最強と日常
「ちょ、ちょっと休憩、しましょうよ…」
息も途切れ途切れに前を走る男に話かける。
「おいおい…さっき休憩したばっかりじゃんか…」
男は呆れ顔で言う。
「さっきって12時間前でしょ!僕はあんたみたいにバケモンみたいな体力してないの!普通なの!普通の人間なの!」
今まで積み重なったものもあり不満が爆発した。
「こ、怖いなぁ…やめろよその顔、人間がして良い表情じゃねぇぞ…」
男は顔を逸らしビクビクと怯えた仕草を見せた。
「はぁ…しょうがない…まぁ近くに川もあるし、急ぎでもないし休むか…」
男は近くの岩に腰掛けると何もない空間から色々な物を取り出した。
「ところでミオさんそれどっから出してるんですか?」
僕は男に問いかけた、男の名前はミオ。
伝説と呼ばれる男。
「んー?前にも言わなかったっけ、カバンだよカバン。」
ミオはなれた手つきでテントを組み立てている。
「いや、カバンって僕が背負ってるようなやつですよね?どう見ても何もないんですけど…」
僕は話しながら燃料に火を灯す。
「マリィみたいな馬鹿には見えねぇように作られてんの、天才にしか使えない代物だよ」
ミオはテントを組み立てると簡易型のかまどやテーブルなどをまた組み立て始める。
「あの、一応僕街では天才って言われて来たんですけど?教会でも追随を許さない程の才能と言われた人間ですけど?」
火を灯した木を持ち、ミオに詰めていく。
「でも俺より弱ぇじゃん、てか火ぃ危ねぇから近づけんな」
ミオは虫でも払うかのように手を動かす。
「はぁ…貴方はいつもそうですね…強いか弱いかでしか判断出来ないんですか?大体最初にあった時だって…」
「はいはい、わかったから川で魚でも捕まえろよ?自分の飯くらい自分で取れな?」
言い切る前に、被せてくるようにミオは言った。
「わかってますよ…虫やカエルを食べるのは嫌ですからね…」
鼻でため息をつき、袖と裾をまくり、靴を脱ぎ川へ入る。
ゆらゆらと水面が揺れちらちらと魚影が見えた。
「良かった、今日はまともな物が食べれそう!」
獲物を見つけ、胸が昂った。
「そういえば、最初に会った時も川だったっけな…」
僕はふと思い返す。
最悪な旅の始まり、変人との出会い、それはひと月程前にまで遡る。