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90話 煌めく魔鉱金級達

「女将さん!」


「おおローズ!大丈夫だったかい?あんたの様子がおかしいから後を付けてたんだが……怪我はないかい?」


「はい!ハンスが守ってくれたんで!」


「そりゃ何よりだ!」


 ローズが満面の笑みでエルフの女性へと駆け寄った。


 どこかで見た顔だと思ったが、確かローズが働く花屋の店主だ。


 しかし、その女将さんと親方が何でこんなところに?そして、さっきのは一体?


 僕が困惑していると、カオリが目を見開きながら叫んだ。


「貴様ら……一体何者だ!」


 親方と女将さんに誰何するカオリ。

 そんなカオリに親方達がニヤリと笑った。


「俺か?俺はハンスの鍛冶の師匠のドリックだ」


「あたしはローズの働いてる花屋の店主のシルフィというもんさ」


「鍛冶の師匠?花屋の店主?なんだそれは!!ふざけているのか?!」


 馬鹿にされたと思ったのか激昂するカオリ。


 すると、親方達がやれやれと呆れたように肩を竦めた。


「別に嘘なんてついちゃいないさ。なあ、ハンス?」


「えっ?あっ……は、はい!」


「随分と疑り深い嬢ちゃんだね。ねえ、ローズ?あたしゃただの花屋の店主だよね?」


「そうです!」


 親方に聞かれてつい反射的に肯定してしまったが、正直さっきの雷を見たら親方がただの鍛冶師とは思えない。


 親方は一体?


 そう思っていると、僕達を守っていた一人の冒険者が驚いたように叫んだ。


「おいおい!ドリックとシルフィって、まさか『雷鎚のドリック』に『疾風鞭のシルフィ』か?!かつて『疾風迅雷』で名を馳せた煌めく魔鉱金級ミスリル冒険者パーティーじゃねぇか!!もうとっくに引退したって聞いてるぞ!?」


 その冒険者の話に皆が騒然となった。

 もちろんその中には僕とローズもいた。


 あ、あの親方が煌めく魔鉱金級ミスリル冒険者??

 煌めく魔鉱金級ミスリルと言えば、冒険者の中でも極一部の人間しかなれないランク。

 それこそ並外れた実力と、類い稀なる実績を残した英雄にのみ与えられるランクだ。


 そんな煌めく魔鉱金級ミスリルに親方が?!確かに以前、昔に少しばかり冒険者をやっていたと話に聞いていたが、まさかそんな高ランクだとは……しかも話からして、ローズの女将さんとパーティーを組んでいたとは……。


 そんな驚く僕らに、親方達は照れたようにポリポリと頬をかいていた。


「まいったな……随分と昔の話だが、まだ覚えてる人間がいるたぁな」


「全くだよ。あたしとしちゃ、こんな金物臭いドワーフと組んでたなんて忘れたい過去だってのに」


「なんだと?!このアバズレエルフが!!」


「なんだよ!この樽腹ドワーフ!!」


 ジロリと睨み会う二人。


 ドワーフとエルフは仲が悪い。

 それは誰もが知る周知の事実であった。

 それは生活からくるものか、性格なのか、はたまた文明の違いからくるものかは知らないが、とにかくこの二種族は水と油で決して交わらない。


 それは時に殺し合いにまで発展する程に酷いものである。


 だが、この二人のいがみ合いの雰囲気は決して殺伐としたものではなく、どこかそのやり取りを楽しんでいるようであった。


「あ、あの……女将さんと親方は知り合いだったんですか?」


 ローズが恐る恐ると僕も気になっていたことを聞くと、二人はいがみ合いをやめてローズを見た。


「まあね。昔、やんちゃしてた時代にちょっとばかし手を組んでいただけさ」


「フン!このエルフがどーしてもって言うから手を貸してやったまでさ!」


「ハッ!それはこっちの台詞だね!あんたが泣いて頼むから仕方なく手を貸したんじゃないかい!」


「なんだと?!」


「なんだい?!」


 再びガルルと睨み会う二人。

 そんな二人の間にローズが慌てて入っていった。


「や、やめてください女将さん!それに親方さん!こんな時に喧嘩をしないでください!」


 喧嘩の仲裁にローズが入ると、シルフィさんはニンマリとだらけた笑顔を見せた。


「おやおや。ごめんねローズ、心配させてしまってね。でも別に本気でやり合おうって訳じゃないから安心おし」


 そう言いながらシルフィさんはローズをよしよしと撫ではじめた。


 その顔は心底ローズが可愛いようで、デレデレに惚けていた。


「おうおう!あの疾風鞭と恐れられた女が随分とだらしない顔をしやがるもんだ」


「うるさいねぇ。あんただってそこの愛弟子にデレデレじゃないかい。ここに来る前は、弟子がー弟子がーって騒いでだ癖にさ」


「テメェ!ハンスの前で何言ってやがる!?」


 親方が顔を真っ赤にして怒鳴っている。


 どうやら僕を心配してくれていたようだが……こんな親方を見たのは初めてで驚きだ。


 だが、それが涙が出るほどに嬉しくもある。

 こんな僕を心配してくれていたなんて……。

 親方の厳しくも深い愛情が伝わってくる。


 シルフィさんは一通りローズを撫で終えると、フウと息を吐いた。


「しかし、何の因果が……私の可愛いローズがあんたの弟子と恋仲とはねぇ」


「俺もビックリだ。最近色気づいたと思ってたが、まさかオメェのとこの店員たぁな。世の中狭めぇもんだ」


 そうやってガハハと笑う二人に僕達は顔を真っ赤にした。


 あ、改めて恋仲なんて言われると照れてしまうんだよな……。


「私を無視して何を談笑していやがる!!」


 僕らがほんわかとした会話をしていると、それをブチ破るような怒声が響いた。


 それは屋根の上にいたカオリで、彼女は眉間に青筋を浮かばせながらこちらを睨んでいた。


「糞が!私の同士達をブチのめした上にふざけた会話をしやがって……絶対に許さないわよ!!」


 グワッと目を見開き殺意を全開にするカオリ。

 そのあまりの殺意に鳥肌が立った。


 だが、それ以上の凄まじい殺意が親方達から溢れ出た。


「ふざけてるだと?ふざけていやがるのはテメェだろ!!俺の愛弟子にふざけた嫌がらせをしやがって!人の恋仲を邪魔した上にハンスのケツを掘るだって?馬鹿野郎が!そんなことさせっかよ!その前にテメェをぶっ殺してやるわ!」


「そうだよ!許さないのはこっちさ!よくもローズを汚してくれたね!!人の恋路を邪魔する奴はアタシの鞭でたっぷり調教してやるよ!!」


 闘気と殺意が親方達から溢れ出る。

 親方の周囲には怒りを現すように、バチバチと電気が発生し、シルフィさんの周りには風が巻き起こった。


 な、なんて圧倒的な闘気だ!!

 カオリからの威圧感も凄かったが親方達のも凄い!

 カオリが闇を覗いたような威圧感なら、親方達のは大自然を前にしたような圧倒的威圧感を感じる!

 どちらが上かなんて分からないが、どちらも人間の枠を越えた圧倒的な存在だということは理解できた。


 そんな圧倒的闘気を放つ親方達に、横合いから飛び掛かる者があった。


「「「「「ジェラシイイイィィィ!!」」」」」


 それは黒づくめ残党で、カオリの役に立とうと親方達の闘気に怯むことなく果敢に挑んでいった。


 だが……。


「ハアアア!!」


 それを防がんと、ゴルデさんが脇から飛び出して残党共を切り伏せた。


「「「「「ジェラシイイイィィィ!?」」」」」


 悲鳴を上げながら倒れる黒づくめ。

 だが、それでも立ち上がろうとした……が、その上から親方の戦鎚が振り下ろされた。


「どらぁ!雷神トールハンマー!!」


 振り下ろされた鎚は地面を砕き、同時に辺りに凄まじい電撃を放電した。


「「「「「ジェジェジェジェジェ?!」」」」」


 この電撃はもろに黒づくめ達を襲い、その身体を焼き焦がした。


 やがて放電が収まると、そこにはプスプスと煙を上げながら倒れ伏す黒づくめ達の姿があった。

 ピクピクと痙攣しているから、多分生きてはいると……思う?


「ガハハ!やるじゃねぇか嬢ちゃん!こんだけの数を一閃で斬り伏せるなんてよ!」


 鎚を肩へと乗せながら親方が素早く黒づくめ達を斬り伏せたゴルデさんを誉める。

 確かにゴルデさんの剣技は目を見張るほどのものがあった。


 ゴルデさんはそんな親方に綺麗な一礼を見せた。


「高名な冒険者であるドリック様にお褒め頂き光栄に思います。それよりも、我らにご助力頂いたことを感謝しますドリック様……シルフィ様」


「いいってことよ。それよりも話は聞かせてもらってたわよ。いち早く危機を察し、ローズ達を守ってくれてありがとうねゴルデさん」


「いえ……礼には及びませんシルフィ様。全ては友を止められなかった私の責任です……申し訳ありませんでした」


 ゴルデさんはそう言って二人に一礼すると、キッと鋭い目でカオリを睨んだ。


「さあカオリ!これであなたを守る同士とやらはいなくなったわ!あとはあなたとハンナだけよ!観念して降伏しなさい!さもなくば私は友として……あなたと戦うわ!そして止められなかった責任として、あなたを斬る覚悟もあるわ!!」


 剣を向けながらそう叫ぶゴルデさん。


 ゴルデさんの言うとおり、カオリの手下である黒づくめは既に全滅している。

 対してこちらの冒険者達はほぼ無傷だし、加えて親方や女将さんといった強力な助っ人がいる。


 既に戦力の違いは明白だ。

 もはや降参するしかないだろう。


 そして当のカオリは、そんな全滅した黒づくめ達を一通り見回した後、無表情な顔を僕達へと向けた。


 そして……。


「ク……ハハハ……クハハハハヒハハハハ!!」


 笑った。


 唐突に不気味な笑い声を上げはじめたのだ。


 そのあまりの不気味さに冒険者達も親方達も怯んでいた。


「カ、カオリ!何がおかしいのよ?!追い詰められて狂ったのかしら?!」


 剣を構えながら問うゴルデさん。

 そんなゴルデさんにカオリが笑いながら顔を向けた。


「ヒハハ……いやさ……だって滑稽でねぇ……」


「何がよ?!」


「だってさ………………何時ここにいるのが全戦力だと私が言ったの?」


「…………えっ?」


 


 

「「「「「ジェラシイイイィィィ!!」」」」」


 聞き覚えのある奇声が辺りから聞こえた。


 慌てて周りを見れば、そこら中の建物の影なら次々とあの黒づくめ達が現れた。

 その数は悠に百を越え、あっという間に僕達を囲んでしまった。


「なっ?!ま、まだこんなにいたの?!」


「くそ!一体何人いやがるんだ?!」


 驚くゴルデさんや冒険者達だが、それは当然だ。

 まさか、こんな数がいたなんて誰が想像できるであろうか。


「クハハハハヒハハハハ!!驚いた?驚いたでしょう!だって私も驚いたもの!これだけの不幸でモテない持たざる者がいるなんて、私にも予想外だったからねぇぇぇぇぇぇ!!」


 どうやら総統であるカオリでも驚いているらしい。そりゃあビックリするわ。一晩でこんなに集まるだなんて、どんだけ鬱憤が堪っている人々が世界にいるのだろうか……。


 だが、これだけの敵を前にしても、親方達は一切怯む様子はなかった。


「くっ!確かに数は多い!だが、所詮は雑魚の群れ!俺とシルフィが戦線を開くぜ!」


「ええ!あたしらに任せなさい!」


 そう叫びながら親方達が武器を構えた。


 が……。


「おっと!そうはさせないわ!目には目を!歯には歯を!ミスリルにはミスリル!あんたらの相手はこの二人よ!」


 カオリがパチリと指を鳴らした。


 すると、建物の影から誰かがユラリと姿を表した。


 それは無精髭を生やした非常に体格の良い男だった。その服装は独特で、確か西方にある国で着られるキモノなる服を着ていた。更に腰にはカタナという片刃の独特な剣を差している。


 更に上空から何かがフワリと降りてきた。

 降りてきたのは痩せ細った老人で、やたらと長い白髭を生やしている。

 そしてその老人の周囲には無数の水晶玉が浮かんでおり、老人自身もその水晶玉の上に胡座をかいて、フワフワと浮かんでいた。


 なんとも奇妙な格好をした二人だが、その二人から発せられ威圧感は凄まじいものであった。


 二人が現れた瞬間、まるで空気が鉛にでもなったかのように重く感じるほどだ。


 絶対ただ者じゃない……あの二人は一体?


「お、おい……あの剣士……もしかして一刀無双流の大剣豪……『龍殺し』のモサシじゃねーか?!」


「あ、あの老人も大魔法使いにして予言者の『先読み』のドンブルダーだ?!」


「う、嘘だろ?!どっちも生ける伝説……現役の煌めく魔鉱金級ミスリルじゃねーかよ?!」


 再び場が騒然とした。


 まさかの現役の煌めく魔鉱金級ミスリル冒険者の登場に、皆が及び腰となっている。


 それは当然だろう。モサシとドンブルダーと言えば、僕でも名前を知っている程の英雄だ。

 モサシはかつて悪さをする龍の首を一刀のもとに落とした剣豪で、ドンブルダーは数々の新たな魔法の開発・研究に携わり、国の発展に貢献した偉人だ。


 どちらもお伽噺になってもおかしくない程の功績を残した人物だ。


 元煌めく魔鉱金級ミスリルの親方でさえ、厳しい目で彼らを見ている。


「そ、そんな……なんで冒険者の英雄とも言えるお二方がカオリの側に?!」


 ゴルデさんが悲痛な声で叫ぶ。


 すると、モサシとドンブルダーがギョロリとゴルデを見た。


「そんなことは知れたことよ」


「儂らは総統のお考えに賛同した。それだけよ」


 当然だろ?とばかりに発せられた言葉に、皆が唖然とした。


 ゴルデさんも唖然としていたが、直ぐに我へと返って叫んだ。


「だ、だから何故です!?貴方方は冒険者として大成功を納め、人々から英雄として語られる御方!その貴方達が、何故カオリの下衆な理想に?!」


 ゴルデさんの言うとおりだ。

 カオリの理想とやらは『持たざる者が輝く社会の実現』だ。なら、この二人は当てはまらないはず。

 モサシもドンブルダーも、様々な功績を残し、地位・名誉・金とあらゆるものを手にしたはずだ。


 そんな持っている者の彼らが何故?


 そう考えていると、ドンブルダーが静かな…だが厳かな口調で語りだした。


「フム……ではそこなお嬢さん。お主は儂に抱かれてもよいか?」


「……はっ?」


 唖然とするゴルデさん。

 いや、僕達も唖然とした。


 抱かれる?今、抱かれるって言った?

 あの大魔法使いが?


 まさか、大魔法使いとも言われる程の叡知溢れる方の口から出るとは思えない言葉に、皆が困惑していた。


「あ、あの……それはどういう?」


「もう良い……その態度で分かったわい」


 ドンブルダーが失望したように溜息を吐いた。


「今の態度で分かったわい。お主はこんな枯れた老人に抱かれたくはないのじゃろ?直ぐに分かったわい」


「あ、あの……えっと……」


「もう良い。喋るな」


 何か言おうとするゴルデさんを、モサシが鋭い口調で遮った。


「我らが総統閣下に従うのは無論、我らも『持たざる者』だからだ」


「そ、そんな馬鹿な?!あたな達は───」


「様々な功績を残した英雄。地位も名誉も手に入れたではないか……そう言うつもりじゃろ?」


「フン!!そんな地位も名誉なぞ何も我らを満たしてはくれなかった!渇きを潤してはくれなかったわ!」


 吐き捨てるように放たれた言葉には、何か重く暗いものが乗っているようだった。


 一体……彼らに何があったのだろうか?


 そう気になっていると、ドンブルダーがスッと目を細めた。


「いいじゃろう……何故に儂らが総統に従うのか教えてやろう……」


 そう言うと、ドンブルダーはゆっくりと語りだした。


 


 


 かつて、モサシもドンブルダーも剣と魔法の修行に明け暮れていた。


 最強を目指しモサシは山に籠り、日々魔物と戦い続けた。


 魔法の発展のためにドンブルダーは研究室に籠り、日々魔法の研究に明け暮れた。


 他のものが色恋や娯楽にうつつを抜かす間にも、厳しい修行に明け暮れた。


 そうして数年……数十年が経ち、モサシとドンブルダーは常人が行き着けないそれぞれの技の極致へと辿り着いた。


 モサシはその最強の剣技をもって人々を魔物から救い、英雄と呼ばれるようになった。


 ドンブルダーは魔法で人々の生活を豊かにし、英雄と呼ばれるようになった。


 二人は地位も名誉も手に入れ、それなりに充実した日々を過ごしていたが……ある時気付いてしまった。


 あれ?俺達モテなくね?と。


 モサシ達に女性はほとんど近付いてこないのだ。


 モサシ達に近付いてくるのは国の高官や弟子入り志願者の男ばかりで、女性は滅多に近付いてこなかった。


 よしんば来ても、差し入れに来たおばちゃんや、美人局。またはモサシ達の名声目当てできたミーハーな奴らばかり。

 それでもモサシ達がそれ系が目的で近付けば、直ぐ様逃げていった。


 オッサンと老人はちょいキッツいと。


 モサシ達は確かに強力な力を手に入れた。

 だが、その代わりに青春という限られた時間を失ってしまっていたのだ。


 女の子と触れあう時間を失っていたのだ。


 モサシ達は絶望した。

 自分達は英雄と呼ばれ、名声を手にした。

 だが、その生活は決して潤ったものではなかった。むしろ、酷く渇き、モサシ達を苦しめるものだった。


 金はある。地位もある。名声も。


 しかし、それを活用する場も相手もいなかった。


 モサシ達と同年代の多くの男達は、英雄と呼ばれぬ平凡な生活をしていた。

 だが、嫁や子供……果ては孫までいて、それなりに潤った生活をしていた。


 憎かった。

 羨ましかった。

 モサシ達はそんな平凡な生活をする男達が憎くて羨ましかった。


 だが、そんな憎しみは自分のただの僻みであり、それを他人にぶつけるのは見当違いだと心の奥底にしまった。


 何より自分達は英雄と呼ばれる者。


 ならば、英雄らしくあらねばと気を取り直した。


 


 


 


 

 だが昨夜……たまたま出会った少女に言われた言葉が、彼らの枷を解き放った。


 


『なんだか辛そうな顔をしてるわね?今の生活が辛いなら捨てちゃいな。そして一緒に甘々なリア充共をぶっ飛ばさない?きっと最高に気持ちいいわよ?』


 


 

「「天啓であった」」


 モサシ達は涙を流しながら声を揃えた。


「「総統閣下は一目で我らの苦悩を見抜いた」」


「「我らに救いの道を指し示した」」


「「我らに役目を……目標を与えてくれた」」


「「我らを枷から解き放ってくれた」」


「「自分を抑え込むことが当然と思っていた我らの心は総統閣下によって救われた」」


 モサシ達から凄まじい闘気が溢れ出た。

 いや、周りの黒づくめ達からも尋常ならざる闘気が出ている。


 モサシと黒づくめ達が共鳴しているのか?!


 これは……ヤバい!?


「「故に!我らの力は!知恵は!全ては総統閣下のために!!リア充死すべし!リア充滅すべし!リア充殺すべし!我らは持たざる者!真に世界の理を理解せし者!!世界に真実を問う者!!我らは世界の変革者!!我ら不時者解放戦線こそ世界の真なる救済者!!偉大なる総統閣下に栄光あれ!!総統閣下万歳!!総統閣下万歳!!」」


「「「総統閣下万歳!総統閣下万歳!」」」


「「「アイハーラカッオーリ!アイハーラカッオーリ!アイハーラカッオーリ!アイハーラカッオーリ!」」」


 目を剥き、涙を流しながら叫ぶモサシ達。

 それに熱狂する黒づくめ達……。


 これは……想像以上にヤバい事態になっているよ……。


 僕を汗ばむ手でローズの手を握り締めた。

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