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賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
零章 書き出し
10/138

第10話

遅れました

 森の西側、そこにタタミア王国と言う国がある。

 一番近く、そして手ごろな場所を選んだ結果、ここに行くという結論に至った。

 タタミア王国は魔物の出るメティス大森林浅層部に隣接し、中級者のレベル上げの場としても有名らしい。

 他には農業が盛んで商人も集まり、食べ物がおいしい場所のようだ。

 このゲームは空腹度と味覚もあるので、食べ物が沢山あるこの国は初めて行く所に最適だった。魔物が多く危険な場所は流石に早いしね。

 先生と住んでいたところで、多少の体術も教わったおかげか、苦も無く森を抜け街道にたどり着くことが出来た。

 

『ここから道なりに進めば、タタミア王国の子爵領にたどり着くはずです』

「ラランボ子爵の領地か、確かパンが有名だったね。よし、着いたら食べてみよう!」

『マスター。そっちは逆の道です』


 アイに道を間違えたことを指摘されながら、僕は子爵領に向けて歩き出した。

 後、数時間歩けばつくだろう。走っていくことも出来るがのんびり行くことにした。

 せっかく風が気持ちよく、木々の葉がすれる音が心地いいのに、走って台無しにすることは無い。別に急いでるわけじゃないしね。

 僕が歩いている道は、街道と言っても綺麗に整備されている訳では無く、車が一台通れる位の土や石で出来た道だった。

 歩くたびにジャリジャリと音がするのもまた良かったりするのだが、音を楽しみながら歩いていると、前方から悲鳴の様な声がした。

 よく目を凝らしてみると、女性が一人とガラの悪そうな男数名が道の真ん中でもめていた。


『恐らくNPCでしょう。プレイヤー特有のマークが見当たりません』

「それはそうだけど早く行かないとやばそうだ!」


 男の一人がナイフを取り出したのが見えたので、全速力でそこへ向かう。が、間に合わないかもしれない、そう思いながらも確実に足を前に出していた。

 もう少しで女性の胸にナイフが届きそうなとき、森の中から大きな何かが飛び出してきた。


「ドゥーーン!!」


 そう口にしながらナイフを持った男を蹴り飛ばしたそれは、残りの三名の男たちも一撃で気絶させた。

 ぶつかりそうな寸前で止まれた僕は、それをよく観察してみた。

 頭の上に表示される緑色の三角マーク、この人はNPCじゃなくプレイヤーということだ。後ろで一つに纏めた髪に切れ長の目。上半身は胸を布で覆っただけでズボンもダボっとした白いズボンを履いているだけの格好だったが、まるで鎧を着ているような筋肉の厚みがあった。そして確かな胸のふくらみ。

 この筋肉量で女性の方ですか……。


「あら?貴方はプレイヤーね。もしかして貴方も助けようとした感じかしら?」

「え……あ、はいそうです」


 オネエ口調と呼ばれる話し方に戸惑い言葉に詰まったが、恐らくそれだけが理由では無いだろう。

 先生と普通に話せていたから大丈夫だと思っていたが、目の前の人物が同じプレイヤーだと思うとどうしても緊張してしまう。


「いい子ねえ~、見た感じ食べご———じゃなかった、高校生でしょ?普通はあんな風に動けないわよ~?」

「い、いえ。結局助けたのはお姉さんなので……」

「あら!嬉しいわあ。私のことお姉さんって呼んでくれるの~?やっぱりいい子ねえ~」

 

 もう話してる感じが近所のおばさんみたいになってきたせいか、妙に親近感がわいてきた。


「私の事はアマ姐さんって呼んでいいわよ。あ、フレンド登録もしちゃいましょ」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 メニューの表示画面にフレンド申請の通知が来た。

 性別の表示を見て、やっぱり女の人何だと思いながらフレンド登録を済ませた。


「OKね。それじゃあ私はこの子を送るけど、貴方も一緒に乗っていく?」

「いえ、せっかくですけど歩いていきます」

「そう。じゃあまたねえ」


 さっきの女性は少しパニック気味になっていたが、僕にも一礼をしてアマ姐さんと一緒に子爵領の方へ行った。

 姐さんが馬を召喚して乗ったときはびっくりしたが、凄く絵になっていた。

 こういっては悪いかもしれないが、初めて会ったプレイヤーは癖の凄い人だった。


————————


 子爵領に着いた。

 少し高めの城壁に囲まれており、城門の前では入国審査の様な物が行われていた。

 この高さの壁だと飛行する魔物は対処できないから、恐らくこの辺りには出ないんだろう。

 しかも意外と馬車が並んでいるから思っていたよりも景気が良いのかもしれない。

 周りを見て時間を潰していると、僕の番が回ってきた。


「身分証を」

「……あ」

『マスターは身分証を所持していませんが……どうやって入るつもりだったのですか?』


 そう言えば最初に行ったところが先生の森だったから身分証なんて持ってない!

 普通は最初の街で発行してそれから他の国に行ったりするのに、僕は最初を飛ばしてここに来てる。これは……不味いんじゃ?


「身分証は?持ってないの?」

「あ……えっとお……」

「ちょっと奥まで来てもらおうか?最近不審者が増えてるからね」

「ま、待ってください!怪しい者じゃないんです!」

「怪しい人は皆そう言うから」


 そう言った兵士は、問答無用で僕を引っ張って行った。

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