第128話
煌びやかなライトを浴びて、金色のペンライトが星のように輝く夜空の絨毯を歩く。誰もが彼女を奇跡の存在と崇め、数多くの偉人と肩を並べ歴史に名を残した。
歌姫ローレライ。大スターである彼女の人生はあっけなく幕を下ろした。輝く舞台でもなく、情熱的な非日常でもない。ライブ前の最終確認、ねじが緩んでいた証明が彼女の命を奪った。故意か事故か、しばらくは議論が続いたが…………。
「運が悪かった」
世間は最終的にそういうようになった。残された家族の気も知らず。
歌姫には二人の娘が居た。一つ年上の姉は母を尊敬しており、母から歌の指導も受けていた。そんな二人を嬉しそうに見つめている妹。母の死から二人はガラッと変わる。
今では歌姫の再来と言われるようになった姉は輝きを取り戻し、妹は部屋に籠るようになった。
事故から前を向いた姉と、故意に母を奪われた妹。だが二人に共通しているのは、歌姫ローレライの大ファンだという事。
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目覚ましの音で目を覚まし、バターの入ったロールパンを頬張りゲームの準備をする。
登校中の高校生の声を聞きながら、ログインを開始し暗い部屋から抜け出す。
目を開けると、そこは綺麗な世界。皆がなりたい自分になれる大好きな場所。ここでは私も、皆の「歌姫」
後に控えるライブを絶対に成功させると意気込む少女は、この世界の仲間と再度打ち合わせを行った。何度も何度も確認し、自分の目でも確かめる。
ツアー最終日は魔族との戦闘で疲弊しきっている国境沿いの砦でライブが行われる。十分な音響設備でバフ効果のあるライブを行えば、砦の兵士の士気向上にもつながる。つまり大事なイベント。運営からもそう伝えられていた。
失敗は許されない。もし失敗してしまえば、この国が魔族に滅ぼされる危険性がある。
「絶対に頑張らなきゃ…………」
人と魔。両陣営にとって、この最終日のライブは重要なイベントになる…………。
物事が全て思い通りにいくとは限らない。大事なことの前には、大変な事件がつきものだから…………。




