最強と日常 -天才の旅立ち4-
驚く事にその魔力痕はそれほど離れていなかった。
先程いた草原から5キロ程の場所には山に挟まれた小道があり、周りには馴染まない小屋が立っていた。
そして、その小屋で魔力痕は消えていたのだ。
小屋のドアをノックして、声をかけてみる。
「すみません、誰かいますか?」
中からは物音1つせず、静まり帰っている。
「だれも居ないのか…」
また日を改めようとその場を離れようとした時、背後に突き刺さるような魔力を感じた。
大きくはないが今にも噛み付いて来そうな気配、まるで檻の中の獅子にも似た威圧。
たらり、と頭から頬、顎へと冷や汗が滴る。
「お前、何モンだ?どっから来てなんでココへ来れた?」
凄む声に僕は肝を冷やす。
「あ、あの!貴方に用があって魔力を追って来ました!敵じゃないです!絶対!」
緊張と焦りからか、早口で事を伝えた。
「魔力を追って来たってどういう事だ?俺はこっからほとんど動いてねぇし範囲からは出てねぇぞ」
男の言ってる事が理解出来なかった。
動いてない?範囲?じゃあ僕が会ったのは?
「確かに貴方にあったんです!川で危なかった僕は貴方に助けられました!」
嘘は言っていない。100%の正直だ。
「ん…?川で助けられた?」
男の魔力が少し落ち着いた気がした。
「はい!でっかいシーホースに襲われそうになった時です!」
僕は杖を持ったまま両手を上に上げた。
「おおっ!その杖あの時のあいつか!」
男の魔力圧が消え、僕は胸を撫で下ろした。
「そうです。僕は貴方に用があってここまで追いかけてきました。」
僕は振り向くと、あの間抜けそうな顔があった。
「大丈夫だったみたいでよかった!あれから落ち着いたか?」
男は僕の頭を撫でた。
「え、えぇ…おかげ様で…」
僕は少し恥ずかしくなり下を向く。
「でもよくここに来れたな、魔力を追うったって普通の人間には見えないし、感じる事も出来なければ範囲に近づく事すら出来ねぇのに…」
男は不思議そうに指で顎を撫でる。
「あの、貴方から貰った薬草を食べたら魔力を感じる様になっ」
「え!お前あれ食ったのか!?」
言い切る前に男が話かけて来る。
「は、はい…、何かまずかったでしょうか…?」
恐る恐る訪ねる。
「いやぁ…不味いって言ったら味とかになると思うけど、お前身体なんともなかったのか?」
男は少し笑いながら聞いて来た。
「いえ、特にこれと言って何も…」
そういうと、男は僕の肩に手を置いた。
「よし、わかった!話を聞こう、そろそろ暗くなって来るし中に入れ!」
男は手に少し魔力を込めるとそれに反応する様に扉が開いた。
小屋に招かれた僕は、目の前の光景に言葉を失い驚愕する事になるのだった。