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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
零章 書き出し
22/149

第22話

 遥か昔。古龍が覇権を握った太古の昔。それは世界が出来て間もない頃だった。

 膨大なエネルギーを内包した世界は、その負荷に耐えられず崩壊寸前だった。

 次第にエネルギーは外に漏れだし、それが固まって星霊が誕生した。星霊は精霊を作り、内包するエネルギーが少なくなってきた世界は安定するだろう。そう思われていた。

 だが、結果は真逆。世界は内と外の差に、今度は外側からの崩壊が始まる寸前だった。そこで、神は考える。どうすれば良いのかと。

 自分の持つ知識で作り上げた世界は上手く行かない、ならば外から持ってこようと神は思った。

 異界より現れた三人の英雄は、神と同等の全権を与えられた。

 与えられた力を用いて、英雄は一本の大樹を作り出す。空を覆う程の異界の魔法式は、その大樹に十個の実を生やした。

 世界を構成する十の要素、それらを繋ぐ大樹を「セフィロトの樹」と名付け、十の要素をセフィラと呼んだ。

 英雄は役目を終え、元の世界に帰ったが、今でもこの世界を見守っていると言われている。


 これは私が三百年生きてきた中で掴んだ情報だ。

 三百年でも、この程度だった。口伝に近いような事しか聞けず、実際はどうだったのか何て分かるはずも無かった。

 だから考えた。昔から生きている者に聞けばいいと。だが結果は知っての通りだった。

 一番は古龍に聞ければいいが、古龍は滅多にお目にかかれないし、そもそも話す事すら出来ないだろう。

 何も分からなかった。だが、ある男から話を聞いた。そいつは龍の面を被った男だった。確か百年位前だった気がする。私が自分の知識を使って人助けをしていた時だ。


「罪悪感からか、はたまた偽善か、お前は何故………。何にそれ程怯えているんだ?」

「誰だ、貴様は」

「答えろ。何をなくした」

「……………」

「……そうか。まあいい。セフィラを探す奴が居ると聞いてな、お前の事だろう」


 それが初めての出会いのはずだった。でもそいつは何でも知っていた。すべてを見透かされているような気さえした。

 

「何故探す?神は人の願いは叶えないぞ?」

「……それでも、知りたいんだ!」


 その時の私は余裕が無くてな、情報が手に入ると思ったら思わず切りかかっていたよ。

 だが、軽くあしらわれ地面に優しく寝かされた。手加減されてることは分かっても、相手との差がどれ程の物なのかは分からなかった。遠すぎて見えなかったよ。

 ああ、すまない。脱線していたな。それで男からの情報はこうだった。


「一番目は王冠。順番に回る事だ」


 意味が分かったのはそれから十数年後。だが私は順番を間違ってしまった。 

 半分まで来ていたのに……。だがお前なら大丈夫だろう。期待を込めて最初の場所だけを書いて終わりにしようと思う。

 一番最初はタタミア王国王都だ。では良い旅を。


————————


『情報の整理が必要ですね。先ず龍面の男ですが………』

「うん。時系列がおかしい」


 プレイヤーだったはずの龍面が、百年近く前に居るはずがない。

 このゲームはテストプレイもしなかったらしいから、考えられるなら運営側の人間だが………。


「それとも代々仮面を受け継いで………?NPCから何か貰う事が絶対にない訳じゃない」

『その可能性も無くはないですね。ですが今すべきことは………』

「なるべく早く王都に行くことだね」


 目的地が決まってからは早かった。

 準備を済ませ、王都を目指す。今いるここと、子爵領を含めた合計四つの領地を通れば王都に着く。

 移動手段は馬車位か………。そうなったらどこかの領地で一泊して、学校に行ってからまた再開かな?

 セフィラ………。先生が順番を間違えたという所も気になるが、先ずは王都を目指すべきだろう。大人しく馬車に乗ろうか。 

 旅が本格的な物になってきたことに少し興奮気味になりながらも、僕の胸には小石が引っかかっていた。

 

————————


 ラランボ子爵領の隣、同じく子爵領のミジュア領で宿を取り、現在はログアウト中だ。

 宿や教会はセーフゾーンになっているため、ログアウト中のデスの心配はない。 

 今丁度二時間目の国語が終わり、将太が僕の席までやって来た。その手にはFAの情報が纏められた本が握られている。昨日発売した最新号だ。

 

「将太。鼻息が荒いけどどうしたの?」

「賢人。これを見ろ!」


 そこには見開きすべてを使って、大きな文字でこう書かれていた。


「神剣のザック単独で特異種レイドボスを討伐?」

「そう!あのFA最初のプレイヤー神剣のザックが、上級プレイヤー二十人で挑んでも勝てなかったボスを一人で!たった一人で討伐したんだ!やっぱすげえなあーカッコいいなあ」


 どうやら将太はザックさんのファンらしい。

 僕も一応プレイヤーとしてある程度の情報は把握している。ザックさんも相当有名な人だ。

 美形で性格もよく、尚且つ強い。天は二物も三物も与えていしまっている様な人、知らない人の方が少ないだろう。


「やっぱ九帝の中でもザックさんが一番だよなあ」


 九帝、FAで特に優れた九人のプレイヤーがそう呼ばれている。

 神剣のザックは勿論の事、他にも色々な人がいるらしい。あの龍面の男の人も「龍王」と呼ばれて九帝の一人に数えられている。

 九帝はただ強いだけの人が選ばれる訳ではなく、歌姫や鍛冶王、釣り人までいる。

 

「九帝か………」


 旅をしていたらいつか会えるだろう。そう思いながら将太の話を聞いていた

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