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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
零章 書き出し
18/138

第18話

「探検していい!?」

「これは僕も見てまわりたいな……。いい?灰野」

「まあ…。別にいいよ、でも父さんの部屋とかはダメだから」

「分かった!!」

 

 そう言った将太は、真っ先にトイレに向かった。

 そしてお決まりになった言葉を発した後、そのまま風呂場へ。風呂場は洗濯機も一緒に置いてあるから多少広めの作りだ。

 

「風呂と合わせたら俺の部屋位ある……」

「……どんまい」


 次はキッチン。冷蔵庫と覗いていた。


「うちの母ちゃんが見たら発狂しそう」

「あ、これ母さんが欲しがってたフライパンだ」

「は?あの高い奴?」

「うん」


 物色しては嵐の様に去っていく、ただ汚したり壊したりもしないし、ちゃんと綺麗に元に戻していくから嫌な気持ちはしなかった。

 次に向かったのは車庫だ。いつも父さんが使っているであろう車は当然無い。


「もう驚く元気も無いや」

「普通にここで生活できるんじゃ?」


 車が止めてあるスペースはぽっかり空いていたが、奥にシートが被せてあるバイクらしきものがあった。もう何年も動かしていないと思われるそれには、ほこりが被っていた。

 僕も気になったのでシートをはがすと、ほこりが大量に宙に舞って三人でせき込んだ。

 

「かっけえ……」


 中から出てきたのは少し古いバイクだった。

 紫色でボディにあるキキョウの花のペイントが目立っていた。


「灰野のお父さんはキキョウの花が好きなんだ」

「うん。僕も花を閉じ込めたストラップ持ってる」


 幼稚園の時から鞄に付けているストラップだ。父が元々持っていたもので、少しどころかだいぶ年季が入っている物だった。

 暫く将太がバイクを堪能し、(見てるだけ)次は僕の部屋に向かった。

 僕の部屋はパソコンにベッド、本棚やソファ、テレビが置いてある。もう驚かなくなったと二人は言っていた。

 

「これ、家族写真?」


 圭吾が棚の上に置いてあった写真を手に取り言った。それを将太が覗き込むように見て言った。


「お父さんイケメンー!賢人……母ちゃんと似てねえな」

「ああ、母さんも良く言ってたよ」

「ん?言ってた?」

「僕が十歳の時に出て行ったからね、それでも母親だから一応写真は飾ってるんだ」


 僕がそう言うと、空気が一気に重くなった。何か悪い事でも言ったかな?と思っていると、将太が慌てた様子でパソコンの上に置いていたゴーグルを指さして言った。


「こ、これでゲームしてんの?」

「そうだよ」

「へー、見たことない機種だね」

「僕も良く分からないんだ。でも普通にゲーム出来てるしいいかなって」

「た、確かにな!よし次見て言い?」


 一刻も早くこの場から去りたいという感じで将太が言った。

 何か嫌な物でもあったかな?人を部屋にあげたのは初めてで気分を悪くさせたなら申し訳ない。でも……。


「二階は全部父さんの部屋とかしかないよ。殆ど使ってないけど」

「じゃあ、庭で遊ばない?広かったから少し見てみたいんだ」

「良いよ」


 三人で靴を履き外に出る。花壇がある方とは反対の庭に向かった。

 反対側もあるの?と驚いていたが、花壇がある方はもし花壇が荒れてしまったら大変だから流石にあそこでは遊べない。だからもう一つあると説明した。

 屋根付きの場所に、卓球台が置いてあるのでそれで遊ぶことにした。負けたら交代と言った感じで。

 何試合かしたが、僕が経験者だったこともあってか圧勝だった。


「卓球してたなんて聞いてねえよ……」

「言ってないしね、でも久しぶりにしたよ」

「それでも強かったね……。うわ、凄い汗だ」


 三人ではしゃいでしまったせいで物凄い汗をかいてしまった。

 このまま帰るのは嫌だろう、家の風呂を使うか聞いたが…。


「あの綺麗な風呂場?無理無理。あそこ使って汚すんだったら銭湯行った方が良い」

「銭湯か、良いね。ほら裸の付き合いって言うだろう?」


 ……という事で銭湯行きが決まった。知り合って一日の人物と裸の付き合いというのに違和感を覚えつつも、着替えとタオルを人数分持っていくことにした。

 下着は家に未開封の物があったので二人にはそれを使ってもらう。主に圭吾が付きっぱなしの値札を見て申し訳なさそうにしていた。


「なあ圭吾。これ俺の服よりも……」

「……言うな」


 幸い銭湯は歩いてすぐの場所にあったので、直ぐにお風呂に入ることが出来た。

 僕は感じたことのない高校生らしさを感じつつ、風呂場に入った。先に入っていた二人を探すと、二人共同じ一点を見つめて固まっていた。

 二人の視線の先を見ると、そこには背中に虎の刺青が入った男の人が湯船に浸かっている姿があった。

 

「……どないしたん?あ、やっぱこれ気になる?」

「い、いえ!全然!」

「嘘言うな、気にしてへんかったらそんなまじまじ見いひんよ」


 と、カラカラと笑いながら刺青の男の人は言った。

 すると奥の方から、聞きなれた声がした。


「秋。あまり子供をからかうな。それに怯えているだろう」

「はっ!お前の背中にあるもんよりは怖ないわ」


 湯煙の向こうからそう言った人の顔は見覚えがあった。

 だがこんな時間に居るわけが……。


「父さん?」

「…………賢人?」

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