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千波 雫 降臨


アイドル好きで無くても誰もが知っている程の有名人、千波雫が自分のクラスに転校してきたと言う奇跡。


そんな状況に、クラスのみんなはテンション爆上がりだ。


新クラスで知り合いなんてごく僅かなのにクラスが1つになっている。


アイツらなんて肩抱き合って、超やべー!!とか叫んでるし。さっきまで話そうともお互い勇気が出なかった所を俺は見てるぞ。


なんなんだこの現象は…まるでもう1年間苦楽を共にしたクラスの様な雰囲気だ。


凄まじい雫ちゃんの力、これが俗に言う千波マジックと言う物か!


※説明しよう。

千波マジックとは、千波雫の溢れんばかりのオーラによって、今回の様に初日でクラスを熟年させる事や、圧倒的不利な状況からの形勢逆転など、普通ではあり得ない奇跡の状況を生み出す力である。つまり千波雫が言えば黒は白、白は黒になるのだ。

説明終わり。


「みっ皆さん落ち着いてください~」


クラスの絶叫の中で夏海先生の注意の言葉が薄っすら聞こえるが、過去に無いほど騒騒しい今の教室では、殆どの者には聞こえていない。


「皆さん落ち着いてください〜!お願いします〜!私ほかの先生方に叱られちゃいますぅ〜!!」


必死に声を上げる夏海先生。それでも冷めやらぬ興奮の渦に呑まれてしまう。


そんな中俺は誰かからの、いや分かってはいるが理由の分からない視線に気付いたのでそちらを見る。


雫ちゃんと目が合った。


何故だ、何故俺を見る。俺の顔なんか変か?


真っ直ぐこちらを見る千波雫に戸惑って居ると、そんな心中を見抜いたのか、ニコッとこちらに笑みをこぼした。


可愛すぎるその行為のお陰でますます分からなくなった俺が、様々な仮説を立て始めたその時。


ガンっ!!!


と勢いよく扉が開かれ、とんでもなく顔が怖いおっさんが教室へと入ってきた。


なんだ?カチコミか?

そんなふざけた事を思っていると。


「テメェらうるせえよ!!!!!」


とおっさんが怒鳴ったのだ。


この人は体育の先生であり2年の学年主任でもある 百鬼豪斬なきりごうざん先生だ。


名前からして既に、鬼を百匹以上手刀で真っ二つにしていそうだが実は生徒思いの良い先生と言う事を俺は去年1年間で知っている。


しーんとクラスが静まり返る。

皆、やべぇ一歩でも動いたら殺されるぅ、とでも思っているのかピクリともしない。


「職員室まで聞こえてきたよ。てめぇら今何時だと思ってんだよ、授業中だよ、隣のクラス授業してんだよ。

お前ら高校生だろ?周りに迷惑掛かる事くらいわかるよな?」


その問いかけに、怒られ耐性が付いている何人かが頷く。


「分かってんならしっかりやれや!!」


その一言を最後に百鬼先生は教室を出て行った。


その瞬間、緊張の糸が切れたのだろう、止まっていた世界が動き出したかのように各々動き出す。


この様な瞬間は、人柄がよく出る瞬間だと俺は思っている。


ほら、自分を大きく見せようとする奴は大抵、なるべく何ともない様に「ははっ超怒ってたな」とか内心ビビりながら言う。


負け犬の遠吠えを連想させる様な「何あいつ、マジキモっ」と、先生が居なくなった後に言う奴は、自分を否定される事を嫌い、あいつキメェーに思考をずらして、自分が怒られたと言う事実から逃げている。


などなど、俺的にそう思うだけなのだが、こう言う場で仲良くする相手は選んでおこうと思っている。やっぱり面倒は嫌だからな。


そんな怒られた後の妙な空気感が教室に漂う中、1人の女生徒が口を開く。


「私のせいでこんな空気になっちゃってごめんなさい」


その言葉で全員の意識が雫ちゃんへと注がれる。


「……でも私は今普通の女子高生として学校に通ってるから、あんまり騒ぎ立てるのは周りに迷惑をかけてしまうので普通に接して欲しいです」


そんな雫ちゃんの言葉にクラスの雰囲気はガラッと変わり


「確かにそうだよね」とか「悪いことしちゃった」などクラスメイトが言っている中、俺はただ1人違和感を感じていた。


先程の雫ちゃんが言ったこと、その意味自体おかしいところは無いのだが、何故か口に出した言葉とその時の表情が一致しないのだ。


これは3年間誰よりも彼女を愛していた俺だからこそ分かること。何か辛い事を隠している時の顔だ。


明るく礼儀正しい彼女が良いそうな言葉、それなのにいつもと違う辛そうな顔に疑問を覚えたが、その真意までは流石の俺でも分からなかった。


「それでは皆さん、そろそろHRを始めますよ席について下さい」


そんな夏海先生の言葉でみんな席に着き始める。


「千波さんの席はそこですね、」


「はい、わかりました」


そう言って雫ちゃんが着いた席、そこはなんと俺の斜め前!と言うことも無く、なんと青馬の左隣だった。


おい!そこ変われ青馬!!そこはお前の居て良い場所じゃ無いぞ!


俺の左隣の龍二の2つ前が雫ちゃんの席だ。


比較的だいぶ席が近い事にドキドキしてしまう俺。


後ろ姿だけでも美しい雫ちゃん。

実物をこんなにも近くでじっくり見たのは初めての経験だ。この世の物とは思えない美しさ。

もう可愛さが天元突破しているぞアニキ。


そんな感じで雫ちゃんを見ている最中、視界に異物が映り込む、青馬だ。


おい青馬、ガン見じゃないか、めっちゃ雫ちゃんの事凝視してんじゃねぇか、どうした青馬。


目がハートじゃねぇか、おい青馬、堪えろ青馬、何をしようとしてるんだ青馬、青馬お前やめっ!


「うおおおおお!!超絶可愛いぜええ!!!おいら好きになっちゃったぜ!!!結婚してくれ!!!」


おおおおおいいいいい!!!!やめろって言ったろ青馬ぁぁあ!!!何言ってんだ馬鹿なのか?!!


雫ちゃんの可愛さに思わず叫ぶ青馬。これじゃまるで理性の効かない動物じゃないか。


みんなドン引きしている中青馬は叫ぶ。


「好きだああああああ!!!!付き合ってくれええええ!!」


おい!柑奈ちゃんへの愛はどうした!4年間思い続けてたんじゃ無いのかよ!全く信用できないなお前!


吉田さんなんかガッツポーズしてんじゃねぇか、よっぽど嫌だったんだな。


「あの、」


愛の言葉を叫ぶ青馬に向かい雫ちゃんが言葉を紡ぐが、


「ごめんなさいそれは出来ません。それと今はHR中なので静かにしましょう」


圧倒的撃沈だった。


周りからお前じゃつり合わないだろ、と声が聞こえるなか当の青馬は


「うおおマジかよ!!フラれちまったぜぇ!!」


と全くフラれた後とは思えないリアクションを取っていた。


そう、諦めないところが青馬の悪い所でもあり良い所でもあるのだ。

だが今回は悪手だぜ、なんせ俺の大好きなアイドルに汚い言葉を浴びせたのだからな。後で覚えとけよ。


そんなこんなで突然の青馬の告白の後は、まぁ特質して変な事は起きずHRは終わった。



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