第13話
まず初めに、もう一つの方の更新を来週から再開します。
こっちについては頑張って更新を続けるつもりです。
正直に言うともう一つの方の外伝の小説の存在を完全に忘れており、そっちも書いていかないとと思っています。同時投稿の恐ろしさを知りました。
多くの人に面白いと思ってもらえるものを作ろうと思っているのでこれからもよろしくお願いします。
証拠を集めようにもどうすれば良いのか…。
恐らく普通にやって分かるような証拠の残し方はしていないだろう。そんなヘマをするとも思えない。
闇雲に動くのが良くないことは身に染みているが、だからと言って全く動かず考えているだけでは問題の解決にはつながらない。
『実行犯が伯爵の息がかかった者なら口を割らすことはできますが……』
そう。それならば話が早い。
先生がくれた本の中には、相手に嘘をつかせることを禁じる、呪いに近い術の使い方が書いてあるものがある。それを使えばいいんだが、もし関係のない人だった場合。そして相手に感づかれた場合。考えられる最悪の結果になる。それだけは避けたいが……。
いや、待てよ?ただお金が欲しいだけなら一回で大量の金を盗んで逃げた方が効率がいい。わざわざ捕まるリスクを上げてまで潜伏し続ける理由は無いはずだ。
でも全員が伯爵関係の者では無いだろう。大勢いる中の本命を一度で釣らなければいけない。
『マスター。深く考えなくとも、犯罪者を捕獲した後に大魔女の印を見せて伯爵本人に罪を吐かせればよいのでは?』
いや、それじゃ駄目だ。言わされたという逃げ道が出来る。
でも……。別に徹底的にやる必要は無いのか?先生も言っていた。「貴族社会は信用が第一。一度良くない噂が立てば後は勝手に崩れることが多い」
それは商人にも言えることだ。
……。成程やっぱりアイは頼りになる。こうやって僕を答えに導いてくれる。
『恐縮です』
「グランさん。決まりましたよ、この領を救う案が」
「おお!本当ですか!」
「はい。やられたらやり返す。こういった時の常套手段です」
僕が考えた案はこうだ。
先ず初めに、子爵領の警備隊の練度を上げる。
幸いなことに子爵家は今までの分の貯蓄があるため人員の確保も簡単。指導者は変わり者が居るだろう。いないときはまた考えるが……。
次に伯爵の悪い噂を流す。税金を中抜きしてるとか適当にでっち上げて伯爵領、主に商人に広める。
嫌な噂のある伯爵領。そこに犯罪者が居なくなり警備が強化された子爵領の存在が広まったら、大勢とは言わなくても少なくない数の商人が流れてくるだろう。
そしたらまた伯爵が手をまわしてくる。今度は直接的に……。
「悪いことを考えるのって楽しいんだな」
『はい。メティスさんにそっくりな顔をされています』
————————数日後。
学校帰りにやるべきことを終わらせた僕は、早速FAをプレイしている。
こっちでは一週間以上経過している訳だが、成果はまあまあと言ったところだ。
商人はもとより少し多いくらいまで増え、犯罪者の一掃も完了済み。警備兵も強くなってきている。
兵の教官はアマ姐さんが担当していた。あのとき助けたのは領主の娘だったようで、流れで頼んだらしい。実力も申し分なく、確実に成果を出している。たまに兵士の口から姐さんは両性だという事を聞くが、このゲームでそれは無いだろう。アマ姐さんの男の姿何て見たことないし、多分幻覚を見る程厳しいだけだろう。
ここまでうまくいっているが、未だ根本的な解決にはなっていない。予想が正しければそろそろ……。
「ケントさん!バラーリア伯爵が来ました!」
良し。やっと来た。これでこの問題は解決できるだろう。この領地も十分見たしそろそろ別の所に行きたかったからなー。
バラーリア伯爵を呼び、応接室で話をする。僕は一応そばで立っている。
「ラランボ子爵。ここへは事実確認に参ったのだ」
「事実確認……ですか?」
「そうだ。あろうことか我が領地の者達がラランボ子爵にそそのかされたと言うのでな。そんなことは無いだろうが一応領主の私が確認に参った。で?どうなのだ?」
こいつはアホなんじゃないのか?普通そんなこと言うか?
『栄養が腹に行って頭に行かなかったようですね』
普通にこいつは情報を掴んでここに来たんだろう。ならそう言えばいいはずだ。なのに何でこんなに遠回しに言う必要がある?嫌味を言いに来たのか?
そう思っていると、扉が乱暴に開かれ数名の兵士が中に入って来た。だが子爵の兵じゃない。
右胸に鷹の紋、王国兵だ。
「ラランボ子爵。貴方には伯爵領に対しての妨害行為の疑いがかけられています。よって王国法にのっとり連行させていただきます」
「な!?待ってくれ私は—————」
「言い訳をするな見苦しい!すでに私の兵が情報を掴んでおるのじゃ!」
兵士が子爵に縄をかけ始め、バラーリア伯爵がニヤニヤしながらそれを見ている。
僕も口角が上がるのを抑えるので必死だった。まさかこんなに上手くいくとは思っていなかったからだ。
「ちょっと待ってください」
「誰だお前は」
兵士が警戒の表情を見せる。後ろの数名が剣の柄に手をかけている。
僕は左手にある魔女印を見せてこう言った。
「こういう者なのですが……」
「な……!それは魔女印!?し、失礼しました!おいお前ら、剣をしまえ!」
「は、はっ!」
いやーこれすっごい便利だな。先生には申し訳ないが使えるものは使えと教えたのは先生だ。
そう自分に言い聞かせて最後の仕上げを終わらせることにした。
感想待ってます!




