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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
三章 魔王と姫とLASTライブ
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124話

 王は予言の内容を伝えた後、僕の返答を待った。

 だが、そんな話は先生から聞いたことも無ければ、護衛騎士の存在すら知らなかった。

 あの森には先生とボウしかいなかったから、おそらくその時だけの護衛だったのかもしれないが、それにしても先生について知らないことが多すぎる。

 予言の内容も不吉すぎるし、見方によっては僕が悪者側じゃないか?この内容でよく処刑とかされなかったな。


「王様、実は…………」


 僕は何も知らないという事を何度も説明した。

 だが、国の危機にそんな話は通る訳が無く流されるまま戦力の一人として数えられることになった。

 龍の住みかに行く予定があるという話もしたが、その道のりが丁度魔族の領地に向かうルートと近いらしく、そのままの流れで斥候を命じられた。

 拒否したっていい。別に無視して目的だけ達成して帰ればいい。そう思いもしたが、先生の名前を出されると断れなかった。

 

「とりあえず、早めに用事を済ませてくるのでそれからもう一度詳しい話を聞かせてください」


 一旦保留という形に落ち着き、その場で地図をもらって退出した。

 ルート的にはおよそ一週間の道のり、その間でステラに会う事になるので長く見積もっても一か月もかからないだろう。早めに終わらせて行くりと考えればいい案も浮かぶはずだ。

 なんせ話をしに行くだけだ。友達というからには話を聞く事なんて簡単すぎるだろう。

 周りの皆はステラの事をやばいやつの様に話しているが、正直あの感じだったら優しいという印象しかない。


「大丈夫…………だよね?」

「マスターがどう思っているかは分かりませんが、はっきり言って甘すぎます。あれはまさしく破壊の化身です」

「実際に影響を受けてとんでもないことをするところでしたからね」


 ライブラとアイの二人にそういわれ、少し心配になってきた。

 悩んでても仕方ないし、早めに住みかを見つけようと息巻き町を出発した。周辺の人に聞き込みをしながら目的地を目指す事三日。とりあえず住みかがあるであろう場所にはたどり着いたが、それらしいものは影も見えない。

 破断で空中から探そうとしたが、調子でも悪いのかうんともすんとも言わない。これではほぼ手詰まりなんだが…………。

 どうにもできず頭を抱えて悩んでいると、ライブラが難しい顔をしながら口を開いた。


「おかしいですね…………。王の力を微弱ですが感じます。一体どこから…………」

「王?もしかして星王の事?」


 星王。ライブラ達を作り出した存在であり星霊の祖。

 そんな存在が居るとは思わないが、星霊であるライブラがそう言っているんだからそうなのだろう。


「分かりませんね、ここなら星も綺麗に見えるはずです。夜まで待ちましょうか」


 そう言ったライブラだったが、そんな彼女を見てアイと顔を見合わせた。

 この曇りずらの下、ライブラだけが僕たちと正反対の顔をしている。明日になったら探索を開始しよう。そう思いながら今夜は諦めることにした。

 だが、そんな僕たちを尻目にライブラは黙々と準備を進めていた。

 本体である天秤を取り出し、その前に膝を付いて目を閉じる。彼女の体からうっすらと光が天まで伸び、分厚い雲に小さな穴をあけた。

 時間が経つにつれて、それが徐々に広がっていく。


「星霊は夜になれば力が増しますから、彼女を信じて待ちましょうか」


 最初は疑っていたアイもそういってゆっくりし始めた。

 最近は動きっぱなしで疲れたし、僕も少し休憩しよう。本を読んでれば時間はあっという間に過ぎるはずだ。あと三時間ぐらいで空が完全に見えるようになるだろう。それまでは気長に待つとしよう。

 

————————————————


「見えました!あれです!」


 急に響いたライブラの声に驚いたが、何とか変な声は出さずに済んだ。

 あたりは暗く、月明かりにぼんやり照らされている。よく見える綺麗な星空は、現代の日本では見れない光景だろう。

 そう、あまりにも幻想的だ。宙に浮かぶ島何て見えない。星しかないのだ。


「あ!今何言ってんだこいつとか思いましたね!?あそこですよあそこ!確実に星王の力の痕跡があるんです!星空に擬態してるんですよ!」


 目を凝らしてよく見てもそれらしいものは何も見えない。

 またかねライブラ君。ちょっとかっこいい儀式を始めたと思えばこれだよ。

 綺麗な星空を見せてくれたことには感謝するが、別に観光に来たわけじゃないんだ…………。

 そんな風に考えていたのが顔に出ていたのか、ライブラの顔がみるみる鬼の形相に変わっていく。


「良いでしょう、よく見えるようにしてあげます」


 そう言ったライブラの手には天秤が握られている。彼女の持った天秤が反対側に傾いた瞬間、僕の体が飛んだ。

 ふわっと浮かぶとかそんな優しい物じゃない。天地がさかさまになり下に落ちているみたいなあの感覚が僕を襲った。恐怖と驚きで気絶しそうな僕は、飛んでから少しして星空に激突し止まった。そこにあるはずのない確かな感覚に、僕の頭は情報を処理しきれず限界を迎えたのだった。

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