第130話
天空城に足を踏み入れた僕は、その意外な光景を見てなんと言えばいいかわからなかった。
ビルの様なものが見えたことは雑誌を見て知っていた。だが、その他の建造物は見たことが無かった。勝手にSFチックなものを想像していたのだが、実際は普通の家やお店の様なものが並んでいた。
そんな普通の町並みには似合わない西洋風の城が奥に見える。おそらくあれが本当の天空城なんだろう。城というにはこの風景は生活感が溢れすぎている。
住居や雑貨屋、公園のような場所まであるようで、本当に登下校中の道のりと変わらない。せっかくの未到達領域なのに情緒もへったくれも無いじゃないか。そう思いながらとりあえずは城を目指して歩いていた。
普通だった街並みも、中心である城に近づくにつれて様変わりを始めた。見たことのない建築様式や、道の上を通る透明な水路。二メートルを超えるであろう玄関を持つ家や、ツリーハウス等々。言うなれば多種族向けに町並みが整えられていた。
やっとそれっぽくなってきた町の中を歩く事数分。僕は見えない壁に行く手を阻まれた。
「…………?通れないんだけど」
何をやっても効果は無い。もし向こう側から今の僕を見れるならプロ顔負けのパントマイムを披露している事だろう。
見えない壁を触っていると、警告音と共に目の前にウィンドウが表示された。
「必要条件未達。侵入不可領域い?」
せっかくここまで来たというのに、何もないまま引き返せという事か?目の前にあるのに?
「冗談じゃない。こんな壁無理やりにでも—————————」
最後まで言いかけて、僕は口を閉ざした。目標を達成するでもなく、謎を解くでもなく、無理やり破壊しようとしたという事実に頭を抱える。
余計に早く解決方法を探したくなったが、結局ここにいても始まらない。とにかく他を見て回って何もなければもう一度考えればいい。何もしないよりは行動したほうが百倍ましなのだ。そろそろあんぱんさんたちも行動を始めている頃だろう。何か分かったかもしれないし、一度合流をしてみることにした。
来た道を引き返しながら、もしここが空振りだった時の事を考える。何もなければ、今まで通りの旅は難しくなるだろう。強い力を制御できないんじゃ意味がない。
だが、かといって旅を諦めるのかと言われると話が変わってくる。
「もっとよく考えないとな」
弱音を吐きそうになった口を手で覆い、とりあえずは前向きに考えることにした。暗い気分の時は暗いことが寄ってくる。少しでも明るい方が運が味方になると思っているし、今までも実際そうだった。諦めなければ最後には何とか解決できたんだ。これからもそうやっていけばいい。
一発自分に活を入れ、少し赤くなった頬のままあんぱんさんたちと合流した。




