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79話 君の名は・・・

 

 アンデル王国の玄関口である大門。


 そこには、王都内への入門許可を待つ人々や馬車の列が並んでいた。


 ここでは門番の兵士達が全ての人物や馬車を改チェックし、危険物の持ち込みや怪しい人物の監視に常に目を光らせていた。


「フム…次の者、前へ」


「はい、私でございます」


 兵士の前にふくよかな男性が出てきた。

 男性の横には荷物をいっぱい搭載した馬車があった。


「旅の商人か?」


「はい、そうでございます」


 門番の髭を生やした兵士に、商人らしき男が揉み手をしながら答えた。


「荷はなんだ?」


「はい、南のエルリト王国から珍しいものを色々と仕入れてきた次第です、はい。なにも危険なものはないですよ、はい」


「それを決めるのは我々だ」


 商人の言葉に、兵士が厳しい顔で言い放った。


「それは当然です、はい」


 威圧するような兵士の態度であったが、商人は特段顔色を変えずにニコニコと揉み手をしていた。


「エルリト王国か……最近は大分情勢が不安定と聞いているな」


「はい、そうでございますね。いささか周囲の魔物の動きが活発化してきた上に、国の上層部の方がきな臭くなってきてますですね、はい。ですので、安定して安全なこちらの国に来たのですよ、はい」


「そうか。一応決まりで荷を改めるが?」


「はい、大丈夫です」


「では、早速幌を……」


 兵士が商人の馬車の幌を上げさせ、中の荷物を確認しようとした……その時、別の一人の兵士が息を切らしながら走ってきた。


「た、大変だ!」


「どうした、そんなに慌てて?まさか魔物でも出たのか?」


「魔物ではない!けど、もっと厄介な奴だ!『血濡れ』だ!『血濡れ』の奴らが帰ってきた!」


「血濡れ?」


 側で聞いてた商人が聞き慣れぬ言葉に何の事だろうと首を傾げたが、隣にいた髭の兵士の顔を見てギョッとする。


 先程まで厳しい顔をしていた兵士の顔面が、恐ろしいほどに真っ青となっていたのだ。


「ち、血濡れだと?い、急いで人々を端に移動させて道をあけろ!」


 顔面真っ青となっていた髭の兵士は暫し唖然としていたが、直ぐに我に返ると周囲にいた兵士達に指示をとばす。


  すると、兵士達は迅速に動き出した。


「警鐘も鳴らせ!他の奴らにも知らせろ!!」


「ハッ!!」


 カンカンカン!!


 髭の兵士の指示で警鐘が鳴らされると、辺りは騒然となった。


 が、王都に住まう者達は慣れているようで、慌てはしてもその動きは統制の取れたものであった。


 人々は兵士達の指示に素直に従い、道の端に寄った。馬車も邪魔にならない場所へと移動させられたが、文句を言う者は誰一人いない。


 ただ、やはりこの商人のように他国から来たものは唖然と動けずにいた。


「急げ!早く馬車を寄せろ!」


「あ、あの…この騒ぎはなんなんですか、はい?」


 事情が分からず、唖然としていた商人が髭の兵士に何事かと尋ねると、彼は酷く焦ったように叫んだ。


「『血濡れ』だ!この辺りでは有名な冒険者だ!やつらに関わると録なことがない!お前も下手に巻き込まれたくなかったら馬車を端に寄せ、道に背中を向けて目を合わせるなよ!襲われるぞ!!」


「は、はあ……?」


 冒険者?商人は兵士の言ってる意味が理解できなかったが、取り敢えず危険な奴なのだろうと、言われた通り馬車を端に寄せた。


「来たぞ!」


 どこからか兵士の叫び声が響いた。


 それと同時に周囲に緊張感が走る。


 人々は道に背を向け、これから通る者を見ないようにしている。


 兵士は腰の剣に手をかけ、ブルブルと震える。


 母親は二人の子供をギュッと抱き寄せる。


 老人は天に向かい、ブツブツと祈りを唱える。


 商人はそんな人々を横目に、同じように道に背を向けた。


 やがてガラガラと馬車の車輪の音が響いてきた。


 商人は人々がこれほど恐れる存在とは一体どんな奴なんだろうと興味に駆られ、チラリと横目で道を覗き見た。


 そして驚愕した。


 まず目に入ったのはよく分からない化け物。

 デカイ顔に蜘蛛の脚やら百足の尾やらをめちゃくちゃにくっ付けたようなキメラだ。


 なにあれ、怖っ。


 商人は戦慄した。


 だがそれだけでは終わらない。

 キメラは何故か馬のように馬車を牽いている。

 その馬車の御者席にはでかいゴブリンのような……いや、ゴブリンだ。あれ、間違いなくゴブリンだろ?と確信を得る緑色の肌をした巨大な魔物が座っている。


 そして屋根には、そのゴブリンがどうでも良く思えるほどの存在感を放つ禍々しい黒い鎧を着た巨大な骸骨騎士と、冒険者風の中年と、ただの爺が仲よく並んで座っていた。


 いや、この三人の関連性なんだよ!?商人は心の中でツッコんだ。


 やがて馬車は門の手前で止まり、窓が開く。


 その窓から、悪魔のような鎧兜を付けた人物が顔を覗かせた。


 商人はその人物を見た瞬間、冷や汗が止まらなくなった。身体がガタガタと震え、本能が警鐘を鳴らす。


 そして直感する。


 あれが『血濡れ』だと。


 理由は分からないが、商人の第六感的なものが騒いでいた。あいつはヤバい。あいつに近づくな。と。あれは人ならざる者だと。


 人々の反応にも合点がいった。

 あんなものには関わりたくない。


 その血濡れらしき人物は、近場にいた兵士に何かを見せて一言二言話すと、直ぐに馬車の中へと戻った。


 そして馬車は再び走り出す。


 走り出した馬車を何となく見ていた商人だが、次の瞬間驚きに目を丸くした。


 その馬車の後方には、何故か一人の女性が縄で縛られて引きずられていたのだ。


 とんでもない美女だ。


 なんて鬼畜な所業を!と憤慨したが……。


『この者変態。仕置き中』


 という張り紙が女性の身体に張られている。


 何があったか知らないが仕置き中らしい。

 触れない方が良さそうだと商人は判断した。


 更にその女性だが、仕置き中でズリズリと引きずられているのに、その顔は痛がるどころか、どこか恍惚とした表情であった。 


 触れない方が良さそうだと商人は改めて判断した。


 そして馬車が通り過ぎ見えなくなると、人々は安堵の息を吐いてから再び列を作り直した。


 ただ初見で見ていた者達……この商人は、唖然と馬車が過ぎ去った方向を見ていた。


「驚いただろう」


 声をかけられ振り向けば、髭の兵士がいた。


「あぁ……はい。あれは一体……」


「いや、俺にも分からない。ただ、何時からかここを行き来するようになった冒険者達だ」


「冒険者……?なん……ですか?あの、魔王軍の関係者では?」


 無理もない意見だった。


「気持ちは分かるが冒険者だ。ギルドカードも持っていた」


「はあ……ところで血濡れっていうのは?あの馬車に乗ってた方のことで?」


「そうだ。基本、鎧が返り血で真っ赤に染まっているから『血濡れ』という異名がついた」


「危険人物じゃないか」


 無理もない意見だった。


「いや、魔物の返り血らしいからセーフだ」


「いや、それでも洗い流すべきでしょ?」


 正論であった。


「だが、それは個人の問題であり我々が関与すべきことではない。我々がここにいるのは危険人物や魔物を都内に入れないことで……」


「なんか魔物が馬車を牽いてましたが?」


「使い魔らしいからセーフだ」


「屋根に禍々しい騎士がいましたが?」


「仲間らしいからセーフだ」


「ゴブリンがいたような?」


「緑色の肌をしたオッサンらしいからセーフだ」


「女性が引きずられていたようですが?」


「喜んでいるからセーフだ」


 商人からの質問に兵士は淀みなく答える。


 商人は一度質問を止め、一呼吸置いてから真顔で兵士へと再び質問した。


「ここだけの話、本音は?」


「怖くて注意できない」


  兵士は淀みなく本音を吐いた。


 商人は真っ直ぐに兵士を見た。

 兵士も真っ直ぐに商人を見た。


「で。王都に入るなら荷物を改め……」


「あっ。怖いんで、他所にいきます」


 商人はアンデル王国に立ち寄ることをやめた。


 アンデル王国に未来は無い。

 商人はそう悟った。






 ◇◇◇◇◇


「いやぁ~あの門番さん、いつも親切だよね。あんだけ人がいるのに優先して通してくれるんだから」


 懐にギルドカードをしまいながらそう言うと、ゴルデが呆れたように息を吐いた。


「いや、優先してるとかじゃなく、単純に怯えてるだけでしょ?怖いから早く行かせろ的なやつでしょうが……」


 ゴルデの意見にシルビ達もウンウンと頷く。


「え~?親切心じゃないの?」


「親切にする人間は生まれたての子馬のように震えないし、目も背けないわ」


 言われてみれば?!


「それにその兜。わざわざそんな悪魔フェイスの兜を被って応対する必要はないでしょ?余計怖がらせるだけじゃないの」


 そうプリプリと怒るゴルデ。


 私は無言で兜を外した。


「誰のせいで兜を被っていると?」


 そう言って外した私の顔は、蕁麻疹でも出たかのように赤い斑点が顔中に出ていた。


 だが、これは蕁麻疹などではない。


 キスマークである。


 どこぞの誰かがけしかけた猛獣ミロクが暴走し、私の顔中を吸い付くした後である。


「この顔で応対しろと?」


「ごめんなさい」


 ゴルデが素直に謝ってくるが、目は背けてくる。


 おい。こっち見ろ。現実を直視しろ。


『あの……ところでミロクさんはあのままでいいんですか?いくらカオリに卑猥なことをしたといえ、やり過ぎでは……』


 ハンナが恐る恐ると聞いてくる。


 私は無言で車窓を開けた。


「ああぁぁ!!いいです!いいですわ!このぞんざいに扱われている感じ!!容赦なく引きずり回され、ボロボロとなるこの身!!絶え間なく続く痛み!そのどれもが私に生きてる実感と快感を与えてくれます!ああ、きっとこの後は勇者様によってめちゃくちゃにされるんですわ!いや、その前に私が御奉仕を────」


 パタンと車窓を閉めた。


「やり過ぎ?」


『ごめんなさい』


 ハンナが素直に謝るが、やはり目は背けてくる。


 こっち見ろよ?私の目を見ろよ?


 目を逸らすハンナとゴルデにメンチを切っていると、御者席に座るゴブリンキングから声をかけられた。


「あの…ご主人様」


「んっ?どうしたのゴブリンキング?」


「えっと、この後ハドコに向かえばヨロシイでしょウカ?」


 んっ?あー……そう言えば行き先を言ってなかったなー……。てか、どこ行けばいいんだっけ?


「えっと…ピノピノさん?」


「あっ、は、はい。ここの通りを暫く真っ直ぐに進んでいくと大きな噴水があります。その近くに馬車専用のターミナルがあるので、取り敢えずそこまで行ってください」


「だそうよゴブリンキング」


「了解しまシタ」


 そう返事をすると、ゴブリンキングは言われた通りに馬車を動かしだした。


「…………」


『?……どうしましたカオリ?御者席の方をジッと見て?』


「あっ……いやさ……ゴブリンキングだけど…」


『奴がどうかしましたか?』


「洒落で御者やれって言ったのに、普通にできてるよね」


「洒落ダッタんデスカ?!」


 私の声が聞こえたようだ。

 御者席からゴブリンキングの声が響いた。


「いや……洒落って言うか、単純に馬車内に席ないし、あんたデブだから屋根に上げたら屋根抜けそうだし。だから消去方で御者席行けっつたんだけど、予想外にできてるよねー……」


「期待されテナカッタ?!いや、御者がイナキャどうやって馬車の運用を……」


「御者経験あるスケルトン使ってたけど、ぶっちゃけポンゴは頭いいから勝手に走ってくれるんだよね。だから正直、御者は飾り?みたいな?」


「儂の存在意義ゼロ?!」


 ゴブリンキングの絶望したような声が響いた。


「いや、別に御者やらせるために連れてきた訳じゃないから安心して。あんたの役目は買い出し、掃除、洗濯、その他もろもろだからさ?」


 そう教えてやると『買い出し?王である儂が?』といった呟きがボソボソと聞こえてきた。


 いや、もう部下もいないのに王も糞もないだろうが。名前はゴブリンキングだが。


 聞けば、もともとあの村を攻めにゴブリン軍を引き連れて来ていたようだが、その軍も覗き阻止用アンデット達によって全滅したようだし。


 そう考えると、思わぬところで村を救ってたな私。


 ザッドハーク達を殺るために設置したものが、人々の為になるとは。人生何が役立つか分かったものじゃないなぁ。


「なにを染々とした顔で唸っているのよ?」


「いや……私、勇者してるなぁ……って思って」


「……えっ?どこが?」


 私の呟きに、ゴルデ達が猜疑心が籠った目を向けてくるが、敢えて気づかない振りをしよう。


『ところでカオリ。先程からゴブリンキングゴブリンキングと言ってますが、それはまずいのでは?』


「まずい?何が?」


『いや、だって…無理はありますが、ゴブリンキングを緑色をした変わったオッサンって通すのに、ゴブリンキングなんて種族名で読んでたら、自分達で周囲に正体をバラしているようなもんじゃ?』


 確かに。

 自分から暴露してるじゃん。


「ということは……名前とか付けた方がいいと?」


『それが懸命かと』


 ハンナがコクリと頷く。


 確かにゴブリンキングなんて呼んでたら、それを聞いた人に※正体がバレてしまう恐れが……。


 ※既に色々と手遅れですが、優しい気持ちで見守ってあげてください。


 それに何より、呼ぶのがめんどくさい。

 ゴブリンキング……って長いんだよね。

 連呼すると舌噛みそうだしさ。


 うん……名前を付けるってのは有りだね。


 となると、名前……名前……。


 暫く考えた後、とある名前を思いついた。


「石塚……とか?」


『何が?』


 ハンナが心底不思議そうな顔で呟く。


「いや、名前。ゴブリンキングの」


『イシヅカ……いや、なんで?』


「あの……普通はゴブなんとかって付けない?」


 ゴルデが非常に複雑そうな顔でツッコンできた。


「最初はそれも考えたけど、それって人間で言うなら人太郎とか人子とかって付けるようなもんじゃん。なんか馬鹿っぽくない?」


「いや、まあ……」


『言われてみれば……』


 少し思うところがあったのか、私の意見にハンナ達も僅かだが同意を示す。


 暫しハンナ達はウンウンと唸っていたが、やがてゴルデが怪訝な表情で聞いてきた。


「カオリの言いたいことは分かった。……でも、なんでイシヅカ?」


「いや……なんでって……私のクラスメイトの石塚君に似てるから……」


『「誰だよ?!」』


 ゴルデとハンナの叫びがハモった。



 石塚君。


 それはかなり太った体型をしたクラスメイトだ。

 温厚で明るい性格で、皆からも好かれるクラスのムードメイカー的存在だ。


 見た目通り食べることが好きで、昼の弁当以外の非常食として、カバンと机の中には必ず菓子パンなどを数個入れており、暇さえあれば授業中でも食べているお茶目さん。


 でも、ただの量だけ食べるデブではなく、味にも拘る面倒臭いグルメデブでもあり、食への拘りは半端ない。


 そんな彼だが、去年の夏頃に机の中に隠していたカレーパン。それも、並ばなきゃ買えない程に美味しいと評判のパン屋のとっときカレーパンが、何者かに食べられる事件が起きた。


 その時、石塚君は残されたカレーパンの空き袋を片手に『誰だよ!こんな酷いことをする奴は!人間じゃねぇぇよ!』と、悲痛な慟哭を上げていた。


 これは後に『石塚カレーパン事件』と呼ばれ、我々クラスメイト達に語り継がれる事件となった。


 尚、犯人は不良の花形君であった。




「というのが石塚君だよ」


「ますますもって誰よ?」


『カレーパン事件とか…情報いります?』


 石塚君が何者なのかと聞いてくるから説明したが、なんとも反応が悪いな。


『ところでカオリちゃん。なんで犯人がハナガタくんって分かったの?』


 おっと。ここで思わぬ方向から質問がきた。

 ゴア姐さんが石塚君に興味を持つとは。


「えっと、花形君が犯人だって分かったのは本人が自白したから。とういうか、自白せざるを得なかったの」


『?……どういうことかしら?』


「実は、夏場だったからカレーパンが傷んでいて、それを知らずに食べた花形君が食中毒を起こしてね。それで、病院に運ばれてお医者さんに診断を受けてる時にゲロったらしいの。二つの意味で」


 ゲロ吐きながらゲロったらしい。


「なんというか…自業自得な話ね……」


 ゴルデ達が呆れ顔だ。


「ついでに後日、石塚君は花形君が入院している病院まで行って『カレーパン代を寄越せ。倍返しでな』って、カレーパン代を請求したらしいわ」


『執念と死体蹴りが激しい……。でも、身代わりになってくれたとか考えなかったんでしょうか?』


「本人曰く『俺なら耐えられた』と」


「ある意味勇者ね……」


 ゴルデが更に呆れたようにため息を吐いた。


『でも、カオリ。そんなイシヅカくんの名前を付けていいんですか?イシヅカくんに失礼になりません?』


 フッと、ハンナがそんなイシヅカフォローを入れてきた。


 まあ、似てるから…なんて理由でゴブリンに名前を付けられちゃ嫌だろうね。


 けど……。


「んー……大丈夫でしょ。石塚君はそんな器の小さい人間じゃないし。それに石塚君は石塚君で、皆から別のアダ名で呼ばれてるしさ」


『アダ名?なんて呼ばれてるんです?』


「ブ○ゴ○ラ」


「なに、その悪意と悪意を合体させたような蔑称は?」


 ゴルデが頬をひくつかせ、何か信じられないようなものでも見るような目を向けてくる。


「?……なんか変?」


「変も何もそのアダ名、イジメでしょ?イシヅカくんイジメられてたの?」


「いや。クラスのムードメイカーだしイジメなんて……」


『なんでクラスのムードメイカーがブ○ゴ○ラなんて呼ばれんてんです?一つ一つでも良い意味じゃないアダ名なのに、その合わせ技なんて……』


「でも、本人は気にしてなかったよ?むしろ喜んでたかな?」


「イシヅカくん器大き過ぎない?それともマゾなの?」


 なんともブ○ゴ○ラ呼びはハンナ達に不評なようだ。


 ハンナ達は知るよしもないけど、あの某有名アニメのガキ大将キャラと同じアダ名なんだけどな…。


 石塚君は『止めろよ』と言いつつ、ニンマリ笑ってたからおいしいかな?と思ってたんじゃないかな?


「う~ん。そんな変なアダ名かな?」


「じゃあ、試しに聞くけど、あなたが他人からブタって呼ばれたら?」


「殺すわ」


『では、ゴリラと呼ばれたら?』


「殺すわ」


『「じゃあ、ブ○ゴ○ラ?」』


「殺す……あれ?もしかしてブ○ゴ○ラって酷いアダ名だった?」


 よくよく考えればゴルデの言う通り悪意と悪意が悪魔合体したような名前ね?!


 ハンナ達が『今さら気づいたのかよ?』と言わんばかりの目で見てくるが、これはぐうの音も出ないわね……。


「ま、まあ…ブ○ゴ○ラの件はもういいわ。取り敢えず、あいつの名前は石塚で決定で」


「それは決定なんだ……」


『まあ、別にいいですが……』


 取り敢えずゴブリンキングが石塚君に似てるのは変わりないから、石塚で決定で。


 というか、あんまり深く考えるのがめんどい。


「そんなこんなでこれからよろしくね。ゴブリンキングならぬ石塚」


 御者席にそう呼び掛けると、石塚の驚愕した叫びが響いてきた。


「ソレ、儂の名前?!なんか話してるト思ってタけど、知らぬトコロで儂に関する重要案件が進んでイやがった!?」


 そこまで重要案件ではないがね。


「じゃあ、石塚。馬車のターミナルまで安全運転でヨロシク」


「いや、待ッテ!名前、ソレ決定?!儂の意見は?」


「うっさい。あんま文句言うとブ○ゴ○ラに改名すっぞ」


「なに、その悪意と悪意を合体サセタような蔑称は?!」


 ゴブリンキングがゴルデと同じ感想を叫ぶ。


 やっぱり異世界では不評なようだ。

 まあ、冷静に考えたら普通に酷いアダ名だ。


 そんなこんなでゴブリンキングの名は石塚に完全決定した。


 名付けなんてプチイベントもあったが、私達一行はエマリオさんの店に依頼達成報告へと馬車を進めた。

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