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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
二章 華の国編
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第102話

「ここで皆様にもう一度詳しいルール説明を行います。プレイヤーの皆様の装備は稽古用道着と木刀。いずれもステータス補正は存在しません。尚、公正の為ステータスは統一とさせていただいております。フィールドは一から火、水、土、闇、光の属性を有するフィールドを用意。各フィールドにはそれぞれボスクラスのNPCが一名ずつ出現します。皆様のステータスは、強弱にかかわらず出現するボスと同じ値に設定されます。クリア目標は十分間の生存。致命的な一撃と判断された攻撃を食らった方は強制的にリタイアとなります。それでは、御武運を」


 転送後、アナウンスが流れ細かな説明があった。まだ真っ白な空間だが、あの上のカウントがゼロになったときが本当の開始何だろう。

 あと三十秒だが、それまでに装備の確認も必要だろう。

 説明通り、装備は木刀と道着。ステータスも自分のものより高くなっている。相手はやはり五剣の内誰かだろう。特訓でさらに強くなっただけでなく、ここ最近の犯罪増加で相当頭にきているはず。純粋な技での勝負は明らかに不利だろう。

(生存ということは戦う必要は無いはず。フィールドの広さも分からない以上、逃げるのは得策とは言えないが真っ向勝負は論外。攻撃をいなす事だけ考えよう)

 幸いスキルは生きているようなので、ある程度は何とかなるだろう。ただ、夜天闘気等の一部の強力なものは封印されているらしい。


「それでは、第1回華の大決戦を開始いたします」


 景色が一変し、サッカーコート程の広さの道場に切り替わる。まだ五剣の姿は見えないが、むき出しになった地面が相手の得意技を語っている。

 嫌な予感がした為、木刀を硬化させ魔法で防御を展開した。次の瞬間、地面が大きく動き剣となってプレイヤーに襲い掛かった。何百人と居たプレイヤーは一瞬で半数を下回り、かろうじて防いだプレイヤー達も深手を負った。

 無音で始まった戦闘は、一方的な物だった。開始数秒でほとんどのプレイヤーが脱落し、残ったプレイヤー達も徐々に体力を減らされていた。

 一人のプレイヤーが地割れを起こし、地中に潜んでいた縁真を発見した。


「お前がボスか!食らえ!」


 木刀で上段から切りかかるも、難なく受け止められ腹を殴られ退場。だが縁真を発見したお陰で攻撃が通ると思ったプレイヤー達が連携して攻撃を開始した。

 僕は修行を間近で見ていたから分かるが、彼らは力を使うとき必ず刀を顕現させていた。龍炎は炎の刀、流水は水の刀といったように必ず力と同じ属性の刀を使用してくる。縁真の場合は土、自然を操るがその刀が見当たらない。

 この間は金棒の様な物を振り回していたはず。それを振るタイミングが土の剣を使用する瞬間だ。つまり刀さえ見ていれば防御は間に合うのだが…………。


「いくら探しても、刀は無いぞ」

「いつの間に…………!?」


 とっさの防御が間に合い何とか耐えたが、考え事をしていたせいで周りの違和感に気が付かなかった。

 もう僕以外誰も残っていないのだ。目の前の縁真に集中しないと一人だけではすぐに退場になってしまう。


「私たちは修行の中で刀との対話を終了させた。故に顕現させずとも自由に力を操ることが出来る。それこそ、思い浮かべるだけで…………な!」


 残り五分。五分で数百人を退場させたことにも驚きだが、今はそんなこと考えている場合ではない。あと五分もこの猛攻に耐えないといけないのだ。

 地面、空、そして縁真自身からの攻撃をかわすだけで手いっぱいだが、修行してきたのは僕も同じだ。

 感覚で攻撃を予測し、木刀を使って空からの土塊攻撃の軌道をずらし縁真に当てる。余程驚いたのか一瞬の隙が出来たので、そこを見逃さず攻撃を仕掛ける。


「攻撃をずらしたのが余程うれしかったと見える。見え見えの隙に引っかかるとはな!」

 

 顔面を狙った一撃を防がれ、そのまま横腹に蹴りを食らった。それと同時に距離を取られたが、そこには僕が置いてあった爆弾が無数にある。


「爆ぜろ」


 起動式を口にした瞬間。爆炎が縁真を包む。土煙が視界を遮っているせいで縁真の姿が見えないが、直撃したのは確かだろう。

 この魔法は、賢者の術式を解析して覚えたもので発動から爆発までの時間を操作できる。1つの威力はそこまで高くないが、数を増やせばそれだけ高威力の爆発に変わる。が、これで倒れるほど縁真も弱くは無い。それでも少しだけ時間を稼げればいい、そう考えていたがどうやら甘かったらしい。

 煙が晴れたところにあったのは、土で出来た球体。そこから剣が無数に伸びて攻撃を仕掛けてくる。


「不味い…………壊しても追ってくる」


 伸びている途中で壊そうがそこから新たに伸び、折った方は自立行動しどんどん手数が増している。

 流石に回避に徹することは出来ず、相手の有利になりつつある中終了の鐘が鳴った。攻撃の手を止めこちらを見ていた縁真の顔は少し悔しそうだった。

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