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87話 ゲス共の宴

「おっ?帰ってきたなハンス!それで、相談とやらはどう……ってどうしたハンス!その顔は?!」


 鍛冶屋を営むドワーフ鍛冶師のドリックは、昼過ぎ頃に帰ってきた愛弟子の顔を見て驚いた。


 緊張しつつも意気揚々と出かけた愛弟子のハンスが、まるでアンデッドのような虚ろな表情で帰ってきたのだ。


 しかも服がやたらと着崩れており、まるで追い剥ぎにでもあったかのようだ。


「ハンス!一体どうしたんだ?!まさか強盗にでもあったのか!糞が!うちの若い者に手を出しやがって!ハンス、そいつの特徴を教えろ!ハンマーで頭を叩き割ってやる!」


 ドでかいハンマーを片手に息巻くドリック。

 だが、ハンスはフルフルと首を横に振った。


「違う……んです……」


「ハア?違う?何がだ?」


 そう問うドリックに、ハンスはブルブルと震えた。その表情はまるで悪魔にでもあったかのように蒼白で、しかも何だか随分とやつれていた。


 いつもは陽気で努力家の弟子のあまりの変わりように、ドリックは衝撃を受けていた。


「本当に何があったんだ?」


 ドスリとハンマーを落とし、ハンスの両肩を掴むドリック。


 彼にとってハンスは弟子であるとともに、子のいないドリックにとっては息子同然の存在であった。


 故に、親同然に心配した。


「ハンス……教えてくれ。何があった?」


 再びそう聞くドリックに、ハンスは小さい声で呟いた。


「……奪われた」


 瞬間、再びドリックの頭に血が昇る。


「やはり強盗か!!どこのどいつだ!頭をかち割ってやる!ハンス、何を奪われた!儂が取り返してやる!金か?物か?」


 ハンマーをブンブンと振り回すドリック。


 そんなドリックにハンスは先程よりも小さな声で呟いた。


「……の……つ」


「んっ?なんじゃって?」


 あまりの声の小ささに、聞き取れなかったドリックが耳を近付けた。


 ハンスは再びボソボソと呟いた。


「奪われたのは……」


「フム。なんじゃ?」


「僕の……」


「フム?」


「純潔……」


「フム。……ハア?」


 間の抜けたドリックの声が工房に響いた。


 


 


 

 ◇◇◇◇◇


「おっ?帰ってきたわねローズ。それで相談とやらはどう……って、どうしたんだい、その顔は?!」


 花屋を営むエルフの女将シルフィは、夕方頃に帰ってきたローズの顔を見て驚いた。


 緊張しつつも意気揚々と出かけていったローズが、まるでアンデッドのような虚ろな表情で帰ってきたのだ。


 しかも、やたらと服が着崩れ、何故か頬が赤く紅潮していた。


「ローズ!一体どうしたんだい?!まさか強盗にでもあったのかい!ああ……糞!一体どこのどいつだい、私の可愛いローズに手を出すなんて!そいつの特徴を教えな!自分がしたことを後悔させてやる!」


 どこからか出した鞭をヒュンヒュン鳴らせるシルフィ。だが、ローズは首を横にフルフルと振った。


「違う……んです……」


「ハア?違う?何がだい?」


 そう問うシルフィに、ローズはブルブルと震えた。その表情はまるで悪魔にでもあったかのように蒼白で、しかも何だか随分と肌艶がよかった。


 いつもは陽気かつ健気なはずのローズのあまりの変わりように、シルフィは衝撃を受けていた。


「本当に何があったんだい?」


 ポトリと鞭を手放し、ローズの両肩を掴むシルフィ。


 彼女にとってローズは店の看板娘であるとともに、子のいないシルフィにとっては娘同然の存在であった。


 故に、親同然に心配した。


「ローズ……教えてくれ。何があったんだい?」


 再びそう聞くシルフィに、ローズは小さい声で呟いた。


「……奪われました」


 瞬間、再びシルフィの頭に血が昇る。


「やはり強盗か!!どこのどいつだ!!しっかり調教してやる!ローズ、何を奪われた!あたしが取り返してやるよ!金か?物か?」


 鞭をヒュンヒュンと鳴らすシルフィ。


 そんなシルフィにローズは先程よりも小さな声で呟いた。


「……の……つ」


「んっ?なんだって?」


 あまりの声の小ささに、聞き取れなかったシルフィが耳を近付けた。


 ローズは再びボソボソと呟いた。


「奪われたのは……」


「フム。なんじゃ?」


「私の……」


「フム?」


「純粋……」


「フム。……ハア?」


 間の抜けたシルフィの声が花屋に響いた。


 


 


 ◇◇◇◇◇◇◇


「「乾ぁぁぁぁ杯ぃぃぃぃぃ!!」」


 とある酒場にて、ジョッキをぶつけあって祝杯を上げる三人組がいた。


 三人のうち二人は下品な顔で笑いながら、今日あったことを大声で叫んでいた。


「HAHAHA!!見たか相棒!あのBoyの顔を!あんな情けない面、初めて見たぜ!」


『見たぜ相棒!まるでパイを頭からぶつけられたTurkeyみたいな顔だったぜ!あれには腹を抱えたぜ!流石は先生だ!』


 そう言って一人が先生と呼んだ人物の肩をバンバンと叩いた。


「ああ、先生にかかればあんなもんよ!女の方も最高だったぜ!あの汚されましたって面が堪らなかったぜ!」


『あの程度でこの世の終わりみたいな面してやがったな!その程度の覚悟しかないなら、とっととママのところに帰ってオッパイからmilkでも飲んでやがれってんだ』


「そりゃ言えてるぜ!」


「『HAHAHA!!』」


 下品な笑い声が酒場に響いた。


 


 


 


 

「で……なにを三下チンピラみたいな会話をしてんのよ、あんたら?」


 酒宴を開く……といってもジョッキの中はジュース……私達にそう声をかけてきたのは、金髪・銀髪・銅褐色の髪色をした三人組……ゴルデ達だ。


「ああゴルデじゃない。依頼帰り?」


「そうよ。それで道中『血濡れ』と『青白』と『痴女』が下品な会話をしているって聞いて寄ってみたのよ」


 下品とはなんだ。下品とは。


「というか、今の『血濡れ』って何よ。『血濡れ』って。それに『青白』?」


「あら?知らないの?カオリとハンナの二つ名よ。カオリが『血濡れ』でハンナが『青白』らしいわよ」


「『はっ?』」


 私とハンナは絶句した。

 まさか、そんな名で呼ばれているとは……。


「本当に知らなかったようね。結構有名よ。カオリはいつも血まみれで帰ってくるから『血濡れ』。ハンナはなんか青白いから『青白』らしいわ」


「いや、何よその二つ名?!ふざけてるにも程があるでしょう?!ミロクが痴女なのら確かだけど!」


『そうですよ!青白いから『青白』ってなんです!?ただの悪口じゃないですか?!ミロクが痴女なのは確かですけど!』


「いや……私らに言われても……ミロクさんのは認められるんだ……」


「照れますね」


「誉めてない」


「ねー。私達がー来た頃にはーもう呼ばれたよー。文句ならーギルドにいるー他の冒険者に言いなー」


 くっ!ゴルデ達に文句を言っても仕方ないか…。


「ハンナ。あとで言いはじめた奴を特定するわよ」


『そして地獄を見せるんですね』


 流石はハンナだ。

 私の意図を良く呼んでくれる。


「いや、やめなさいよ。ただでさえ筍騒動で目をつけられてるんだから……って、何よ、そのピシガシグッグッって動き……。それより、何をそんなに騒いでいるのよ?やけに楽しそうだったけど?」


 ゴルデが他の席から椅子を移動させ、私達の卓へときた。他の二人もゴルデにならった。


「うん?いや、今日は愉快なことがあってね」


「愉快なこと?」


 そうして私は説明した。


 互いに愛しあっているが上手く距離を詰めれず、アドバイスを求めていたリア充になりかけの少年・少女にミロクをけしかけたことを。


 


 

「あ、あ、あんたら鬼かぁぁぁ!!」


 話を聞いたゴルデが顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。


「まーまー。そんなに怒んないでよ」


『皺が増えますよ』


「うるさいわ!?あんたら……これから少しずつ愛を育もうとしていた二人になんてことしてんのよ?!純粋にアドバイスを求め…まだ初々しい汚れのない若者に……こんな真っ黒に汚れた淫欲の象徴をけしかけるなんて……血も涙もないのか!?」


 ミロクを指差しながら興奮気味に語るゴルデ。

 だが、私とハンナは動じることなく、やれやれと肩をすくめた。


 ついでにミロクは何故か顔を赤く染めて腰をくねらせた。


「だからこそよ。今のうちに大人の真実と汚さを教えてやったのよ」


『逆に感謝してほしいぐらいですねぇ。普通だったら学べないようなことを教えてやったんですよ?勉強代ぐらい払ってほしいぐらいですね』


「汚いのはあんたらでしょう?!」


 ブンブンと拳を振り回すゴルデ。


 おいおい……(グレープジュース)に埃が入ってしまうじゃないか。


 ひとしきり拳を振り回すと、ゴルデは今度はチビチビと(グレープジュース)を飲むミロクをキッと睨みつけた。


「それで……ミロクさん。相談に乗ったというけど、どの程度の相談に乗ったの?貴女の場合、まともじゃないのは理解してるけど、せめてギリギリセーフのところでお願い……」


 両手を握り込んで祈るゴルデ。


 ミロクは飲んでいた酒(ピンク色の謎の液体)を置くと、ホウとため息を吐いた。


「取り敢えず、夜這いと房中術の手解きを少しばかり……」


「アウトォォォォォォ!!」


 ゴルデが天井を見上げながら奇声を発した。


 そのあまりの声に酒場中の皆が驚き視線を向けてくるが、ゴルデはそんなことは一切構わずに叫び続けた。


「この腐れビッチがぁぁ!純水で純潔で清く正しい少年少女に何とんでもないことを教え込んでんのよ?!」


「人として当然の摂理を教えているまでです」


「いや、そうだろうけど?!そういうのは二人で雰囲気的に少しずつ覚えて…って、あんたまさか!?まさかと思うけど……教えたってどこまで教えて…?」


 恐る恐ると聞くゴルデに、ミロクは舌舐めずりしながら答えた。


「モーニングにドーテーを、ランチにショジョを頂きました。大変美味しゅうございました」


「このド腐れがぁぁぁ!!」


 ミロクが叫ぶ。

 人の心を揺さぶる魂の叫びである。

 だが、ミロクはキョトンとしていた。


「何をそんなに怒っているのですか?二人の後押しのためにと、後学も兼ねて実践教育をしたまでですが?」


「その実践がいらないのよ?!それは互いに預け合うはずだったの!あなた!自分が何したかわかってるの?!」


「セッ○スです」


「何をしたか聞いてんじゃないわよ?!何をしでかしかって聞いてんの?!それに冒険者の品位を落とすようなことをよくも……」


「おや?冒険者らしく相談にのったつもりですが?」


「どこがよ?」


「私という迷宮あなに入り、冒険はつたいけんをしたのですよ?実に冒険者らしいじゃないですか?」


「身ぐるみ剥いでダンジョンに放り込んでやろうかしら?!」


 やんややんやと言い合いをする二人。

 だが、私はそんな言い合いを肴に、ハンナと二人で大声で笑った。


「HAHAHA!!傑作だったわ!!純水な童貞くんが一瞬にして汚れてしまう様子は!!大切なものを失ってしまった喪失感と、とてつもない快楽による幸福感との間でせめぎ会う少年の顔……たまらなく滑稽だったわ!!」


『女の方もなかなかでしたよ!!何も知らない純水な少女が、ホテルから出てきた時には女の顔になっていましたからね!!大人の階段を踏み出したものの、少女としての純潔を失った少女の葛藤……酒の肴には最高でしたね!』


「『HAHAHAHAHAHA!!』」


「この外道共がぁぁぁぁ!!」


 高笑いする私達に、ゴルデが怒鳴りながら机を叩いた。


「あんたら!友達以上恋人未満の初々しい二人組を汚して何が面白いのよ!あんたらに人の心はないのか?!」


「ヒトノ……コ、ココロ?」


「なんで初めてそんな言葉を聞いた理性の無い怪物みたいな喋りになってんのよ!あんたら気は確か?」


 そう叫んでくるゴルデに、私とハンナは席から立ち上がりながら目を見開いた。


「確かよ!気は確かよ!これ以上ない程に確かよ!」


『だからこそ私達は行動を起こした…そう即ち…』


「『リア充を殺すために!!』」


「駄目だ正気じゃない!!頭が沸いてやがるわ!」


「多分ー両想いの幸せそうな二人を知ってー嫉妬に狂ったんだろーなー」


「ですね……」


 ピシガシグッグッとハンナと息を合わせる私に、ゴルデが頭を抱えた。


「HAHAHA!何が恋愛相談だ!どうしていいか分からないだ!既に両想いのくせに、結果が分かりきった依頼を出しやがって!私達への当て付けか!」


『そうですよ!甘い甘い……ヘドが出る程に甘ったるくて胸糞悪い話を持ってきやがって!だいたいそんな依頼持ってくんな!ママにでも相談しやがれってんだ!!』


『「だからそんな夢見がちの少年少女に現実を見せてやったのさ!!大人の恋愛の現実をな!!」』


 ヒャッハーと叫びながらハンナと乾杯をする。


 そんな私達二人の様子を、ゴルデは机に突っ伏しながら死んだ目で見ていた。


「あんたら……幸せそうな人間にいちいちやっかみ入れるのやめなさいよ……きりがないわよ?」


 その一言に、私とハンナは一瞬真顔となる。

 が、直ぐに二人で大笑いした。


「HAHAHA!やっかみ?妬み?嫉妬?上等!私より幸せそうな人間は全て死ねばいい!!なのに、この世は幸福な人間にどこまでも甘すぎる!」


『そうさ!世の中には持つ者よりも持たざる者の方が多い!そして、何故か持つ者が優遇される!持たざる者は持っていないという不遇を抱えているにも関わらず、更なる苦難を強いられる!搾取される!この世は間違っている!』


「ならば!我ら持たざる者達が持つ者から奪うしかない!幸福を!至福を!本来は我らにもあるべきだった幸せを勝ち取るしかない!」


『そうだ!我々は世界に語りかける!持たざる者も

 いつか輝ける日がくるのだと!そして持たざる者を優遇する世界に反旗を翻す!圧政者と断固戦おう!そう、つまり───』


「『私達は反逆者スパルタクスである!持たざる者が輝く世界を作り出す者である!』」


「誰か!医者を呼んで!脳ミソが腐ってる患者がいるわ!!」


 私とハンナの宣言にゴルデが頭を抱えて踞る。


 どうやら凡俗に私達の崇高な理想は理解し難いらしい。


 すると、周りからガタガタと音がする。

 見れば、酒場にいた結構な数の人々が立ち上がっていた。


 その中で、髭もじゃのムサイおっさんが涙を流しながら私に向かって叫んできた。


「俺は……俺は今、猛烈に感動している!俺と同じ苦しみを持ったものがいたことに……その同志が行動しようとしていることに!俺はお前を……いや、貴女様を心より応援します!」


 どうやら私達と同じ苦しみを背負うものだったらしい。


 よく見れば、立っている人々は皆どこかしら影がある感じの人々だった。


「ぼ、僕も応援します!」


「儂もだ!」


「アタイもだよ!!」


「私も!」


「オイラもだ!!」


「ちょ?!な、なによコレ?!キャッ!」


 次々と声を上げる人々。

 そしてゴルデ達を押し退けて私とハンナの下に集ってきた。


 私はその声援に……視線に打ち震え、勢いのままに机の上に立った。


「皆!応援ありがとう!これだけの志を共にする同志がいることを嬉しく思うわ!!」


「「ウオオオオオ!!」」


「お客様。机の上に乗らないでください」


 よいしょっと、と机から下りた。

 そして拳を振り上げた。


「私は……愛原 香は!この応援に応えるため、淡い夢を見るリア充共と徹底的に戦うわ!!リア充共を駆逐してやるわ!」


「「ウオオオオオ!!アイハラカオリ様ぁぁぁ!!」」


『このハンナも誓いましょう!甘い甘い恋愛にうつつを抜かすリア充に鉄槌を下すことを!!』


「「ウオオオオオ!!ハンナ様ぁぁぁ!!」」


「このミロクも流されるままに誓いましょう」


「「ウオオオオオ!痴女ぉぉぉ!!」」


「まず、その前哨戦として、私達は明日……とある甘々恋人未満の理想をぶち壊し、現実を見せてやるわ!!」


「「ウオオオオオ!!」」


「「「カオリ!カオリ!カオリ!」」」


「「「ハンナ!ハンナ!ハンナ!」」」


 酒場が熱狂の渦に飲み込まれる。

 そん中、ゴルデが人混みを掻き分けて私へと詰め寄った。


「ちょ?!あんたまだその二人に何かする気なの?!」


 慌てるゴルデを見ながら私は舌舐めずりをした。


「クックックッ……知れたこと……。明日、二人は互いに会いにいくのよ……。そこで二人の様子を見つつ、恋仲をしっちゃかめっちゃかにして破局させるのよ……」


「あ、会いにいく?!何言ってんのよ?!そんな精神状態で互いに会いにいく訳ないわよ!むしろ、少し距離をとって考える時間が……」


「そこはミロクの洗脳でちょちょいと」


「私が洗脳しました」


「洗脳ってなによぅぅぅぅぅぅ?!」


 ゴルデがこれでもかって程の絶叫を上げた。


「いや……洗脳は洗脳よ?強制的に思考を塗り替える的な」


「そんなのは知ってるわよ?!なんでそんな非人道的な技を使えんのかって聞いてるのよ!?」


「淑女の嗜みです」


「覚えてるのが当然みたいに言わないで!!そんな危ない技を覚えてる奴なんてそうそういないわよ!!」


「えー?ザッドハークも使えるし、ゴア姐さんも似たようなことができるって言ってたよ」


『時間はかかりますが私もできますが?』


「何で一番使っちゃいけない面子ゆうしゃメンバーがそんなもん覚えてんのよ!!」


 んなこと言われても知らん。


「それはともかく!明日は甘酸っぱい雰囲気を出してやがる少年少女カップルをぶっ壊してやるわ!」


『甘酸っぱい雰囲気を、おっさんの加齢臭みたいな酸っぱい雰囲気にしてやりますよ!』


『「ウオオオオオ!!」』


 私の宣言に声援を送ってくる同志達。


 そんな同志達を掻き分け、ゴルデ達がこちらへと迫ってきた。


「そんなこと私がさせないわ!カオリ!ちょっと大人しくしてもらうわよ!」


「魔法で拘束するよー」


「人の恋路は邪魔させません!」


 そう叫びながら飛びかかろうとしたゴルデ達だが……。


「させるかよ!!」


「「「なっ?」」」


 脇から飛び出た男達に取り押さえられた。


「あんたら……何を!?」


「へへっ……悪いが大人しくしててくんなお嬢さん方……」


「総統の邪魔はさせねぇよ……」


「いや、総統って何よ?!」


 喚くゴルデ達を同志達がガッチリと押さえ込んでくれた。


「よくやったわ同志!私はこれから明日の準備に向かう!その邪魔者の足止めを頼むわ!」


「「お任せを!総統に武運があらんことを!アイハーラ!!」」


「アイハーラ!」


 こちらに向けて手を高く上げてくる同志に、私も手を上げて応えた。


「なんで会って数分程度の仲なのに、まるで長年共に過ごした仲みたいになってんのよ?!ちょ!カオリ待ちなさい!」


 組伏せられながらも叫ぶゴルデを無視し、私はハンナを引き連れて店の外へと飛び出した。


「さあ、ハンナ!ミロク!早速準備に行くわよ!」


『メル婆の店ですね!取り敢えず、マスクとサングラスは必須ですね!』


「流石は相棒!!」


「メル婆……何故か知りませんが、会うのが非常に楽しみです」


「類友ってやつかな?」


 私はハンナとミロクを連れ、ゴルデの叫びを背に夜の街の中へと駆けていった。


 


 尚、この後、ゴルデはお店で香達が払わなかった会計を代わりに払わされることになった。

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[良い点] 何度読み返していても最高です。 精神回復剤として心が安らぎます。 コミック化して欲しい場面です。 この作品を創作してくれてありがとうございます。
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