最強と日常 -天才の旅立ち1-
- 1ヶ月前 -
僕はマリィ、最近ソーサラーになったばかりの新米だ。
だが、僕には圧倒的な自信がある。
100年に1度の天才と呼ばれ、魔法の勉強を始めてわずか10日で基礎魔法の全てを理解した。
そして、その才能を買われた僕は街の教会の神父様にあらゆる魔法の勉学を教授された。
攻撃、回復、支援、はたまた移動や鍵や罠の解除に至るまで。
この世の全ての魔法、その始まりや進化なんかも。
神父様はその昔、崇高な賢者として名を馳せていたようで名前を聞けば誰でも知ってる人だった。
しかし神父様は名前を隠し、街の教会の神父として働いていた。
僕は神父様に問いかけた。
「神父様、神父様はどうしてこの街で神父をしているのですか?神父様程の力と名誉があれば今頃王国で働けていたのではないですか?」
その問いに対して、神父様は微笑みながら言った。
「確かに、そうかもしれないね。だけどねマリィ、私には私が出来る事をしているんだ。今は理解出来ないかもしれないけど、いつか理解出来る日が来るよ。」
神父様は僕の頭を撫でながら続け様に言った。
「君には確かに才能がある、だけど才能ばかりではダメなんだ。だから君に宿題を渡すよ。」
神父様は首から下げていたペンダントを僕にかけると僕の手を握って言った。
「マリィ、君は今日からソーサラーとして生きるんだ。マジシャンとプリーストの基礎知識や基本は既に体得してるからね。」
ソーサラー。上位魔法を使い魔物を蹴散らすAランクの職業。
「僕がソーサラー、ですか…?」
戸惑いつつも胸の底がジンジンと熱くなってくる。
「うん、そして君は旅に出て世界を知るんだ。これから色々あると思うし、立ち止まる事もあるだろう。だけどそれを乗り越えて行くんだ、君になら出来るさ!」
神父様に背中をポンと叩かれる。
「それから他にも君に渡すものがある。これからの旅に必要な物と装備だよ!」
そこには大きなカバンに詰まった食品やポーション、お金持ちなどが入っていた。
特に目を引いたのは杖だった。
気圧されるような雰囲気の木製の材質に透き通るような透明の水晶が嵌め込まれていてまるで心の中を見られているような感覚だった。
「杖が気になるのかい?」
神父様が僕に問いかけた。
「はい、なんというか僕の中身を見られているような感じがして…」
睨むように目を細め杖を見る。
「はははっ、確かにそうかもしれないね。」
神父様は少し悪戯な子供の様な表情を見せた。
「その杖は少し特別製でね、持ち主によって姿を変えるんだ。まぁ、持ってみればわかるよ。」
言われるがままに杖を持つ。が
「何も変わりません、ね…」
僕は困惑する。すると神父様は
「うんうん、今はこれで良いんだよ。これからさ!この杖はね、持ち主と共に成長して、持ち主と共に変わって行くんだよ。」
神父様はまた僕の頭を撫でる。
「さぁ、君の旅の始まりだよ。この教会を出たら旅の1歩だ!そして私は君の祝福を祈ろう。」
神父様が笑った。
「もし、君が旅の途中で躓いて立てなくなったら…」
神父様がまた話し出す。
「その時はいつでも帰っておいで。私はずっと君を待ってるからね。」
その時神父は少し悲しそうな顔をした気がする。
そうして僕の旅は始まった。希望を胸に抱き、祝福を背に乗せて。