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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第27話 

 空から見た王国は綺麗だった。整備された道、活気にあふれた声。街をぐるりと囲む白い城壁は綺麗な円形で………。


「白い、円?」


 僕は急いでセフィラについてまとめた本を取り出した。そこに書かれた図形、コクマーを示す球体の方角は南東………。北が分かればある程度の方向が分かるのに、そう思っているとさっきのカード、愚者のタロットがポケットから勝手に飛び出した。

 成程、パスとはそういう事か。

 僕は愚者のカードを手に取り、あの時計の上に置いた。するとカードがグルグル回り赤色の方が左側を向いてピタリと止まった。

 これは方位磁針の役割を果たすという事だ。カードが無いと意味が無いと言ったのはこのことだったんだろう。


『ですが北はマスターの右斜め後ろ。方位磁針という呼称は間違いですね』

「いちいち細かいなあ。分かれば良いんだよ分かれば」


 このタロットが示した先に、次のセフィラが居る。

 メタトロンの助けが無ければ気づかなかった。ここまで助けられるなんて情けないな。ケテルも呆れてるかもしれない。

 

「ありがとうメタトロン」


 メタトロンにお礼を言うと、メタトロンは無言でゆっくりと下降し教会の入り口前で止まった。

 すると、見計らったようにケテルが出てきて言った。


「ではケントさん。コクマーには一報入れておきましたから、ですが毎回こうはいきません。私は可能な限りサポートする役割なので色々させてもらいますが、早くて次からは一人で全てしないといけません」

「はい。毎回助けてもらおうなんてそもそも思ってません。でも有難うございました」


 一度見たような光景でもあるが、今回は少し違う。

 ケテルの笑顔が、心からの笑顔だとそう思ったからだ。優しい笑みを浮かべ僕を見送ってくれようとしている。

 もう少し話したいと思ったが、同時に次の冒険が楽しみだったからその場を後にすることにした。


「………ヨロシク」


 最後にメタトロンがそう言って手を振った。

 次の行き先を示すコンパスを手に握りながら、僕も二人に手を振ってお別れをした。

 教会は徐々に見えなくなり、逆に段々と王都の城門が大きく見える様になってきた。王都の滞在も一瞬だった。でもこれまでで一番濃い時間だった。

 これからの出来事に期待しながら、僕は城門を潜った。第二のセフィラを目指して………。


————————某所


 暗い夜に双子月が光る中、空に浮かぶ一人の女の姿があった。

 ほうきにまたがった女は鼻歌交じりに空の旅を楽しんでいた。下は極寒の大地、一年中雪が積もり緑が顔を出さない土地の上空は、下よりも気温は低い。にもかかわらず女は肌が見える服を着ており、上から毛皮のローブを、前を閉めずに羽織っているだけだった。

 ここは、王都からはるか遠方の地である。


「それにしても少し冷えるな………」

「少し、どころでは無いと思いますが」

「お前は寒がりだな、ボウ?」

「確かにそうですね。それはそれ、これはこれです。前をお閉めください、風を引いてしまいます」

「………分かった」


 少し嫌々従った感があったが、ボウは満足そうにしていた。

 空の二人旅、ここ数日はいつも決まってあの話題になる。


「それにしてもケント様はお元気でしょうか?」

「お前はいつもそれだな、大丈夫だと毎回言っているだろう」


 弟子を送り出した師匠と、世話をしていたボウ。

 メティスの過度ともいえる信頼がどこから来るのかは分からないが、ボウも心配性すぎる所があった。

 ボウの場合はしっかりとした理由がある。それは賢人が図書館に籠るようになって数日の事だった。

 賢人が何時まで経っても出てこないので様子を見に行くと、賢人が床に倒れていたのだ。

 

※このゲームは空腹と疲労があるため、水分を取らなかったり食事をしないで行動していると、熱中症の様な症状に陥ったと錯覚する。いわゆる状態異常だ。


 何事かと思い診察すれば、疲労による気絶に近いものと分かり、それからはずっとついておかないと心配だった。

 

「あいつはそういう所があるからな、まあ分からなくも無いが………」

「………」

 

 ボウは何も言わなかった。

 主人に悟られない範囲でボウが思ったのは、貴方の方がひどいという事だった。

 研究になれば呼んでも反応しない、ドアや壁に魔法をかけるので強行突破する羽目になった事が何度もあった。

 それに家事全般が出来ない。知識はあるが技術が無いのだ。一番目を離してはいけない存在は、一番身近にいるのだった。

 最近はお茶を淹れれるようになったが、それでも他はダメだった。

 まあ何百年と一緒に居れば慣れてくる。ボウにとってそれはもう当たり前だった。だから賢人が家事が出来た時は驚いたのだ。

 この人も主人と同じと思っていたら主人より出来るという事が分かったのだ、ボウが驚くには十分な理由だった。


「ん?お前、失礼な事を考えていないか?」

「いえ?何も考えてはいませんよ」


 主人に悟られる前に、ボウはそっと思考をシャットダウンしたのだった。

おはようございます!感想待ってます!

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