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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
零章 書き出し
14/149

第14話

遅れました

 先生がくれた魔女印。良くも悪くも絶大な効果があるこれは、余り見せない方が良いだろうと再認識した。

 使えるものは使うが、今みたいに多用しては良い結果にはならない。今みたいに偉い人との関りを持つという事は、睨まれる可能性もあるという事だ。

 それに身分を証明するだけに使っていても目立ちすぎる。早めに身分証を発行した方が良いだろう。

 まあそれは置いておいて、今は目の前の事に集中しよう。


「こちらの子爵様の領地では窃盗が多く、それを解決してほしいと頼まれて私はここに居ます。まあそれはもう解決したのですが、また別の問題が出まして……」

「それは……どういった問題で?」

「実は……捕縛した窃盗犯の複数がバラーリア伯爵の命でやったと言い出しまして……」

「なっ!お前、私を侮辱するのか!」

「いえいえとんでもない。私もそう言った事実は無いと思っています。が、犯人の一人なら未だしも複数が口にしたのも事実。こちらも事実確認(・・・・)をと思いまして」


 バラーリア伯爵が小刻みに震える。

 怒りでなのか、屈辱感からなのか、はたまた恐怖による震えなのかは分からないが、この反応を見るに僕の作戦は成功と言っても良いだろう。

 元々選民思想の強い人物。そこら辺の調べはついている。いくら大魔女の弟子とはいえ身分は平民と変わらない。と考えているんだろう。さっきの口調も子爵の反応とは違っていたし……。そういう奴がとる行動は大体想像がつく。


「兵士共!こやつも不敬罪でとらえるのじゃ!」

「い、いやしかし……」

「口答えするな!」


 先生の蔵書、今では僕の物だがその中の一つに長編物の小説があった。


『内列七番234、英雄と姫の恋愛小説ですね?』


 ああ、そう。その小説に出てくる主人公とヒロインの恋を邪魔する貴族も、バラーリア伯爵と全く同じ思考回路だった。

 その本と、これまでの行いから推測した結果、兵士を使って捕らえると思っていたがまさか本当にそう来るとは……。


「お待ちください。お互い身に覚えのない罪で捕らえられるのは嫌でしょう。ですから……王国裁判でハッキリさせませんか?」

「なにを言うておる。子爵風情と平民のガキ一人より私の発言の方が本当に決まっておろうが」

「王国法第三条。貴族間での問題は身分の差関係なく神のもとでの証言が優先される」

「な……何を—————」

「第四条。これを裁判とし背信者には断罪の天使が烙印を与える……。神の前では嘘は付けませんし、貴方が嘘を言っていないというのであれば……もちろん受けてくださいますよね?」

「うぐっ……!」


 ここで受けなければ「私がやりました」と言ったも同然。バラーリア伯爵は兵士に連れられそのまま牢屋行きだ。

 バラーリア伯爵はこれを受けなければならない。だが、もし双方の言い分がどちらも真実だった場合、両方無罪か有罪のどちらか…。子爵も攻撃に近いことをしているのは事実だから無罪で済むだろうと、バラーリア伯爵は考えているだろう。

 神の前では嘘は付けない。この法則を使って裁判は神官の立会いの下教会で行われる。

 だがラランボ子爵は噂を流したか聞かれても、違うと答えることが出来る。何故って?流したのは僕で子爵は関係ないからだ。

 確かに子爵の依頼で僕は子爵の領地を立て直す契約をした。だがそこに伯爵に対する攻撃は含まれていない。屁理屈だと思うかもしれないが、これが抜け穴だ。

 後は裁判が終わって僕の仕事も終わり、兵士と共に出て行った二人の裁判の結果を待つとしよう。


————————


 数時間後、迷いが晴れた表情のラランボ子爵が帰って来た。結果は言うまでも無いだろう。

 無罪どころか賠償金まで貰い、更に領地を発展できると言っているほどだ。


「ありがとうございます!貴方のお陰で助かりました。何かお礼をさせていただきたい!金品でもなんでも好きな物を用意します!」

「本当ですか!では——————」


 

 

 辺境へ向かう馬車の中で、子爵領であったことをノートに書き留めていた。

 確かに打算アリでの行動だったが、全てがそうだったわけじゃない。純粋な善意も確かにあった。


『その言い方ですと打算が大半を占めています』


 まあ否定は出来ないけど……。

 僕が子爵から貰った物、それは……。


「では、子爵領秘伝の串焼きのレシピを頂きたい」

「……え?それは……」


 流石に不味かったか?とも思ったんだけどそんなことも無かった。


「それだけでよろしいのですか?」

「はい。私は金より知を価値あるものとする魔女の弟子です。貴方の領地の食に関する知識は金よりも価値のある物ですから」


 子爵は魔女の弟子に褒められたと大喜びし、串焼きの他にも沢山のレシピを教えてくれた。それこそ一冊本が出来る位に。

 また一冊本が増えたが、大図書館のお陰で全く問題なかった。ついでに身分証も発行してもらい、これからの旅も問題なく続けられる。


「次はドラウス辺境伯領。魔物と言うより隣国の警戒の方が忙しいだろうね」

『はい。軍備にほとんど予算が回っているため、住民は軍人とその家族が九割を占め、他は定住者では無い者達です』


 そんな場所に向かうのは、ある理由があるからだ。

 マップを埋めるためというのもあるが、メインは……。

 レベルアップの実という物が取れる場所だからだ。

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