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第29話 思い切り、筆をふるう。

 思い切り、筆をふるう。


 空を流れる白い大きな雲に命を吹き込むように。降り出した激しい雨に形を与えるように。流れ落ちるたくさんの星をつかむように。目に見えない透明な強い風に色をつけるように。自由に。無邪気に。遊ぶように。私は、筆をふるう。


 硯の家の田丸家の家族はいたって普通の家族だった。お父さんとお母さんと生意気な妹(名前は文。二つ年下で今、中学二年生だった)と硯の四人家族でお父さんは会社員で、お母さんは家のことをしながら、近所の喫茶店でパートをして働いていた。(家事はよく硯と妹の文も手伝っていた。あとたまにお父さんも手伝ってくれた)

 水墨画の画家をしている深津茂先生とその奥さんである都さん。一人っ子の天才水墨画の画家のたまごである、墨。

 そんな深津家とは全然違う普通のお家だった。(お家の大きさも違った。深津先生のお家は本当に大きくて立派だった)

 水墨画とはなんの縁もゆかりもない普通のお家の子。

 そんな硯が水墨画の深津先生のお弟子になりたいとお父さんとお母さんに言ったときは二人ともとてもびっくりしていた。水墨画の展覧会に(家に置いておくわけにもいかないから妹の文と一緒に)無理やり連れていかれた小学一年生の硯が、本物の水墨画を見て、急にそんなことを言い出すなんて思ってもいなかったようだった。硯なんてそれっぽい名前を付けているのに、そう思っていなかったらしい。

 ただ、硯の名前と水墨画にはまったく関係がなかったわけではなくて、硯が生まれたときにその名前をつけてくれたのは、お父さんとお母さんがずっとお世話になっているお寺のお年寄りの住職さんであったようだった。その住職さんが書道の大家(名人)ということもあって、硯という名前はどうかとお父さんとお母さんに言って、二人は硯という名前を私につけてくれたらしい。(妹の文のときも同じようにその住職さんが名付けてくれたらしい。硯も知っている優しい顔をした太った住職さんだった。まあ、その名前の付けかたはどうかとは思うけど)

 硯という名前はいかにも、書道や水墨画を将来やりそうな名前だった。

 そんな昔話を深津先生のお弟子になりたいと硯が言ったときに急遽、開かれた田丸家の家族会議のときに聞いて、へー。そうだったんだ。と当時小学一年生だった硯は思った。

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