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第30話

「墨は馬にするんだ。それも親子の馬。珍しいね」と硯は墨の描いている水墨画の下絵を見て言った。

 硯と墨はいろんな水墨画を描いてきたけど、墨が馬を描いている水墨画は今まで見たことがなかった。

「うん。悩んだけど、親子の馬にする。自分でも意外だなって思ってる。でもせっかくの展覧会だし、新しい水墨画にも挑戦してみたいんだ」とゆっくりと優雅に筆を動かしながら、墨は言った。

 硯と墨はいつものように深津家の部屋で並んで水墨画を描いていた。

 硯は龍の絵を。

 墨は親子の馬の絵を描いている。子供のころの水墨画の題材としては、硯はかわいいものを、墨はかっこいいものをよく水墨画で遊ぶようにして描いていた。今も二人とも、それに近いものを水墨画の題材に選ぶことが多かった。それは深津先生から、水墨画を習うと言っても自分の水墨画(深津茂先生の水墨画のこと)を真似しようとするんじゃなくて、自分の描きたいと思う水墨画を描いてください、と一番初めに言われたからだった。

「深津先生は今、どんな水墨画を描いているの?」と筆をとめて、硯は言った。

 硯は最近、わざと深津先生の水墨画は見ないようにして、自分の水墨画をずっと探していた。だから深津先生のお弟子になってから、ずっと深津先生の水墨画を見てきた硯は久しぶりに今、深津先生がどんな題材の水墨画を描いているのか、よく知らなかったのだ。

「七福神だよ。それも七人の神様が一緒にいる水墨画じゃなくて一人ずつ神様を描いているみたい」と墨はずっと動かしていた筆をいったんおいてから硯を見て言った。

「七福神か。おめでたいね」とふふっと笑って、硯は言った。

 そうなんだ。七福神か。それも七人一緒にじゃなくて、一人ずつ一枚の紙に神様を描くんだ。なるほどな。へー。

 と、硯はふんふんと一人うなずきながら考える。

 硯は深津先生のところに七福神の水墨画を見に行きたくてうずうずしている。(小さく体も揺れている)

 墨はそんな硯のことをなんだか、くすくすと笑いながら(硯に気が付かれないように)そっと横目に見ていた。このあと、硯は絶対に父さん(深津先生)のところにいくんだろうなって思いながら。

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