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78話 帰り道



 ガラガラガラ。

 

 森の中にある道を馬車が走る。

 

「グウゥオオオン!!」

 

 その馬車を牽く謎の怪物───グラトニーゴブリンの顔に蜘蛛の脚と百足の尾が生え、顔から直接生える巨大な両手の先はフォレストベアの顔。頭頂部からは申し訳程度に骨の竜の首が生え、更にその頭頂部には腕組みしたトゥルの木の上半身が生えた気色悪いキメラ──が吠えた。

 

「……また混じっちゃったね」

 

 車窓から見えるポンゴの姿にボソリと感想を溢すと、ハンナがハァと深くため息を吐いた。

 

『復活させる時に嫌な予感はしたんですよ。これ、混じるんじゃないの?って。そしたら案の定ですよ……』

 

「ドンマイ」

 

 それしか言えない。

 

 やっぱと言うか、また色々混じったポンゴ。

 もう、ここまできたらどこまでいくのか寧ろ見てみたい気がする。

 

「勇者様はとても変わった者をお仲間にしているのですね」

 

 ポンゴの行く末に密かな期待を抱いていると、私の直ぐ背後から声がかけられた。

 

「うん、まあね。というか、凄く今更なんだけど、なんで私はミロクさんの膝の上に座ってるんだろう?」

 

 私は何故かミロクの上に座っていた。


 結局勇士の仲間として連れていくことになったミロク。色々と危険な人物ではあるが、一応は回復魔法なども使えるということだし、貴重な回復役の勇士ではあるので仕方あるまい。

 

 ということで、私へのお触り禁止を条件に加入を許したが、早速破りやがった。自由過ぎるだろ。

 

「仕方ありません。馬車は六人乗りに対し、こちらは勇者様、ハンナ様、ゴア様、ゴルデ様、シルビ様、ブロズ様、ピノピノ様と私の七人。ならば、誰かが誰かの上に座らねば乗りきれません」

 

「そっから思考がズレてるから」

 

 外の席とかあるだろ?

 

「大丈夫です。ズレがないようにしっかりとホールドしてますので」

 

 そう言って私の腰に回したシートベルト変わりの両手にギュッと力を入れてくる。

 

 とても強い。とても熱い。耳に吐息をかけるな。

 

「いや、そのズレじゃない。思考、脳ミソ。頭大丈夫?」

 

「全開ハッスルです」

 

 手遅れのようだ。

 

「ま、まあいいんじゃないの?同性なんだし減るもんじゃ……」

 

「だったら変われやゴルデ」

 

「確かにその豊満な胸には興味があります」

 

「ぐぅぐぅ……」

 

 狸寝入りしやがった?!

 わざとらし過ぎだろが?!

 

「これは……マグロプレイというやつですか?どうぞ無抵抗な私をお好きにしてという……」

 

「よし、やれ。揉みほぐせ」

 

「待ったー!?」

 

 狸寝入りしたゴルデにミロクをけしかけようとすると、ゴルデが慌てたように目を開いた。

 

「マグロプレイって何よ?!てか、そんな危険人物をけしかけないでよ?!」

 

「うるせぇな!!こちとらその危険人物の膝の上でガッチリホールドされた上に定期的にケツやら胸を触られてんだよ!!テメェらのアへ顔でも見なきゃ割に合わねぇぜ!!」

 

「心が荒んでいる……」

 

 さっきからこの肉座布団ならぬミロクだが、お尻を撫でたり、胸を揉んだり、耳に吐息をかけてきたりと、セクハラをやりたい放題なのだ!

 

 馬車に乗ってからずっとやられりゃ、心も荒むってもんよ!!

 

 ガチャリ。

 

「いま、アへ顔がどうと聞こえグバァ?!」

 

 ゴロゴロゴロ。

 

 エロワードにつられ、馬車の扉を開けて顔を覗かせたザッドハーク。

 その顔面目掛け、手近にあった空になったクッキー缶を投げつけると見事クリティカルヒット!

 馬車から落とされ後方へと転がっていった。

 

 尚、男共は安定の馬車の屋根待機である。

 

「しゃあ!!」

 

「相変わらず容赦ないわね……」

 

『まあ、妥当ですけどね』

 

「ああ…あんな容赦なく。私もいずれ……」

 

 ミロクか何か言ってるようだが無視しよう。

 

『おい!ザッドハークが転がっていったぞ?!』

 

『ザッドハーク殿!?一体何が??お助けせねば!』

 

 屋根にいる男共が騒ぐ。

 

「黙れ。次に騒いだら下からゴア姐さんの熱線を浴びせるぞ」

 

『お姉さん頑張るわよ』

 

「「…………」」

 

 男共が通夜のように静かになった。

 

『……止めなくてヨロしいノデ?』

 

「むしろ飛ばせ」

 

『……ハッ』

 

 御車をしてるゴブリンキングから、どうするかと伺う声が聞こえたが、構わず進めと指示する。

 ゴブリンキングは小さく了承の返事をしてから、黙って馬車を進ませた。


「というか……今更ながらだけど、本当によかったの?」

 

 そう言って上を見上げるゴルデ。

 

 その表情は何とも複雑そうな顔であった。

 

「ザッドハークのこと?お腹が空けば戻ってくるでしょう」

 

「そっちじゃなくて……村長のことよ……」

 

 そう言って再び屋根を見上げるゴルデ。

 

 先程、屋根の上から男の声が二人分聞こえた。

 片方はジャンクさんだが、もう片方はなんと立ち寄った村の村長の爺である。

 

 私達の覗きをしたことが家族にバレ、更に覗きの際に、村唯一の温泉を破壊──これはなし崩し的に問われた罪であったが、私達に非が問われるのを避ける為に黙ってた──したことにより、村人満場一致で村追放となったのだ。ざまぁ。

 

 まあ、もともと村で覗きやら下着ドロを繰り返していたようだし、今回のことを機に村人達の溜まり溜まった鬱憤が爆発したようだね。

 

 朝、村の外れで裸で磔にされて咽び泣く村長の姿は見ものであった。

 

 だが、ここで予想外なことが起きた。

 

 なんと、一緒に覗きをした仲で友情が目覚めたのか、ザッドハークとジャンクさんが村長を助けて連れてきてしまったのだ。

 

 私は『もとあった場所に返してきなさい!』と怒鳴ったが、ザッドハークとジャンクさんらによる二人からの『ちゃんと面倒見るから』という懇願に押しきられ、渋々同行を許可してしまった。

 

 村長本人は『心を入れ替えます』と言っていたが、信用できるかどうか……。

 

「村長は都に着いたら『冒険者として再スタートじゃ!』とか言ってたけど……」

 

「再スタートが遅すぎるでしょ……。あの人、年齢八十越えてるらしいわよ?スタートしたら、いきなり終着点に行き着くかもよ?」

 

 然もありなん。

 スタート地点からゴールまでの距離が短いよな。

 爺、大丈夫か?でも……。

 

「同じような年齢のババア達が飛んだり跳ねたりハッスルしたりとしてるし、案外大丈夫かも……」

 

 メル婆とか、トゥル農場のババアとか。

 

「あんたの身の回りの老人って、どうなってんのよ?」

 

「私も聞きたい」

 

「ハッスル……の部分を詳しく聞きたいですね」

 

「それは聞きたくない」

 

 誰かミロクを黙らせてくれ。

 

『あの、そういえばミロク……さん』

 

 ミロクをどうにかせんとあかん……と考えていると、ハンナが遠慮気味にミロクに声を掛けた。

 

「はい、なんでしょうか。とても揉みごたえのありそうな御方」

 

「チッ!」

 

『胸を凝視しないでください!カオリも露骨に舌打ちはやめてください!いや、それより、頭の方は大丈夫なんですか?』

 

「ハンナ。見て分かるでしょ。もう終わってるわよ」

 

『中身じゃないです。外傷の方です。頭に結構な打撲痕がありましたから、もう大丈夫なのかと……』

 

 ああ、なるほど。そっちか。

 確かに頭にかなりでかい瘤があったわ。

 実際、気絶するほど衝撃を受けていたようだし、デリケートな頭のことだからハンナも心配なんだな。

 

「ご心配ありがとうこざいますハンナ様。ですが大丈夫です。私、多少なりとも回復魔法を修めておりますので……」

 

『ああ、なるほど。自分で回復魔法で直したと?』

 

「いえ、使ってません」

 

「「「「『使ってないんかい!?』」」」」

 

 馬車内の全員が思わず一斉にツッコンだ。

 

「いや、今の話の流れなら使った感じでしょ?!」

 

 回復魔法を修めてる……なんて言うから、普通は自分で魔法を使って治したと思うだろう!

 

 皆も私の意見にウンウンと頷く。

 

「いえ、魔法は使ってません。が、私、昔から身体が丈夫で、ちょっとした傷なら寝たら回復します」

 

 ただの体質かよ!?いや、充分凄いが?!

 

「じゃあ、なんで今回復魔法なんて言ったの?!」

 

「無論アピールです」

 

「アピールかよ?!」 

 

「私、回復魔法つかえますが?的な売り込みです」

 

 売り込み根性が凄いな?!

 

「ですが、あの衝撃はよっぽどだったのか、今でも多少ジンジンしますね……」

 

「じゃあ回復魔法使えや?!」

 

 治りきってないじゃないの?!

 

「いえ、痛いのは嫌いではないので……ポッ」

 

「医者を呼んで!頭のお医者!世界的に有名な!」

 

 若しくは研究者を!ロボトミー手術の研究者を!!

 

「それにこの痛みは勇者様から与えられた傷。つまりはご褒美ですから」

 

 そう言って愛おしそうに瘤があった部分を撫でるミロク。

 

 私はそんなミロクに思わず『ハッ?』と声を上げた。

 

『勇者様から与えられた傷……って、カオリ…。貴女やっぱり……』


「いや、違うよ?!やってないよ?!わたしゃなんもしてないよ?!ミロクも変なこと言わな……」

 

「容赦ない勇者様の一撃。まさに昇天するほどの衝撃でした……」

 

「黙れや?!その口縫い付けるぞ?!」

 

「「「『やっぱり……胸に嫉妬して……』」」」

 

「やってないよぅぅ!?私は無実よぅぅぅ!?」

 

 完全に犯人を見る見る目を私に向けてくる一同。

 

 ゴア姐さんまでもが『そんなに辛かったのね』と、触手で肩を撫でてくる。

 

 だから違うから?!

 

「ミロクゥゥゥ!ちょっと嘘言わないでよ?!私が暴行の容疑者みたいに見られてるじゃないの!?いままで積み上げた私のイメージが崩れたらどうしてくれんのよ!?」

 

「いや、言うほど何も積み重ねてないから……」

 

『敢えて言うなら、罪と畏怖は積み上げてますけど……』

 

 ゴルデとハンナがボソボソと何か言っているようだが今はいいだろ。

 

 それよりミロクだ。在らぬ疑いをかけられたんじゃ、たまったもんじゃないよ!

 

「いえいえ嘘など言っておりません。この傷はあの時、勇者様によって受けたものですので」

 

「あの時?」

 

「はい、あの時……」

 

 ホワンホワンホワン~

 

 ~ここよりちょっと回想~

 香がグラトニーゴブリンに捕まった直後くらいのミロクサイド。

 

 

 木々が茂る深い森の中、道なき道を走る。

 ああ、ここまでの道のりは長かった。

 困難な道のりに魔物の群れ……。

 まあ、困難な道のりは嫌いでないですし、魔物などは美味しく頂きました♪性的に♪

 特に、途中で出会ったオーガの群れには、たっぷり楽しませて頂きました♪

 一際大きなオーガさんからは、ミイラ寸前まで、たっぷり絞らせて頂きましたわ♪御馳走様♪

 

 って、ああ!この先から勇者様の御力を感じます!私の手の紋章が囁いております。

 

 勇者様がいる……と。

 

 ああ、勇者様はどういった方なんでしょうか?

 男?女?やっぱり男?男ならば、やはり猛々しい御方なんでしょうか?下半身とか。

 

 そうして日々の戦いで募った熱き猛りを肉欲として私にぶつけるのでは?そして私は毎日毎夜、慰みものとして勇者様に乱暴に扱われ……ああ、たぎりますわ!!

 

 おっと、ちょっと濡れて……って、何やら前方が騒がしい……って、なんですか?!あの巨大なゴブリンの魔物は?!なんて素晴らしい!!襲われたい!!絞りたい!!

 

 いや、今は欲望を抑えましょう。後です、後。

 それより、あの魔物が握り締める手の中から勇者様の反応が……。

 

 ああ、魔物の手の内に女性が二人捕まっております!!どちらかは分かりませんが、間違いなく勇者様の波動を感じます!!となれば勇者様は女性!!

 

 ああ、なんという……最高です!私、女性でもイケます!むしろバッチこい!!大好物!!

 

 というか、この状況は……。

 

 デカイゴブリン

  ↓

 襲われる女勇者

  ↓

 何故か裸の女性

  ↓

 ノクターンな世界

 

 混ざりませんと!!

 いち早く、あの乱れた祭りの中に混ざらねば!!

 トウッ!!私、ジャンプ力には自信がありましてよ!!この通り、一っ飛びで魔物の腕に到着&参上でござ……勇者様が上空を見ながら何か叫んで?

 って、アアアアアア!!何かが上空から落ちてきて魔物に着弾しました!!

 一体何が?いや、それより衝撃が凄まじい!!

 踏ん張りが効かず吹き飛ばされ……って、このまま飛べば勇者様に激突して……いや、それもありですが、勇者様にお怪我を……って、勇者様の頭が目……?!

 

 ゴキン!!

 

 

 

 

「という訳でして、勇者様をお助けしようと参上しましたところ、謎の衝撃波で吹き飛ばされ、勇者様の頭と激突して意識を失った……ということでございます。お恥ずかしい」

 

「回想とまとめにかなりの誤差があると思うのは私だけ?」

 

 凄く聞くに耐えない欲望にまみれた回想だった気がするんですが?

 

 そしてオーガだかの話の時にゴブリンキングがビクリと震えていたような?まあ、いいか。

 

「そう言えば、デカイ奴に捕まってた時、なんか白いのが視界の端にいたような気がする……」

 

 ミロクの回想にツッコミを入れていると、横からゴルデが思いだしたように呟いた。

 

「そう言われたら、そんな気も……いや、いたね。なんか白いのがチラリと見えたわ」

 

 ゴルデに言われて思いだしたが、そういやなんかヒラリと舞い降りてきてたわ。

 

 あれ、ミロクだったのね。

 

「それに、カオリ。あんたあの衝撃波で吹き飛ばされた時に頭になんかぶつかったとか言ってたじゃない」

 

「あー……」

 

 確かに頭になんかぶつかってきたのは覚えてるが、あれもミロクだったか……。

 

 ザッドハークに目を奪われて見てなかったわ。

 

 というか、私……気づかずにミロクに頭突きかましてたわけね。

 

「それで私がやったと……いや、やったというか、事故だよね?」

 

 吹っ飛ばされた先に私がいて、そこにミロクがぶつかってきただけだから間違いなく事故でしょ?

 

「ええ事故です……が、あの勇者様の硬いのが当たってきた感触は一生忘れ難いものかと……」

 

「誤解を招く発言はやめよう」

 

 頬染めて、意味ありげに言うなや。

 

「ま、まあ……カオリが別に危害を加えた訳じゃないってのは分かったわ。というか、私は最初から信じてたけど」

 

「いや、嘘つけ。完全に容疑者を見る目だったぞ」

 

『私もですよ。カオリは意味なく暴力は振りませんからね』

 

「「「私達も信じてたわ」」」

 

「清々しいほどに嘘つきだらけだな」

 

 手のひら返しも甚だしいな。

 

『しかし、別にカオリが悪かった訳じゃないってのは理解できましたが……同じ衝撃を受けた筈のカオリが無傷っていうのは……』

 

「頭の固さまで化け物染みてるのかしら?まあ、今更驚くほどのことでもないけど」

 

「おい」

 

 謝罪したかと思えば更なる手のひら返し。

 

 私を持ち上げたいのか貶したいのかハッキリしろや。

 

「ゴホン。まあ、ミロクさんがあそこにいた理由も気絶してた訳も分かったんで少しスッキリしたわね」

 

『ですね』

 

「私はモヤモヤしてんだけど?」

 

 主に扱い的な意味で。

 

「モヤモヤ?でしたら、一度スッキリし…」

 

「はい、モヤモヤ吹っ飛んだ!!」

 

 危ない。ミロクを前に下手なことは言えない。

 何されるか分かったもんじゃないわ。

 今だって、めっちゃお尻を撫で回されたし。

 

 そんな私とミロクのやり取りを見ていたハンナ達が、何やらボソボソと呟きあっていた。

 

『……ある意味、ミロクさんはカオリの制御役に向いてるんじゃ?』

 

「そうね……。なんだかカオリも苦手意識があるようだし、なんかあったらミロクさんをけしかければいいんじゃ……」

 

「ミロク。勇者の名において命ずる。そこの二人の胸を揉みしだけ」

 

「はい、よろこんで」

 

「『ちょ?!』」

 

 

 

 

 

 

 

~なろうにおいて、とても不適切な描写が流れております。暫くお待ち下さい~

 

 

 

 

 

「ヒワワワワ……」

 

「うわぁー……」

 

「これは……」

 

 ピノピノさん、シルビ、ブロズがドン引きしたような声を漏らす。

 

 その理由は、目の前に広がる光景にあった。

 

『「うぅ……あ……はぁ……はぁ……」』

 

 甘く熱っぽい吐息が、馬車の中に充満していた。

 

 ゴルデとハンナが服を着崩し、やや汗ばんだ肌をあられもなく露出している。

 

 頬は紅潮し、目は虚ろ。口を半開きにし、だらしなく舌を出している。

 

 アへ顔だ。どっからどう見てもアへ顔である。

 

 そんなアへ顔を晒す二人は、互いに肩を寄せ合い、ピクピクと痙攣しながら力無く席に座り込んでいた。

 

「御馳走様でした」

 

 そう言いながらハンナ達に手を合わせるのはミロク。

 

 その肌は、先程よりもツヤツヤと潤っていた。

 

「うわぁ……指示してなんだけど、ドン引きだわぁ……」

 

『ミロクさんもそうだけど、お姉さんは指示して引いてるカオリちゃんにちょっと引いてるわよ?』

 

 ゴア姐さんが至極まっとうな意見をぶつけてくる。

 

 いや、殺られる前に殺れっていうじゃん?

 だから、けしかけれる前にけしかけたんだけど……うん、やりすぎだね。

 

「いやぁー……私もまさかここまでとは……。こんな18禁まっしぐらなことになろうとは……」

 

 少しハンナ達を懲らしめるつもりが、こんなアウトな絵面になるとは思わなかったわ。

 

 ミロク……本当に恐ろしい女だ。

 

『まったく……。でも、大丈夫かしら?このミロクさんの影響で、この物語がノクターンに移動になったりするんじゃないの?』


「……?ゴア姐さんは何を言ってるの?」

 

 ゴア姐さんが良く分からないことを言ってる。

 が、なんとなく私まで身震いがする。

 

 一体なんだってんだ?

 

「勇者様。大変有り難く御二方を頂きました。とても張りと柔らかさと初々しさがあって満足でした」

 

 そんな礼を言われても、何も言えないんだけど?

 

 こちらに頭を下げるミロクに戸惑ってと、ハンナとゴルデが『うう……』とうめき声を上げた。

 

 どうやら意識が戻ったようだ。

 

「ハンナ!ゴルデ!大丈夫!」

 

『うう……けしかけた本人が何言ってんですか?』

 

「うう……もうお嫁に行けない……」

 

 ハンナは憎々しげに私を睨み、ゴルデは虚ろな目で虚空を見つめていた。

 

 うわぁ……ハンナの視線が痛い。

 そしてゴルデなんだけど……これが噂のレイプ目ってやつかな?

 

 うん。酷いね。

 

 えっと……この場合、なんて声をかければ?

 うんと……そうだ!!

 

「いや、ほら…………ドンマイ?」

 

 そう言ってハンナ達の肩を叩きながら、親指をグッと立てた。

 

 その瞬間、ハンナ達の瞳がギラリと光った。

 

 

 

 

 

『ミロクさん。カオリも実は、女同士が嫌いじゃなくてよ?』

 

「えっ?」

 

「それに、そこにいる三人も、実は興味津々ですよ」

 

「「「えっ?」」」

 

『「だから、まとめてやっておしまい♪」』

 

「はい、では四人まとめてよろこんでいただきますぅぅぅぅ!」

 

「「「「はっ?ちょ、まっ……」」」」


 

 

 

 

 

 

 

 

──────イヤァァァァァァァァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 馬車の中から聞こえる騒ぎ声や振動に、御者席のゴブリンキングは顔をしかめる。

 

 が、妙なことを言って気に障り、首を斬られては堪らんと気にしないことにした。

 

 屋根の上にいる男共も、下手なことして熱線を浴びせられたら堪らんと、無心で流れいく風景を眺めていた。

 

 馬車は進む。喘ぎ声やら激しい振動を響かせながら、都を目指して。

 

 

 

 

 

「ウオオ!我の居らぬところで何やらエロ展開が起きてる予感が!!間に合え我!力の限り走り抜けぇぇぇ!!」

 

 ザッドハークも走る。浪漫を目指して。

 

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