五里霧中
突然、後ろから殴られたかのような衝撃を受けて気を失った。
「ううう・・・」
そして目を覚ますと、見知らぬ場所に寝ころんでいた。
「なんだここは!」
気が付くと全く見知らぬ場所に自分はいた。濃い霧が出てる全く見知らぬ場所。
「サイレントヒルか?」
そういうの多いよ私。何かにつけて出るよ。サイレントヒル。サイレントヒルって言いたいのか知らないけど。でも実際そうだった。霧の立ち込めるその光景はまさしくサイレントヒルに見えた。あるいはミスト。もしくは小松右京さんの霧が晴れた時。
何だったら金田一少年で言えばタロット山荘で目覚ましたら雪山にいたみたいな感じという事でもいいけど、でもまあ、霧、まるでミストサウナのような霧。生き物を狙って、私に向かってくるように見える霧。それはどう考えてもサイレントヒルだった。
「おーい!誰か―」
見たことも来た覚えも何もない霧の中、足元には道らしきものがあり、前と後ろどっちに進んだらいいのか判断に困ったが、とりあえず前に進んでみることにした。
霧でよく見えないが光景としては山というか、外。屋外に居た。木々が、杉かなんかわからないが、三角の感じの木々が両側にそびえる様に立っていた。まるで道から逸れるのを防ごうとしているみたいに。
「どこだここ」
それ以外はもう本当に何も見えない。霧。空の色、霧、道の先、霧。境がわからない。何もかも全部一緒くたに見える。
「あれ?一緒くたん?一緒くたどっちだっけ?」
目が効かない。だから脳内ではどうでもいい事を考えてしまう。一緒くたのような気がする。一緒くたんってなんか萌えキャラみたいだもな。一色たんです。みたいな。
道は緩やかに下っていた。しかしペンキのようにべったりと霧が出ていて、急に崖とかあってもわからない可能性があった。そのため歩行速度は非常に遅い。自分でもイラつくほど。
そのイラつきから逃れたくて、また脳内ではどうでもいい事を考えていた。
「一色たんは、何処から来たの?」
「えーっとねえ。っていうか会ったばっかりなのにもう一色たんって呼ぶ?」
「あ、ごめん、気に障ったんだったら謝るよ」
「僕、本名は一色とらおだから」
「一色とらお?」
目の前にスチームサウナか何かの機械の排出口というか、クーラーでいう所の冷たい空気が出る口があるんじゃないかと思えるほど、霧は濃い。
「・・・」
そんな中で、そんな場合じゃないのに脳内に出てきた一色とらおの事を考えていた。
果たしてどっちなんだと。
金田一少年の異人館村殺人事件の一色の方なのか?あるいは、アニドルカラーズのそれなのか?どっちなんだ?どっちかでだいぶ違うぞ。どっちなんだ?
だって全然違うからね。
前者と後者ではだいぶ違うから。
ビジュアルはもちろん何から何まで違うぜ。
「ねえ、一色君」
「ん?」
もう目の前の霧の事なんてどうでもいい。そんなのどうでもいい。どっちでもいい。どっか行ってもいいし、そのままでもいいし。何でもいい。
今、気になるのは脳内。
こんな状況で。霧で何も見えなくても。
こんな場所で。何の記憶もねえ場所で。
どうしてこうなったのかも。事件性があるのかないのかも。
全部どうでもいい。
脳内だ。
今は。
今は脳内の事が重要だ。
これが一等重要だ。
「ねえ、一色君」
「何?」
「聞きたいんだけど」
君は・・・、
その時、意識も無く進んでいた足元の地面が抜けた。
「あ、やべ」
マジで崖?死ぬ?
落ちる?
しかし私は落ちなかった。落ちると思ったその瞬間後ろから誰かに捕まれていた。
ゴリラだった。
「危ないですよ」
ゴリラは私の事を崖から引き戻すと、一言そう言って何事も無かったように霧の中に消えていった。
あ、
その時理解した。
これあれだ。サイレントヒル2でいう所のあれだ。インウォーターエンドだな。
って。
あるいはもう、この世界感はせがれいじりのプレステのやつだよ。続じゃねえ。最初の奴。