第11話
詰所の様な所に連れていかれて、さっきの兵士にまるで刑事ドラマのワンシーンの様に色々聞かれてるわけだが……。
どこから来たのか?と言う質問に、メティス大森林ですとしか答えられず更に怪しさは増していった。
別の兵士も来て更に空気がピリピリしていく。
『応援を呼んでいるようですね。完全に不審者扱いです』
目の前の兵士が何かを書き始めて数分後、一人の兵士がやって来た。
中に入ってきた瞬間敬礼をされていたから、偉い人なのかもしれない。
「お前か、大魔女様の森から来たとかほざいてるアホは、いいか?あの森はな、抜けられない様になってんだよ。子供でも知ってる事だ。そんなことも知らない奴は—————」
『マスター。この人物に手の甲にある模様を見せてください』
数日前、先生との授業が始まって少ししたとき、先生はこう言った。
「お前にこれを書いてやろう。ボウの額にもある模様で私の家族と言う意味を持っている」
そして僕の手を取り、そのまま手の甲に丸と一本の棒を書いた。
一瞬だけ赤く光り、直ぐに見えなくなったそれを、先生は家族の証と言っていた。家族、そう言われたことが何よりうれしかったのを覚えている。
この模様を出すには魔力を通すだけでいい、魔力の通し方は嫌と言う程叩き込まれている。
「あの……これを見せたくて……」
「怪しい行動をするな!今すぐ—————」
何かを言いかけた兵士は、僕の左手に浮かんだ赤い模様を見て石になったように止まった。
額からは脂汗が流れて顔色が悪くなってきた。
「も、申し訳ございません!まさか親族の方とは思わず。失礼な態度を取ってしまい、このような場所に拘束をしてしまいました!!」
「え?」
『外列八番棚535、大魔女と大森林についての本に記載されていた、メティスの魔女印です。本人にしかつけることはできず、これを持つ者はメティスの親族を意味しこれだけで身分の証明になります』
「ささ、どうぞこちらへ。入国を歓迎いたします」
さっきまでの事が嘘だったかのようにすんなりと入ることが出来た。
詰所の外は市場になっていたようで、元気な声が辺りに響いている……のは良いんだが、アイ?
『申し訳ございません。少々遊んでおりました』
「僕、結構怖かったんだけど?」
『全蔵書の内容を覚えられたメティスのお弟子ならこんなことをお教えする必要は無いと思い……。てっきりマスターも遊んでいるものと思っていました』
まあ問題なく入れたから今回は勉強料と思っておこう……。アイに頼りきりになるのもあまりよくないしね。
活気のあるこの街は、さっきも言った通り食べ物がおいしい事でも有名だ。それ目当てでここに来るプレイヤーも少なくないらしい。
領主も良い人らしく、今は五代目の方がこの領地を管理している。石の道は綺麗に並べられていて、ここがどういったところなのかが分かった。
暫くの間買い食いをしながら歩いていた。話の通りの美味しさで満足げにしていると、さっきの兵士が慌てた様子でやって来た。何故来たのかは大体想像できたが、逃げる理由も無いので普通に話を聞くことにした。
「先程の事を領主様に報告させていただいたのですが、領主様が直に謝りたいとおっしゃっており……」
「領主様は悪くないですし僕も気にしてませんよ?」
「ですが……」
『恐らくですが謝罪は建前で、大魔女との繋がりを持ちたいのでは?』
そうなんだろうけど……。
もしこのままついて行っても問題は無いだろう。領主の評判もいいし、気分を害する行動や言動が無ければ滅多なことは無いと思う。だが……緊張するなあ……。
一番偉い人に会うって考えるとうまく話せるか不安になってくるし、変な事を言わないかも心配だ……。
「分かりました。今からでも大丈夫ですか?」
「はい!問題ありません!」
これからいろんなところに行くんだ、この程度の事を乗り越えられなければ全部を見てまわる、なんて不可能だろう。
兵士に連れられて向かった子爵邸は少し大きめの市役所位の大きさだった。いくら貴族としては下の方でも貴族は貴族、住む家もそれに見合ったものだった。
改めて実感するが、本当に現実みたいな世界だ。自分がゲームをプレイしていることを忘れる位に。
———————某所——
「面白い子が来たね」
「ええ、あのような人間は初めて見ました」
椅子が一つあるだけの部屋。殺風景で何もない部屋に椅子に座った人物ともう一人、髪の長い男が一つの画面を眺めていた。
「話すのが苦手……ねえ。にしては上手く行ってるようだけど」
「本人の気持ちの問題でしょう。下地はあるようですし」
「フフ。やっぱりこうやって眺めてるのが一番面白いよ。あ、そうだった。秋君に確認作業をお願いしてきてくれる?ちょっと問題があってさ」
「それでしたら父上にお願いする方が良いのでは?あの人ですと確実ですし」
「んー。じゃあそれで」
「了解しました。代表」
感想待ってます!




