曲がり角で食パン咥えた遅刻美少女とぶつかる確率ってどのくらいなんでしょうか
家から学校は歩いて行ける距離にある。今から行けば40分くらいには到着するだろう。
いつもと違う時間なので当然ながら歩いている人も違う、チャリ通お姉さんは元気だろうか。
ここで俺の習性をもう一つ教えておこう、それは俺は遅刻した時は必ず路側帯を民家ギリギリに歩くというものだ。
何故だかは分かるだろう?そう、それは運命の出会いの金字塔、角で遅刻美少女とぶつかる!を期待しての行動だ。
笑いたければ笑ってくれても構わない。
君たちが婚活婚活と騒いでいる頃には俺は美少女とゴールインしている頃だ。
まずい、そろそろ学校に着いてしまうぞ。あと残っている角は2箇所、そろそろその一つ目が差し迫って来ている。
うおお!!頼む!カモーン俺の未来のお嫁さーん!と角に付いた次の瞬間、目の前に大きな壁が現れた。
どんっ!
まさか本当にぶつかるとは思わなかった、ぶつかった感じはとても美少女とは思えなかったがどうだろう、顔を上げる。
その正体はお相撲さんだった。
「す、すみません」
いやあ、やっぱり迫力あるなお相撲さん。
って、いや何でだよ!
思わずツッコんでしまった。普通お相撲さんと角でぶつかる事なんてないだろ、美女とぶつかる方がまだ可能性があるってもんだ。
くそッ、貴重な人生初曲がり角でドンがお相撲さんになるとは流石に思わなかった。
そりゃあ曲がり角で遅刻遅刻ーって言いながら走って来る食パン咥えた美少女とぶつかるなんて、そうそう起こる事じゃ無いか。
まぁ運が良ければいつか本当に起こるかもしれない、気長に行こう。
そんな事を考えながら学園へと向かう。いつのまにかもう一つの曲がり角も通り過ぎていた。
程なくすると、俺の通っている山浪学園の校舎が姿を現した。
さぁ初日に遅刻した俺は周りからどう思われるだろうか、久しぶりの登校という事もあり、やけに緊張する。
もうこのまま校門前の道路を横切れば学園敷地内という位置。
ドンっ!!
体に大きな衝撃を受けた。ああ、そうだった。
俺は見落としていたことが一つあった。
それは校門前を横向きに通る道と校門から真っ直ぐ伸びる、今の俺が歩いている道がある事を。
つまりここはT字路となっていて、人とぶつかる可能性のある最後の場所だったのだ。
たった今俺とぶつかった人物が衝撃で後ろに仰け反る瞬間を、俺は今スローモーションとなって見えている。
はえ?うそだろ?
信じられなかった、でも絶対に真実である事を瞬間的に理解した。
ありえない出来事。
今まさに後ろへ仰け反り尻餅をついた少女。「いててて」と言っている少女。
俺は知っている。
たった今俺とぶつかり尻餅をついているのは紛れも無い、トップアイドル 「千波雫」だった。