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第7話
「命は祝福されてこの世界に生まれ落ちてくるの」
古い神社の祭壇の前にある木の階段に座って、霞が樹にそう言った。
「確かにそうかもしれない」
霞の横に立ったままで、樹は言う。
「樹さん。あなたもそうなのよ」
「僕も?」
「そう。あなたはもう覚えていないかもしれないけれど、あなたもちゃんと『いろんな人に祝福されて』この世界に生まれ落ちてきたのよ」
相変わらず、樹の瞳の奥をじっと見つめるようにして、霞は言った。
「ありがとう」樹は言う。
「嘘でも嬉しいよ」
そう言って、樹はにっこりと霞に笑いかけた。
霞は樹の言葉を聞いて、小さく(少しだけ残念そうな顔をしながら)ため息をついた。
霞は木の階段のところから立ち上がって、樹の横にまで移動をする。そして、霞はそのまま少しだけ背伸びをして、樹の頬に、そっと小さな『口づけ』をした。
樹は突然の霞の行動に驚いた。
驚いた顔をしている樹の顔を見て、霞はくすっと笑って、「幸福のおまじないだよ」といたずらっ子の顔をして、樹に言った。