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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
零章 書き出し
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第2話

少し遅れました

 今日も授業が終わって家に帰ると、いつもと違った光景が目に飛び込んできた。

 いつも何も置いていないはずのテーブル、それの上には少し大きめな箱が置いてあった。ラッピングされている訳でもなくメモ用紙の様な物が箱の上に張られただけのただの段ボールだった。

 小さな紙にはきれいな字でこう書かれていた。


「やりすぎないように」


 何度も見たことのあるその字は、一目見ただけで父の書いたものと言うのが分かった。

 言葉の意味はよく分からなかったが、この箱は父からの贈り物何だろうという事は理解できた。ガムテープで適当に閉められた蓋は、急いで準備したのが窺えた。

 中身は気になる所だったが、洗濯や色々とやらなければならないことがあるのでそっちから先に済ませることにした。風呂に入ってご飯を食べて、やるべきことを全て終わらした僕は、もう一度あの箱の前に立っていた。

 正直食べてる時も洗濯物を干すときも目の端にちらついて物凄く気になっていたが、今になってふと思ったことがある。

 これは本当に僕が開けて良いものなのかと。

 家には父と僕の二人しか暮らしていないが、もしかしたら父が誰かから預かっているものかもしれない。それを勝手に開けてしまえば面倒なことになるんじゃないだろうか?

 父の字で書かれた紙があったから多分僕のかもしれない。でも百パーセントでは無いのだ。もし悪い方の確立が当たってしまった時の事を考えると……。

 よし、帰ってくるまで待とう。その考えが最適解だと僕は確信して箱を放置し、部屋に戻った。


————————


 父が帰ってくるまでの間FAの事について色々調べてみることにした。

 T社が開発した新作ゲーム。そのT社は元々AI関係の会社だったらしく、少し前にゲーム制作をしていた会社を吸収して今のT社になったとサイトに書いてあった。

 FAは他のVRMMOとは違い、本当に別の世界の様なゲームらしい。広大な世界、数多の伝説等々新作に相応しいクオリティになっていた。

 一番の違いはNPCと呼ばれる、プレイヤーではないキャラクターのリアルさだ。

 従来のゲームではNPCに話しかけると、決まった返答しか返ってこなかったが、FAではAIの技術を使用し本物の人間と話していると思うぐらい、NPCに人間味がある。

 決まった返答は無く、その時の状況や話しかけた相手等、会話と何ら変わりのないものらしい。

 そして、FAの核とも言える設定が、NPCや特別種のボスのリスポーンは無し、装備品も唯一無二の物。

 この設定に対する開発責任者の言葉、インタビュー記事が載っていた。


「何故このような設定にしたのか?」


 という質問に対し、開発責任者はこう話していた。


「何故?んー……そうですねえ。このFAはもう一つの世界というメインテーマを掲げて制作に当たりました。普通のゲームであれば、NPCは死にませんしボスのリスポーンも周回様に当然あります。ですが……現実で一度死んだ者が生き返ることはありますか?流石に通常のモンスターは何度も出現しますよ?そうしなければバランスが悪いですし、ですがFAは言うならば異世界です。ですから————————」


 少し読み始めたくらいで父が帰ってきた音がした。

 さっきの箱の事も聞きたいし、パソコンをスリープモードにしてから部屋の扉を開けてリビングに入った。

 

「おかえり」

「あ、ああただいま。この箱開けなかったのか?」

「え?うん。開けていいのか迷ったんだ」


 僕がそう言うと、父は箱を上からビリビリと破いて開けて言った。


「これはお前の物だ」


 父がそう言って渡してきたものは、ゴーグルの様な物だった。

 見覚えのあるゴーグルは、さっきまで見ていたサイトに載っていたFAをプレイするためのデバイスだった。

 今自分が感じているものが何なのか、正直ハッキリとしない。ただ傍にある鏡に映っている僕の顔は、口元が少しニヤついていた。

 久しぶりに父が僕に物を買ってくれたのも嬉しかったが、それ以上に僕の事をちゃんと見てくれているんだと、そのことが確認できたことが他の何よりも嬉しかった。


「今日はもう遅いし明日も学校だろう。設定やキャラメイクは明日にしなさい」

「……父さん。明日は土曜日、学校は休みだよ」

「え……?あ、本当だ。しまったな、少し根を詰めすぎたようだ」


 曜日感覚が狂う程疲れている様で、明日を金曜日だと思っていたらしい。そう言えば父の仕事について詳しく聞いたことが無かったが、どんな仕事をしているんだろうか?従業員が多いような大手企業ならこんなに仕事はしないはずだから、小さめの会社で働いているんだろうが…。僕が知っているのはデスクワークをしているという事だけだった。


「明日が休みなら良いだろう。充電はしなくていいタイプだから直ぐに設定に入れる。本体設定はそれをつけて寝転がってたら終わる。後はソフトを開いて指示に従っていけば大丈夫だろう。私はもう寝るがお前も夜更かししすぎないようにな」


 そう言って父は部屋に戻った。流石に疲れたんだろう。部屋の扉を少し開けて中をのぞいたらもう寝息が聞こえてきた。

 音を立てすぎないように気を付けながらゴーグルの電源ボタンを探すが、中々それらしいのが見つからない。試しに着けてみると機械音を鳴らして電源が付いた。

 思わず声を出しそうになったが父の事を思い出し我慢する。

 それにしても凄いな……。どうやってついたんだろう。感心しながら設定を始めようとしたが、何が何だかさっぱりだったので結局パソコンを立ち上げることになった。

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