第106話
掲示板の情報を元に、華の国を訪れたプレイヤーがいた。彼女は情報屋、FAプレイヤーの中でも少ない数しか居ない商売人。その中でも情報を専門に扱うプレイヤーである。
そんな彼女だが、他の情報屋とは一線を画す情報の質で知られている。多くの種類の情報を扱う彼女だが、その中でもスキルや武器の情報を主に持っている。しかも運営でも知っているかどうか怪しいレベルの情報までだ。
では、なぜ彼女はそんな情報を持っているのか、それは彼女の持つ1つの道具が原因だ。「情報体解析装置」そう呼ばれるそれは、使用者が見た物の情報を解析し表示する。
本来武器や目に見える物にしか使用できないそれを、鑑定と数値化のスキルを使って使用することができる唯一のプレイヤーである彼女は、バグやチートを判別できるため、運営からそういった仕事も依頼されている。
ゲームの性質上、全てに目が行くわけではない運営が許可を出したからこそ、このチートとも呼べる力を使うことができる。
そんな運営の目である彼女は、初めて見る光景に驚きを隠せなかった。
本来少しの情報しか見えない「鑑定」のスキル。それを「数値化」し無数の暗号を表示する。そして自力でそれを解析することで情報を得ていた。数値は基本偶数で構成される。もしそこに文字や記号が入れば「バグ」、奇数が混じればそれは運営が作ったものとは別のシステム。つまり「チート」ということになる。
(数値化が中々終わらない。こんなの初めて)
本来数秒で終わるはずの数値化が、十分近く掛かった。正確にかかった時間も計測するのだが、目の前で繰り広げられている戦闘に目を奪われて失念していた。
やっと数値化された情報を確認したが、彼女は驚きのあまり声を出す。幸い試合の音にかき消され、周りに聞こえることは無かった。
(なにこれ、桁数が異常だわ。それにほとんどの数値が0!?)
数字が0に近ければ近い程、強力なスキルや魔法になる。が、今見れている分だけでも他の数字が見当たらない。つまりあれはそれほど強力な魔法という事だ。
ようやく全て見終わったが、全てが0。新手のバグだと思った方がまだ楽だ。
タッチパネルをいじりながらため息をついた彼女は、まだ数字が続いていることに気が付いた。
(改行?情報体は連続するはず。改行なんて一度も無かったし)
おかしいと思いながらも、彼女は解析を始めた。今度は0だけでは無かったのでそれが可能だったが、解析を終了した彼女の顔は青ざめる。
(な、なにこれ。急いで伝えないと!)
解析結果を周知するため、彼女は掲示板を開いたのだった。
賢者解析結果。
1>>>主
賢者の最後の技。やばかったわ
2>>>
結果出たってマジ?速くないか
3>>>
普通に俺らのMPも減ってたけど反則じゃね?
4>>>
それなw5割で止まったけどビビったわ
5>>>
雑談切り!!結果を教えてくれ!
6>>>
もうチーターでいいだろ。白だったら逆に怖いわ
7>>>主
結果は白だと思う。偶数以外出なかったし。解析は出来なかったけど間違いないと思う。
8>>>
解析できないとは?詳しく
9>>>主
数字が全部0だった。あと、情報の後にメッセージがあって…………。コピペするからまってて
10>>>
全部0wデータ取れてないだけだろw
11>>>
選択されたデータは消去済みです
13>>>主
お前にこれを見る資格は無い。が、真理に手を伸ばす姿勢は賞賛すべき物である。故に、今回の無礼は忘れよう。そして、今回小僧が使用した吸収の本当のデータをやろう。お前のその装置では耐えられない故、今私がいる場所の座標と暗号を送ろう。お前が来る頃には私は居ないが、見れば一発で分かるようにしておく。必ず取りに来い。
14>>>
なにこれ
15>>>
傲慢お嬢様か…………!?
16>>>
この文字数なら結構数字は多かったんじゃないか?よく数分で解析したな
17>>>
リアルチート。本職だろこれ
18>>>主
装置が壊れた訳でもないし、これも一言一句間違いない。だから結果は妨害だと思う。
19>>>
妨害ww
20>>>
いい方的に賢者の知り合いだろ?またこれか?
21>>>
ユニークほいほい
22>>>
あの石の製作者が妨害したならツクヨミとかじゃない?神様ならそういう事もできそうだけど
23>>>主
それは無さそう。座標が華の国じゃなかった。大橋のど真ん中だね。今度行くつもり。
24>>>
違うやつに持ち去られないことを祈る。




