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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
三章 魔王と姫とLASTライブ
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第141話

久しぶりの投稿ですみません。普通に書いてませんでした。

 それぞれの戦場でそれぞれが役割を果たす中、龍と共に地上に降り立った僕は、その力の強さを身をもって感じていた。

 今できる最良の選択をした上でこの負荷のかかり方は、はっきり言って異常と言わざるを得ない。

 肌の焼けるような痛みと、足がついている地面が徐々にひび割れていく現象。精一杯抑えていてこれなのだから、正直契約前よりもひどいレベルだ。


「お前は使い方がなっていない。そもそも、微妙に流れていた力が本来の量に戻ったんだそうなるのは当たり前だ。抑え込もうとするな、貯めこむことを意識しろ。心臓のすぐ横に、もう1つの心臓があるとイメージするんだ」


 ステラが突拍子もないことを言い出した。

 口で言うのは簡単だろう。もっといいアドバイスはないものか………。


「そんなこと言ったってこの状況じゃ集中できないでしょ!?あいつの攻撃、徐々にスピード上がってるんだよ!」

「つべこべ言わずに言われた通りにしろ!お前は体で抑え込もうとするから全体に力が広がってコントロールできないんだ。一か所にまとめればいいだけの話だ、そう難しくないだろう」


 それならそうと最初から分かりやすいように言えばいいと思うのは僕だけじゃないだろう。

 ちょっとカッコつけて心臓とかいうから余計に分かりづらくなっているんだ。

 とりあえずステラのアドバイス通りに一か所に集中する。すると、さっきまでの抵抗が嘘だったかのようにすんなりと痛みが引いていく。確かに胸のあたりに力がたまっていくような感覚があった。


「マスター危ない!」


 アイに耳を引っ張られ顔が左にずれる。その瞬間目の前すれすれを触手が通り過ぎ、僕の頬をかすめていった。擦り傷からは血が滲み、アイが引っ張ってくれなかった未来を考えゾッとする。

 集中しすぎるとこうなるが、今の一瞬でまた痛みが全身に広がる。どちらもおろそかにできないが、どちらも取るのは難しい。練習が必要だが今はそれどころではない。

 猛攻を破断で何とか防いでいる状態で、ステラの援護も中々厳しい。疲労と状態を考えてもさっきの着地で限界だろう。今は口出しが精いっぱいだ。

 

「君は星の力になれてるかもしれないけどさあ………、僕は初めてなんだからもうちょっとサポートしてよ!」

「はっ!よく言うわ。お前から流れてくる力など、蒼と比べれば絞りカスも同然だ!我だって苦労してるんだ!」


 口喧嘩を挟みながら、今後のことを考える。

 戦場は2つ。ここと少し向こうの戦場。正直言えば、ここはそんなに大変ではない。最も重要ではあるがあれがまだ一体しかいない以上、軽口を叩けるぐらいには余裕がある。まあ厳しさとは別だけど………。

 僕が焦っている理由はもう1つの戦場にある。そこに感じる圧倒的な気配。悪寒と嫌悪が入り混じるような気持ちの悪い感覚。デガの時以上の気配を感じていた。

 破壊の因子が肌を焼く痛みとは別に、殺気に似た寒気が肌を刺す。一刻も早くその場に向かいたいが、ここを離れるリスクと天秤にかけるとそれは愚行だと判断する。

 直感で向かった場所だったが、よく見ればステータスに若干のバフが入っている。原因は確実にあの歌………。帝級の歌姫がかけているものだろう。この状況でも演奏を続ける彼女たちは普通にすごいし、それだけ覚悟があるということだ。

 この護衛の人たちも中々強いプレイヤー達だが、攻撃を防ごうとして飛ばされていた。恐らく攻撃に貫通効果か、吹き飛ばしの効果があるだろうと思って受け流していたが、予想は当たっていたみたいだ。

 デガの時はそんなものなかったし、もっと単純だった。やはりあの時より危険度が上なんだろうが、クエストの発注など運営の対応はまだない。


(今のままでも十分対処可能ということか?あっちにあるこの大きな魔力とも関係があるのか………)


 複数の可能性を考えて一番しっくりくるのは、これも想定内だった可能性だ。

 魔族の動きが活発になっている中、多くのプレイヤーを集めた。そのおかげで国は助かってるし、今も何とか持っている状態だが、逆に捉えることも可能だ。プレイヤーを集めたから戦争が始まったし、あれも出現した。もしこれが計画通りに進んでのことであれば、クエストの発注がないことにも頷ける。

 が、一人で考えても埒が明かない。いったんステラの様子も見たいし、さっさとあれを処理しよう。

 早速気になったことを検証することにした僕は、さっきの要領で破壊の力を破断の刃の1つに集める。一か所に集めている間は、力が影響を与えることはないと分かっているので安心して完成させる。

 

「名づけて破壊の刃。それいけ!」


 まっすぐに放たれた刃は黒いモノの脳天に突き刺さり、音を上げてはじけ飛んだ。それと同時に、刺さった場所からボロボロと崩れ去り、最後には跡形もなく消えてなくなった。

 貴重な刃が一枚無駄にはなったが、実験結果を考えれば安いものだ。


「さて………とりあえず情報収集をしようか。わからない事が多いしね」


 一旦脅威は去ったということで、護衛の人たちに状況の説明を求めることにした。


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