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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
一章 本当の始まり
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第26話

遅れました

 教会を出てから数時間後、僕は宿屋でセフィロトの樹の写しと睨めっこしていた。

 覚えていた通りに紙に書いてみただけの物だったが、少し考える程度なら十分な物だった。

 十個の球体はそれぞれ線で繋がっている。一番上がケテルで、線の方向と数字的に次はコクマー。男性を象徴し、至高の父と呼ばれるセフィラの様だ。

 書いてあること的に男性だと思うが、問題は場所だ。近くに行けば反応すると言っていたが、どの程度で近くと判断するのか分からない。半径一キロ以内かもしれないし一メートル以内かもしれない。だから大体辺りをつけていかないと失敗する可能性がある。先生の言っていた事から、恐らく………というかほぼ確実に順番を間違えればこの旅はそこで終わりだろう。だからどうにかしてコクマーの居場所を突き止める必要がある。

 

『一度教会へ戻られては?あそこなら何かある可能性が高いと思われますが』

「あんな風に出て来たのに戻れって?」

『マスターの羞恥心とセフィラのどちらかでしたら、後者の方が重いですね』

「………お前って前々から思ってたけど口悪いよな」

『優しく言っているつもりです』


 まあ、アイの言ってることは正しい。僕が恥ずかしいという理由だけでチャンスを逃すようなことはするべきじゃない。

 アイも僕の為を思って言っているんだろう。多少言い方は気にはなるが、そういうものだと思う様にしよう。


『私もマスター限定なら考えていることは分かりますからね?』

「おっと、そうだった」


 雑談を交えながら、僕達はもう一度教会へ向かった。

 道中、ケテルに言われた通り色々な事に疑問を投げかけてみた。幸い僕は一人では無いので、返答はしっかり返ってくる。

 先ず、この時計。面倒だから時計と言っているが、そもそもこれは何なんだろうか?


『レーダーに似たような物なのは分かりますが、現在は情報が少なすぎます』


 まあそうだろう。分かるとも思ってなかったし、正直そういうものと思う事にする。

 次にだが、教会の立地だ。

 全く関係ないかもしれないが、教会なら人が来やすい場所を選ぶはず、なのにわざわざ数十分かけて登らなければ来れない所に建設してある。

 土地が無かった?それは無い、空きは沢山あった。日照の関係?それも無い………と思う。


『百パーセントとは言いませんが、何かあると考えて良いでしょう』


 アイの言う通り、少し恥ずかしいが教会の扉を開ける。

 そこには何人かのNPCとケテルの姿があった。ケテルはこちらをチラ見すると、鼻で笑った。だが何も言ってこずNPCと話している。

 触れられないなら僕的には有り難い。という事でそのまま無視して辺りを見渡す。

 殆ど怪しい所は無いただの教会だ。ここに何か手がかりがあるとは思えないほど何もない。

 取り合えず座って考えを整理するため、すぐそばにあった椅子に腰かける。

 

————————数時間後


 僕以外誰もいなくなった(ケテルは普通に居る)教会で、あの時計を見ていた。

 綺麗な金色で、十個の穴には白い宝石しか入っていない。

 裏側は特になく、金細工の模様がある位………。本当にどうやって探せばいいんだ。

 そうやって時計と睨めっこしているとステンドグラスから光が入り、丁度懐中時計にはまった白い宝石に当たる。


「ん………?反射しない?」


 白い宝石はキラキラ輝いていて、まるでガラスの様だった。なのに、光が当たってもその光が跳ね返らない。

 もしやと思い石を覗き込んでみると、万華鏡のようなそこにはこう書かれていた。


「ア……レフ?」


 そう口に出したとき、地面が少しだけ揺れた。そしてケテルの大きな笑い声が響き、同時に教会の地面、石畳が不自然な動きで左右に避け穴が空いた。


「ハハハハハハ!出て行ったときはどうしようかと思いましたが。いやはや流石だ」


 穴からは石柱の様な物がせり上がり、動きが止まるとボロボロと崩れだした。

 全壊する訳じゃなく、石柱は石像に成った。右手に長い杖を持っている石像だ。


「コクマーとのパスを繋がなければ、彼の場所は分かりません。運が良くてもこれが無ければ意味がありませんからね」


 そう言ったケテルが手を石像にかざすと、石像は今度こそ砕け散った。

 後には箱のような物と、一枚のカードが残されている。カードにはさっきの石像と同じ人が描かれていた。裏面は赤と白で色分けされていた。少しダサいと思ったのは秘密だ。


「大アルカナ、愚者のタロット。持っていきなさい、言うなればご褒美です」


 ふわふわと浮き、僕の手に落ちたそれは、手帳サイズの本にぴったり収まるカードだった。

 いいものなんだろうが分からないし、今度調べてみよう。


「それが良いでしょう。まあ、出てくるとは思いませんが………。メタトロン。ケントさんを手伝ってあげなさい」

「はい」


 どこからともなく現れたメタトロン。

 メタトロンは僕をひょいと片手で担ぎ、肩の上に乗せた。

 

「そのまま首元に、肩車みたいな感じで。頭もしっかり持って」

 

 言われた通りに足をかけ、頭を掴む。髪の毛が抜ける心配がないのが助かる。掴むところが無いのが心配ではあるが、そもそも何故こんなことを?

 そう思っていたが答えは直ぐに出た。

 メタトロンの背中から一対の翼が生え広がる。真っ白で綺麗な翼は大きく羽ばたくと、そのまま地面が遠くなった。

 

「何で!?天井あったよね!!?しかも飛んでるし!」

「俺、ケテルの守護天使。天井はケテルが一瞬だけ空けた」


 戸惑いながらも、いったん心を落ち着かせようと試みる。このまま落ちれば間違いなく死ぬし………。

 自分が高所恐怖症じゃなくて良かったと心から思った。

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