで到着した。急いで中に入り神官に事情を説明。傍にあった長椅子に寝かせ、早速解呪を行ってもらった。

 だが………。


「呪いのレベルが高すぎます。今の僕の実力じゃ………」


 どうやらその場に居たのは見習い。他の神官はこの祭り騒ぎの時は出払うらしく、早くても戻ってくるのは一時間後らしい。

 それでは遅い!何か無いのか?


『知識とイメージがあれば神聖術の行使は可能。彼は見習いといえど神官、解呪も問題なく使えているという事はイメージは問題ない。つまり彼に足りないものは知識です。マスター貴方は何を持っていますか?』

「知識………本か!アイ神聖術の本をくれ!」

『かしこまりました。神聖術・上級解呪の本を取り出します』


 出てきた本を急いで神官に渡す。


「これで何とかなりませんか?」

「これは………!神官長以上の者しか持てない上級書!?いえ、ですが………本があっても僕には………」

「大丈夫です。僕は知の魔女の弟子です!僕がサポートしますから」

「あの、魔女の弟子?それは………」


 神官に魔女印を見せると、神官は僕を信じ本片手に解呪を試みる。

 その神官の肩に手を置き、魔力を温度上昇の魔法でほんの少し手のひらを暖かくする。


『サポートをするのでは?』


 そう、サポートしてる。

 この神官見習いのお兄さん。NPCだが、見た所MP量が多いし尚且つ職業適性は解呪師。つまりお兄さんに足りないのは自信だ。

 未だ見習いの僕では………。そう言う事を言うが、実際はこの程度簡単に出来るはず。

 現にさっきの解呪は前に見た先生の物より洗練され綺麗だった。あれ程の解呪を行使する人が実力不足なら、他の誰も神官を名乗れない。

 つまり精神論。安心させることだけ出来れば、後は待つだけだ。

 金色の光がリーシャさんを包み、あの黒い線が浮き出る。呪いの正体だ、だがそれは魔力の塊に変わり人の姿に変わって行った。

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