最強と日常 -天才の旅立ち3-
「なんかでっけぇ魔力感じたから来て見たらシーホースとはびっくりだな…」
男は相変わらずぼーっとした表情でいた。
「これ、お前の?」
男はシーホースを指差して言った。
僕は理解出来なかったが、話すこともできずぶんぶんと左右に首を振ることしな出来なかった。
「そうか。じゃあ遠慮なく。」
すると男は指を弾いた。
瞬間、ガチャガチャと金属が擦れる音と共に剣の渦がシーホースを飲み込んだ。
カッ、と一瞬光を放ちその光景は姿を消した。
「よし、魔力は消えたな。」
男はふぅとため息をつくとこちらを見た。
「こんな所でシーホースなんて出るわけないんだけどさ、お前なんか知ってるか?」
僕は変わらず話す事が出来ずに首を振る。
「ん?なんだお前びびって声も出なくなったのか?」
男は笑いながら近づいて来る。
「何もしらねぇみたいだし事故に巻き込まれたって感じだな…まぁ、仕方ない弱い奴守るのが強い奴の仕事だからな。」
男はゴソゴソと腰袋を漁ると薬草を手に取り屈んで僕に握らせた。
手を取られ、驚いたのか安心したのかビクッと身体が動いた。
「安心しろ、変な物じゃねぇよ。それはちょっと特殊でな、お茶みたいにして飲んだら落ち着くからな。」
男は僕の頭をポンポンと叩いた。
「んじゃ、俺は行くからな。今度は気ィつけろよな。」
男は立ち上がると、まるで風に吹かれた煙の様に消えた。
目の前の光景に驚き目を擦った。
周りに誰も居ないし、気配もない。
夢でも見てたのかと思った。
が、手にはさっきの薬草が握られている。
まさか、もしかしたら、あの男が伝説の…
そう考えると手に汗を握り薬草を掴むちからが強くなってくる。
心が震える、息が詰まってくる。
「僕は伝説に救われた…?」
手を開き、薬草を見る。
あの男はお茶の様にして飲めと言ったが思わずそのまま口にしてしまった。
不思議な味がする、甘い様な酸っぱい様な、しかし不快ではなく春の風に吹かれた様な気分になった。
そして僕は少し違和感を覚える。
さっきまで感じなかった魔力を感じる。
今にも消えそうな風前の灯にも近い魔力。
それが導くように、1本の長いロープの様に続いていた。
僕はその魔力に呼ばれているような気がした。
いつのまにか震えは止まっていて、いつもの草原に戻っている。
変わったのは微かな魔力を感じるようになった事。
僕は立ち上がり、支度を整えてその魔力を辿る事にした。