表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢王の書~ ELSIUM OF EUPHORIA~  作者: LSABA
零章 書き出し
1/138

第1話 序

 毎日同じことの繰り返し、誰もが一度は思ったことがある事だろう。

 朝起きて学校や職場に行く。夕方の六時ごろに帰宅しご飯を食べて風呂に入りそして眠る。大体がこれの繰り返しだ。友達と遊んだり馬鹿みたいに騒いだりしていればそんなことは無いのかもしれない。その日その日がかけがえのない一日だろう。それでも僕は思う、一度は必ず考えると。そんな毎日に何の意味があるのだろうかと。

 機械的に同じ行動を繰り返し、何の成長もなく何の目的もなくただ指示された行動を永遠と繰り返す。将来がどんなものか分からない生活を続けていて、果たして本当に生活していると言えるのだろうか?

 ああ……。何時からだろうか、こんなにも考え方が汚れてしまったのは。


————————


 カーテンの隙間から光が差し込む朝。目覚ましの音も、人の声も聞こえない静まり返った部屋で、僕はいつも通り目を覚ました。ベットからのそのそと起き上がり、重い足をリビングへ向かわせる。

 リビングの真ん中の机には毎回決まって二千円が置かれていた。これは父が置いて行くものだ。

 毎朝僕より早く家を出る父は、三食分のお金を置いて出ていく。朝早く家を出て夜遅くに帰ってくる父と顔を合わせるのは、最近ではほとんどと言っていいほど無くなっていた。当たり前の様に会話もない。

 母は僕が十歳の時、今から六年前の五月に浮気相手と出て行った。元々良い母とは言えない奴だったとはいえ、夫と息子を捨てていく程腐ってるとは思わなかった。

 世の中の女は皆こんな感じなのだろうか。

 そう考えていると、いつの間にかコンビニについていた。

 頭では嫌がっていても、体は学校へ向かう様にされている。そのためには朝と昼のご飯を買わないといけないんだろう。


「いらっしゃいませー」


 中に入ると男の店員が聞きなれた言葉を発した。髪の前部分だけ金髪にした、この時間にいつもレジに立っている店員だ。大学生であろう店員の態度は見た目に反して文句のつけようが無いほどだった。

 決まった物を買って学校へ、授業中の記憶は無く気が付けば昼休みだった。


「おい!屋上で食おうぜ」

「いいね、いこういこう!」

「あそこ人多いんだよなー」


 男子生徒がそう言いながら教室を出るのを尻目に、僕は冷めたコンビニ弁当を食べる。


「なあお前FA買ってもらったんだろ?」

「ん?ああそうそう。え!?もしかしてお前もやってんの?」

「やってない奴なんてほとんどいないだろ。あのT(トール)社が出した新作VRMMOだぞ?」


 そんな会話が始まった位に授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。

 放課後。昼休みに聞こえてきた事を思い出していた。T社と新作ゲーム。気になった僕はパソコンを立ち上げ、キーボードとマウスに手を置いた。

 T社公式サイトに一番大きく乗っていたそれは、「FA」という二文字に翼が生えたロゴマークだった。

 「Free Adventurers」通称FA。フルダイブ型の仮想空間で多数のプレイヤーと共に敵を倒し、広大な世界を探索する。完全新作VRMMO。少し下にスクロールすると、そこにはこう書かれていた。


「もう一つの世界へようこそ」


 よく見る謳い文句だ。いつもならそう言って終わりだっただろう。だが、僕のマウスを操作する手は止まらなかった。

 何時ぶりだろうか、こんなにも気持ちが高揚しているのは。いつもとは違う行動をして、夜ご飯を食べるのを忘れてしまったのは。

 

————————


 気が付くと、部屋の時計は十二時を回っていた。いつも父が帰ってくるような時間だ。

 早く寝ないと。そう思いパソコンの電源を落とそうとすると、部屋の扉が開く音がした。


「未だ起きていたのか」


 扉の隙間からのぞいた顔は、久しぶりに見る父の顔だった。少し疲れた様子の父の目の下にはうっすらとだがくまがあった。


「ごめんなさい。気が付いたらこんな時間だったんだ」


 僕がそう言うと、父が少し驚いたように見えた。

 扉を完全に開き、父が部屋に入ってくる。そして僕のパソコンの画面をのぞき込むと、少しだけ笑って言った。


「気になるのか?」

「え……?う、うん」

「そうか。でも今日はもう寝なさい」

「はい…」


 父はそう言うと部屋を出て行った。父が居なくなった後の部屋は静かで、僕のマウスのクリック音だけが響いていた。

 いつの間にベットに入ったのか、いつの間に眠っていたのか分からないが、一つだけ分かっていることがある。それは遅刻したという事だ。時計が壊れていなければ、もう一限目が始まっている。

 急いで家を出る。走っても学校に着くのは二限目の始まる前だろう。だがそれでもいつもの二千円を取り忘れる位、急いで学校へ向かった。

 学校に着いた僕は、案の定先生に叱られ結局授業に参加したのは二限目の途中だった。

 僕が席に着くと、周りからひそひそと話す声が聞こえる。


「あいつ遅刻とかするんだ」

「えー意外。あいつが遅刻したとこ見たことないんだけど」


 もう少し本人に聞こえない様に話せないのかと思いながらも、僕は反応はせずに二限目用の教科書とノートを開いた。

この作品を読んで下さり有難うございます。

何個も投稿していますが、どれも結局おかしくなってしまいます。繋ぎの作品ではありますが手は抜かず、皆さんに楽しんでもらえるような作品にしたいと思っているので、応援よろしくお願いします。


感想待ってます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ