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 夜、(じゅん)はその日の勤務を終えると、夜勤の社員やアルバイトと交代して家路についた。

 深夜の方が時給が高いため、どちらかと言えば夜に出たいと思っている純だが、この日は敢えて早上がりのシフトを組ませてもらっていた。

 なにしろ明日は予定がある。この日を楽しみにしていたというのに、夜勤のせいで寝坊など絶対にしたくないのだ。


 下宿しているアパートへ足を進めながら、純は鞄からスマートフォンを取り出し、メッセージが来ていないか確かめる。

 大学の友人、実家の家族、迷惑メール……。どれもあまり気にかけるほどでもなくて、簡単な返事を返したり、中身だけ確認して無視したりした。


 その中でもひと際盛り上がっているグループチャットが一つ。

 確かめるまでもなくわかる。高校時代からずっとつるんでいる、いつもの仲良し四人組だ。


 チャットの内容は、明日が楽しみで眠れそうにないとか、だからって寝坊するなよとか、気の置けない仲間たちの楽しげな会話。

 純もそのチャットに『今バイト終わった』とメッセージを送信し、会話に遅れて参戦することにした。


 明日はこの仲良し四人組で一日遊び倒す予定だ。純らは朝から晩まで目一杯楽しむために、先月から話し合って全員で休日を合わせていたのである。

 この日のために毎日アルバイトを頑張ってきたと言っても過言ではない。その分大学の講義がおろそかになっているが、卒業さえできれば純にとってはなんでもよかった。


「……ん? 誰だこれ?」


 そんな楽しみに胸を膨らませていた純だが、ふと見ると、覚えのないメッセージが一件届いている事に気づいた。

 差出人は『unknown』――つまり不明だ。メッセージの内容を確認すると、何かのウェブサイトのリンクであるらしいURLが添付されていた。


 新手の迷惑メールだろうかと思いつつ、URLをタップ。もし詐欺なんかなら無視すればいいし、なんていう興味本位から、純はリンク先のウェブサイトを少し覗いてみることにした。


 URLから開いたのは、赤い着物の座敷童がイメージキャラクターになっている少し不気味なページ。タイトルからして、どうやら占いサイトのようだ。


「なんだ、占いか。どうでもいいな」


 占いだとかUMAだとか、そういったオカルトの類をまるで信じていない純は、そのサイトを鼻で笑うとすぐさまページを閉じようとした。

 ところがそのサイトは、何もしていないというのに開いただけで勝手に純を占い始めたのだった。


 座敷童のキャラクターが何かごにょごにょと喋って、ドラムロールのようなBGMが流れ出す。

 いきなり動き始めて驚いたものだから、純もついそれに見入ってしまっていた。

 すると数秒後、ババン! という元気のいい効果音と共に、純の占い結果が表示された。


「なになに……『あなたの運勢は最高ランクの五つ星! シンセツな行いができるあなたには、きっと素敵なシンセツが返ってくるでしょう』……?」


 占いの結果を読むと、純は背筋に悪寒が走った気がした。

 差出人不明のメッセージ、座敷童というイメージキャラクター、そしてなぜだかカタカナで表記されたシンセツ(・・・・)というキーワード――


 偶然だろうか。とても自分には無関係とは思えない単語がこれほど連なっているのは。

 まるでこの占いサイトが、三年前に自殺に追い込んでしまった大山(おおやま)(しのぶ)を純に思い出させようとしているような気がするのは。


「……いや、ないない。たまたまだろ」


 占いサイトを閉じた純は、スマートフォンを強引にポケットに突っ込み、再び家路を歩き出した。

 たかが占いだ。どうせどこの誰とも知れない人物が、無差別にばら撒いた悪戯メッセージに過ぎないだろう。


 嫌な過去を思い出したせいで夜道がいつも以上に不気味に思える。しかしそんなことでせっかくの週末を台無しにはしたくない。

 純はさっさと明日の外出へと気分を切り替え、毎日会っていても飽きない友人たちとの楽しい時間に思いを馳せたのだった。

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