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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
二章 華の国編
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第105話

普通に先週分忘れてました。

暇があれば土日で書くかもしれないです。

 遠い空、力の渦が集まる方角を見つめる人影が一人。

 

「見つけた」


 低い声でそう呟いた影は、霧となって消えた。


————————————————


 高く投げた魔核に、周囲の魔力が集まる。

 発動した術式は、吸収。空気中に漂う微量な魔力と、この会場の全ての生物を対象にした術式。それには縁真と僕も含まれる。

 最初は様子見をしていた縁真だったが、自分の力が吸われている事に気が付いたのか、顔に焦りを見せて攻撃を仕掛けてきた。


「あれは何だ!お前が作ったものでは無いだろう」

 

 魔核は壊れない。これは僕が試した結果でもある。しかも、あの桜さんの攻撃でも傷1つ付かなかった。

 それを本能的に察したのか、縁真は魔核を無視し僕を攻撃する。だが、そのすべての攻撃が防がれる。正確に言えば、僕に当たる攻撃が魔核に全て吸収されている。

 破格の性能と言えるだろう。だが、何の代償も無く使えるわけではない。これを使用している間は、他の魔法やスキルを使用できない。そして僕の魔力(MP)が切れた時、同時に残りの割合に関係なくHPが0になる。つまりこの試合に負けてしまう。

 最強の防御を手に入れる代わりに、最大の爆弾を抱えることになる。

 全ての攻撃を防がず、攻撃に集中する。そのお陰か少しずつ縁真にダメージは蓄積するが、まだ倒れそうではない。

 殴り合いを続けて数分。終わりの時間が近づいてきた。縁真の攻撃も徐々に勢いが弱まってくる。無理も無いだろう。MPは気力と同じ。それがなくなれば徐々に体力が奪われる。

 

「く…………力が」


 弱り切った一瞬を見逃さず、破断を使って最終攻撃を仕掛けた。刃と本体での集中攻撃、その全てが命中し縁真のHPが0になった。

 が、それと同時に僕のMPも0になり、吸収の制約が始まった。その時間は一瞬。一秒にも満たない時間で僕の命は赤く輝いた魔核に刈り取られた。


「おっと!?両者同時に倒れたぞ。これは引き分けか!?」


 実況の声を聴き、審判が判定を下そうとしたとき、選手が立ち上がった。黒い棒を杖の様に使いながら、立つのが精一杯といった様子だったが、確かに立った。

 

「おっとお!ケント選手が立ち上がった!十カウントまでに縁真選手が立ち上がらなければ試合は終了だ!」


 十秒。今までで一番長い時間が過ぎる。縁真が立ち上がる様子は、無い。


「十!試合終了!勝者はケント選手!」


 会場は静寂に包まれた。歓声や拍手は無く、誰もが戸惑いながら話していた。見たことも無い力、確実に倒れたはずの僕が立ち上がったこと。全てが謎だったからだ。

 何故倒れたはずの僕が立ち上がったのか、それは魔核の性質が原因だ。

 吸収の術式使用後、全てのスキルや魔法が使えなくなる。そしてそのあとすぐHPが0になるが、0になった瞬間に吸収の効果は消える。つまり理論上はその後スキルが使えるようになる。

 だが、HPが無ければ何もできない。それが普通だが、スキルの中には死ぬ間際に発動する物がある。

 『起死回生』この準備期間で僕が魔核から習得した。唯一のスキルだ。


「約束は、約束だからな」


 聞こえているか分からない言葉を言い残し、僕は静かな戦場を後にした。

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