第23話
タタミア王国・王都
二日程かけて王都に到着した。真っ白な城壁に囲まれた町は、流石王都と言ったところだ。
王都なだけあって人が多く、お店も充実している。そして大きな城、王城とすぐ横にある教会が目立つ。少し山になっている所の上にあるからか、光が良く辺り神々しく見える。
ここに一つ目があると先生は言っていたが、確かな情報が少ない中どうやって見つければいいのか………。
聞き込みはあてにならない。先生でも情報が定かでは無かったことを、住民が知っているとは考えにくい。
『王族なら何か知っているかもしれませんが、流れ者が直ぐに会える程の人物では無いでしょうね』
まあそうだろう。でも何もしないという選択肢は無い。ここにあると分かってはいるのだから、きっと見つかるはずだ。
『………マスター。前方から数名接近してきます。恐らくマスターに用があるものかと』
アイがそう言ってすぐ、男の二人組がやって来た。
制服の様な物を着ており、恐らく兵士だろう。武器は見えないので何とも言えないが………。
「すみません。少々よろしいですか?」
「はい。何ですか?」
「実は最近、神官長様が魔女のお弟子さんを探しておりまして。何か心当たりはありませんか?」
「………すみません。知らないです」
「そうですか、失礼しました」
二人組はそう言うと足早に去って行った。
神官が僕を探している。嫌な予感がして知らないと言ったが、今思えば失敗だったかもしれない。
『はい。もしかしたらセフィラについて知っているかもしれませんからね』
「まあ、どうせまた来るでしょ」
そう確信して、僕は今日の宿を探しに向かった。
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「そうですか、知らないと………」
「はい。彼はそう答えていました」
「面白いですね、今すぐお迎えに上がりなさい。恐らく彼も気づいています」
王冠を被り、本を持っている横顔の男を模したステンドグラスから光が差し込む教会、真っ白な服を身にまとい、同じく白い髪。目にはモノクルをつけており、右手には分厚い本を持っている男が立っていた。
男は兵士に命令を下し、下がらせると独り言を呟いた。
「彼女の弟子、ですか。世界とは狭いものですね」
そばにあった椅子に腰かけ本を開くと、男は夢中になってそれを読み始めた。待ち人が来るその時まで………。
————————
あれから直ぐに、兵士が僕を呼びに来た。
正直、既視感しかない光景だったが、気にせずについて行くことにした。あまり急ではない山道を登りながら教会を目指す。
十分ほどで登り終わり、教会に到着した。イメージ通りの真っ白な教会は、ここが目的地だと主張している気がした。
「中で神官長様がお待ちです」
そう言って兵士が僕を案内しようとしたが、教会の入り口前で立ち止まった。
どうしたのかと思ったが、理由は直ぐに分かった。
扉がゆっくりと開かれ、中から髪のない大男が出てきた。その男に向かって兵士が敬礼をしたのを見て、この男は偉い人なんだと認識した。だが神官長では無いようだ。
「こちらへ、お客人」
案内が兵士から大男に変わり、二人で教会の中に入る。
中はとてもきれいで、奥のステンドグラスが目立っていた。そのステンドグラスのすぐ下に、真っ白な人が立っていた。
恐らくあの人が神官長なんだろう。神官長はゆっくりとこちらへ歩いてくると、僕の前で止まり一礼をした。
「初めましてケントさん、お越し下さり有難うございます」
ステンドグラスから差し込む光を背に一礼した姿は、とてもきれいだった。
「早速ですが、セフィロトの樹とは何だと思いますか?」
「………どうしたんですか、急に」
「そんなに構えなくても大丈夫ですよ。貴方がセフィラを探してここまで来たのは分かっていますから」
僕を真っすぐ見つめる目は、本当に全てを見透かしている様だった。
嘘を言う理由も無いので、普通に話すことにしよう。
『それが賢明だと思います。それにセフィラは………』
「ああ、君は今は黙っていてくれ」
「!?」
今、アイに言ったのか?僕にしか聞こえないはずなのに?
「うむ………。そうですね、先に自己紹介から済ませた方が良いでしょう」
そう言って神官長は、持っていた本をパタンと閉じ目に着けているモノクルの位置を調整し口を開いた。
「私の名前はケテル。思考と創造を司る第一のセフィラの化身です。では改めて、セフィロトの樹とは?貴方はどう考えますか」
セフィラの化身?一体どういう事だ?分からないことが多すぎる。
思考と創造、つまり思考を司っているから考えてることが分かったのかな?
「その通りです」
やっぱりそうなのか、つまり変な事を考えるのは良くないという事か。
セフィロトの樹………。僕は少なくても樹ではないと思っている。そう思った理由はいくつかあるが、大きな理由は大樹ならば見つからないのはおかしいと思ったからだ。
十個の実をつけた大きな樹、この情報を持っている人物が世界を回ればいずれは見つかるだろう。だけど見つかってはいない。本が残っていないのが証拠だ。
だからセフィロトの樹は樹ではないと思う。
「多少穴はありますが、いい考えです。確かにセフィロトの樹とは樹ではありません。我らセフィラを繋ぐ回路の様な物の事です。それは良いでしょう、ケントさん最後の質問です。貴方はセフィロトの樹を巡り何がしたいのですか?」
「え……?それは世界を見て本を書くために………」
僕がそう言うと、ケテルは大きなため息をついた。
「それは彼女から言われた事でしょう?私は貴方の意見を聞いているんです」
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