77話 『慈愛の杖』
「………………」
『カオリ?急に黙り込んでどうしたんです?』
心配そうに声をかけてくるハンナだが、それに答える余裕は私にはなかった。
一度鑑定をやめ、目元を揉んでから再び鑑定した。
【鑑定結果】
名前:ミロク=ラーマ
種族:人間
称号:慈愛の勇士・極致の痴女
職業:性女
加護:女神の加護
状態:気絶・発情
Lv:100
HP:150/50000
MP:0/90000
筋力:※自主規制
知恵:※自主規制
旋律:※自主規制
魔力:※自主規制
幸運:※自主規制
性女固定スキル
【※自主規制:--】
【※自主規制:--】
【※自主規制:--】
【※自主規制:--】
【※自主規制:--】
【※自主規制:--】
【※自主規制:--】
特殊スキル
【唆鬼愉芭洲流快楽絶頂拳:SS】
通常スキル
【神聖魔法:S】
【拳闘術:A】
【製薬:B】
【緊縛術:S】
【調教:S】
【痛覚耐性:SS】
【快感増強:SS】
【名器:SSS】
【召喚魔法:A】
【収納魔法:C】
【※自主規制:S】
【※自主規制:S】
【※自主規制:S】
【※自主規制:S】
【※自主規制:S】※自主規制
装備
【頭】なし
【体】白き神衣【価値:A】
【右手】なし
【左手】なし
【アクセサリー】ピッチリ黒スーツ【価値:A】
【アクセサリー】バ○ブ【稼働中】
【アクセサリー】ア〇ルバ○ブ【稼働中】
「変わらない…………か」
鑑定結果はやはり変わらない。
この情報は嘘や冗談ではなく事実であり、間違いないものであるということか。
『カオリ?で、どうだったんです鑑定結果は?何か分かりましたか?』
「うん。分かっちゃいけないことが分かった」
『?…………意味が分からないですが?』
いや、私だって意味が分からない。
なんなんだ、このツッコミの塊は?
スキルの大半が※自主規制な上に、不穏な称号と不埒な装備品をつけてやがる。
そして何より……性……いや、よそう。これは触れちゃ駄目なやつだ。触れたらもどれそうにない。
本当……もう何?これはどこからツッコめばいいのだろうか?それとも何も触れずにそっとしておくべきか?
……うん。そうだ。彼女のため……いや、私自身のためにも触れないでおく方が非常によさそうだ。
こいつは危険だ。掘り下げてはいけない。
ザッドハークとは違う分類で危険な生き物だ。
「ねえ、ハンナ。もとあった場所に彼女をもどしておかない?」
『いや、何を見たんですか本当?!』
「ナニモミテナイミタクナイ」
『人形みたいになってますよ!?』
ハンナは私の肩をつかんでガクガク揺すってくる。正気かどうか確認しているようだが私は到って正気だ。正気だからこそ放置しようと思うんだ。
「ねえ……一体何を見たって言うのよ?」
周囲で様子を見ていたゴルデ達も気になったようで、ゾロゾロと私を囲んできた。
皆の瞳が『見たことを話せ』とプレッシャーをかけてくる。
くっ……圧が強い。
そして何故かゴブリンキングも興味ありげに見てくる。お前はいいだろ。
「『さあ、話なさい』」
ズイッと顔を寄せてくるゴルデとハンナ。
二人の迫力に根負けして鑑定で見たことを話そうとした。
その時。
「うう……ん」
背後から唸り声が聞こえた。
慌ててバッと振り向けば、こちらをジッと見る赤い瞳と目があった。
目を……覚ましやがった。チッ!
しかし、すんごいジッと無言で見上げてくるんですけど?圧が強い。
「あの……ども」
なんとなく気まずくなって軽く会釈すると、鑑定で分かった名前……ミロクという女性は、上半身だけを起き上がらせた。
そして、自身の体をジッと見て確認すると、何故かベッドの上で態勢を直して正座し、そのまま三指ついて頭を下げてきた。
「なるほど……そういうことですか。では、不束者ですが、コンゴトモヨロシク」
「いや、何が?!」
マジで何が?!
この人、なんで急に頭を下げてきたの?!
「あ、あの……何がコンゴトモヨロシクなんでしょうか?」
そう聞くと、彼女は頭を上げ、何故か恥ずかしげに頬を染めた。
「何故と言われましても……その……私が気を失ってる間に、この体で色々と楽しんだのでは?」
「ハンナ。この人どっかに捨ててきて」
こいつはダメだ。確実に。
ここで切らなきゃ。
そう判断した私は、迅速に行動しようとした。
が……。
「そんな酷いことを言わないでくださいませ」
そう言いながら、ミロクが私の腰に手を回してきた。
その瞬間、得も言われぬ極上の快感が私を襲った。
「あふぅぅぅぅぅぅぅぅぅ?!」
『「カオリ?!」』
ゾワゾワと押し寄せる快感に思わず声が上がる。
突然奇声を上げた私に、ハンナ達が驚きに目を見開いた。
「カオリ様……と仰るのですか?なるほど……女性でありながら、なんとも鍛え抜かれた御体です」
ミロクは私にもたれ掛かりながら、腰に回した手の指先をサワサワと動かしてきた。
「ヌホゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ?!」
なにこれ?!なにこの新感覚??
ヤバい頭が快感でおかしくなりそうだ?!
早く、どうにかして離さなきゃヤバい!?
だ、だけど……だけどこの快感が癖になりつつある!?
ああ……このくすぐっさと快感に頭がおかしくなりそうだぁぁぁぁ!
「あら……カオリ様は随分と敏感なようで。では、ここらとかお好きなのでは……?」
「アヘェェェェェェェェェ?!?!」
口端から舌をダランと垂れ、自然と溢れ出るだらしない喘ぎ声を我慢することができない。
いや、恥ずかしい!なのに……。
あああ!腹部に回された手が気持ちいいぃぃぃ!
あっ、ヤバい。癖になる。
この感覚から抜け出せなく……。
「あんた、やめなさい!!」
ビクリ!
突然の叫びに我に返る。
見ればゴルデがいつの間にか剣を構え、それをミロクへと向けていた。
『意識を回復したのはいいでしょう。ですが、それ以上カオリに危害を加えるのは許しません』
ハンナも険しい表情で杖を構えながらミロクを睨んでいる。
更に周囲では、シルビやブロズにピノピノさんまで武器や椅子を持って構えていた。
ついでにゴブリンキングは正座をして静観の構えをとっていた。
「み、みんな……」
ハァハァと荒くなった息を整えながら、皆の友情に感動を禁じ得なかった。
ああ……なんだか今まで一番勇者達の友情イベント的な状況だよ……。
そんな感動を覚えていると、ハンナがクワッと目を見開き、ミロクへと叫んだ。
『あなた!カオリにそんな気色悪い声を上げさせて何が狙いなんですか!?』
「おい」
感動が一気に吹き飛んだ。
気色悪い声ってなんだ、気色悪いって?
「そうよ!そんな気味の悪い奇声を叫ばせて何をさせる気?悪魔召喚か?!」
「ちょっと待て」
「それともー魔物でも呼び寄せる気ー」
「だから」
「さては私達の精神を蝕む気ね!?」
「待てコラ」
「さ、寒気が止まらないですぅ……」
「いやさ」
「ナンテ耳障りな叫びカ…。コレホドの不快音は聞イタことがナイぞ……」
「ゴブリンキング。てめぇは殺す」
愕然と絶望したようなゴブリンキングにメンチを切っていると、ミロクが私を優しく包むように背後から抱き締めてきた。
「危害だなんて……そのような事は致しませんとも。何せカオリ様は、私が仕えるべき勇者様なのですから……」
ザワリ。
ハンナ達に緊張が走った。
空気が重くなった部屋の中、暫しの沈黙が訪れる。
そんな緊張を打ち破ったのはハンナであった。
ハンナは厳しい顔でミロクを見据えた。
『……あなた。何故カオリが勇者だと知っているのですか?』
それは皆が抱く同じ疑問であった。
私が勇者だと知っているのは極一部限りの人間であり、召喚した王様達や私が知り合った信頼できる者などの顔見知りばかりで、他の者は知らないはずである。
が、それも極最近までであり、とあることから私が勇者だという情報が漏れていた。
そう……アベッカという魔王軍のスパイによって。
つまり、いまのところ私が知るもの以外で私が勇者だと知るものは、自然と魔王軍関係者に限られてしまうというのがハンナ達の認識であった。
故にハンナ達はミロクの発言から、彼女が魔王軍関係なのではと警戒していた。
だが、私は鑑定により、彼女が魔王軍関係者ではないことは分かっていた。
彼女が私を勇者だと分かったのは恐らくと言うか間違いなく………。
と、その時、バタンと大きな音を立てて扉が開かれた。
「何事ぞ!何やら色気の欠片もない酷い喘ぎ声が響き渡っていたが?!」
『どうしたの?!部屋から酷く不快な鳴き声が聞こえたけど!?』
「ザッドハークも※絶コロよ」
※絶対ぶっ殺すの略。
部屋に入ってきたのは潰して畑の肥やしにした筈のザッドハークと、シーツのようにペラペラとなっているゴアであった。
「てか馬鹿な?!あれだけ念入りに捻り潰した筈なのに!?」
私は戦慄した。
あれだけやって潰した筈のザッドハークが何事もなかったかのように平然としている。
こいつの回復力はどれだけなんだ?!
「フハハハハ!この我がペースト状にされて畑に撒かれた程度でどうにかなると思うたか!甘い、蜜菓子より甘いぞカオリ!」
「グヌヌヌ……」
「いや、大概はそれでどうにかなるでしょ?!なに鬼畜な所業をしてんのよカオリ?!」
高笑いするザッドハークを歯軋りしながら睨み付ける私に向かってゴルデが叫んだ。
「フハハハハ。さて、我の復活は置いておき……」
「いや、置けないんだけど?」
私のツッコミを無視し、ザッドハークの視線がミロクへと向けられ、その瞳がスッと細まった。
「フム……そこな女。汝……我らと同じ『勇士』であるな?」
ザワリ。
ザッドハークの言葉にハンナ達がざわめく。
そう。ザッドハークの言う通り、彼女を鑑定したときにあの称号があったのだ。
勇者の仲間たる『勇士』の称号が。
理由は知らないが、恐らくこの勇士の称号により、私が勇者だと分かったのだろう。
沈黙が支配する部屋の中、おもむろにミロクが手に付けていた手甲を外した。
そして、露になった手の甲には、光輝く杖の紋章が浮かび上がっていた。
「左様でございます。私はこの度、僭越ながら勇者様に仕える『慈愛の勇士』として選ばれました者。名はミロク=ラーマと申します。職業は神官をしております。以後お見知りおきを……」
そう言って恭しく頭を下げるミロク。
その仕草は何とも上品で優雅であった。
「フム……やはりな。汝から我と同じ力の波動を感じたので勇士ではないかと思うたが、当たりであったか」
「フフ……ご明察です。かくゆう貴方様も勇士でございますね?」
「左様。我は『忠義』の勇士ザッドハーク。そしてこの半乾きの生物が『知謀』の勇士よ」
『半乾きって何よ?しっかり紹介しなさい。私はゴア=マユル。気軽にゴア姐さんかま○ゆって呼んでね?』
「ザッドハーク様にま○ゆ様……。承知しました。コンゴトモヨロシク……」
などと勇士達が互いに自己紹介をはじめたのを、私達は唖然と眺めていた。
『カ、カオリ。彼女は本当に勇士なんですか?』
ハンナが私の腕を引き寄せ、ボソボソと耳打ちしてきた。
「う、うん……。鑑定結果にも称号に勇士ってあった……」
『なるほど。鑑定の結果ならば本当なんでしょう。でも、それなら何で捨てようなどと?』
「それは……」
『それに、確か勇士って勇者……カオリが選んだ人物がなるものでは?なぜ見ず知らずの彼女が勇士に?』
それは私も思った。
召喚された際、王様(笑)にも同じ説明をされた。
が、ザッドハークやゴアなど、これまで選んだ覚えのない者が既に勇士となってるから然したる驚きはない。
私には選択肢があるようでないのである。
「それは我が説明しよゴフッ」
突然ズイッと迫ってきたザッドハーク。
ビックリして、思わず裏拳をザッドハークの顎へと放ってしまった。
「あっ。惜しい。鼻に当たれば砕いていたのに」
「ぞごば謝罪がざぎではないのが?」
「謝罪する必要があると?」
「ないな。では説明する」
殴られる理由に思い至る自覚と、素早い判断の切り替えはザッドハークの長所であろう。
短所が多過ぎて埋もれてはいるが。
「確かに勇士を選ぶ権利は勇者たるカオリにある」
「選ばせてもらった覚えはないけど」
「だが、何事にも例外がある」
「私の場合は例外だらけなんだけど」
「そう。この世界にとある称号を持ちし者が生まれた時、その者は勇者と共に戦う勇士として女神により選ばれるのだ。そして、その称号とは…世界の癒し手にして慈母の象徴……『聖女』である」
途端、ハンナ達が揃ってバッとミロクへと顔を向けた。
その表情は信じられないものでも見るかのようなもので、誰もが先程とは違う意味で唖然としているようだった。
「てことは……ま、まさか……」
『そんな……』
「はい。ザッドハーク様の仰る通り、私は今代の性女であり、女神様よりの神託で勇士という崇高なる大任をお受け致しました」
シンと静まり返る室内。
私以外の皆が驚愕に目を見開いていた。
「あ、あのどうしたの、皆?そんな唖然として?」
驚きを露にするハンナ達。
というか、その瞳にはどこか畏敬の念が溢れている。
そんな驚くハンナ達に恐る恐ると尋ねると、ゴルデとハンナがクワッと見開いた目を私に向けてきた。
「どうした?じゃないわよ?!聖女よ、聖女!世界の守り手たる勇者の次に凄い存在の聖女よ!?驚かない方が不思議よ?!」
「いや、私がその一番凄い勇者なんだけど」
『はい。聖女と言えばあらゆる奇跡を行使できるとされる聖なる存在。勇者が神に代わる執行者ならば、聖女は正に神の代理人。神に代わって人々を癒す奇跡の具現です』
「だから私がその神に代わる執行者」
「はあ……ありがたやありがたや……偉大なる勇者の次に尊き存在に会えるなんて……。聖女様が慈愛の勇士というならば納得です」
「で、ですね!」
「だから私がその偉大な勇者」
やたらミロクを崇めるハンナ達。
話しからして勇者の方がレアで偉大な筈だが、誰も私を崇める様子はない。
ブロズとピノピノさんに至っては拝んでさえいる。
ちょっとどういうこと?
「皆様。そのように崇めないでください。私は確かに今代の性女として選ばれました。が、まだ修行不足な未熟者。そのように持ち上げられる程に大した者ではございません」
遠慮がちにそう言うミロクに、皆がホウと感嘆しなようにため息をついた。
「フム……この神秘的な雰囲気に傲ることのない態度。まさに聖女に相応しき者よ。これほどの者ならば、我は喜んで仲間として迎え入れようぞ」
ザッドハークの言葉に皆がウンウンと同意を示すなか、私はスッと手を上げた。
「ムッ?如何したカオリ?」
「いや、あのさ。さっきから誤解があると思うんだよね……?」
「誤解?どういうことよカオリ?」
不思議そうな顔で私を見つめるハンナ達。
そんなハンナ達に私は鑑定で見ることで知り得た事実を打ち明けることにした。
「あの……ね。誤解と言うか語弊と言うか……みんなは多分、凄い思い違いをしてるの……」
「だから何よ?」
「いや、あのさ……その人、聖女じゃなくて性女」
そう言うと、意味が分からなかったのか、皆がキョトンとした表情となった。
『いや、あの……ですから聖女ですよね?ならば合っているのでは?』
「ううん。違うの。発音は同じだけど、言葉というか文字の意味が違うのよ……」
「文字って……」
「聖女の聖がHolyな意味の聖じゃなく、sexualな意味の性なの」
無駄に良い発音でそう説明すると、皆が一様に考え込んだ。
最初は意味が分からなかったようだが、だんだんと私が言った意味が理解できたようで、皆が困惑に満ちた表情となった。
『…………カオリ。つまり、彼女は聖女ではなく性女であると……?』
ハンナの回答に頷く。
「えっと……神聖の聖じゃなく、性交とかの性という……?」
真っ赤な顔で述べてきたゴルデの回答に頷く。
「ちなみに、『慈愛の指先』の勇士の他に、『極致の痴女』なる怪しげな称号もあるわ」
「「「『パチもんじゃねぇぇぇか?!』」」」
「スキルもステータスもほとんどが自主規制だし」
「「「『駄目なやつじゃん?!』」」」
ようやく合点がいったらしい。
ザッドハークを除く皆が驚愕の叫びを上げた。
「フム……なるほど。性女に痴女と。もっと詳しゴルハァ?!」
余計なとこに食い付いたザッドハークの脛を砕いておく。
『いや、性女って……なにそれ?!なんですかカオリ?!』
「いや、そんな知らないよ……鑑定結果に書いてあるだけでなんのことやら……」
『そんなパチもんが勇士って……』
「いや、事実、勇士の称号が……」
『なんですかそれ?!』
賢者のハンナですら性女がなんなのか知らないようだ。ハンナは私の肩を掴みながらガクガクと揺らしてくる。
いや、そんなんしても知らないし……。
称号と文字からして、恐らく如何わしい意味のものだと思うけど……。
ガクガクと揺らされながら、此方をジッと無表情で見ているミロクを再び鑑定してみる。
そして何となく、称号にある性女という文字をジッと見ていると……。
【鑑定詳細結果を表示しますか?】
と出た。
「えっ?」
か、鑑定の詳細なんか見れるの?!はじめて知ったわ!見るわ見る!!
鑑定の隠された効果に驚きつつ詳細を見たいと念じた。
すると、目の前に詳細が表示された。
【鑑定詳細結果】
清らかなる聖なる乙女とは対極の存在。聖女の変異種。女神のムラムラが溜まりに溜まった時、突然変異的に生まれる希少な存在である。あらゆる性に関する知識や技量に精通し、年中発情しているし、あらゆる感覚を快感へと変換できる。一応は神聖なる魔法も使えるが、邪なことによく使用している。主に避妊や精力回復など。
尚、同性もイケる口。というか好物。注意。
「ブフッ?!」
『カオリ?!』
突然吹き出した私にハンナが驚きの声を上げる。
だが、内心私の方がその十倍は驚いていた。
聖女の変異種?
女神のムラムラってなんだよ?溜まってんのかよ女神様?!なんてとんでもないやつ産み出してんだよ?!
そして何気に私の貞操の危機到来!
『カオリ。一体どうしたんです?何を見たのですか?』
隣で心配そうにするハンナに鑑定の結果を教えようとするが、頭が困惑して上手く言葉が紡げない。
「いや……あの……ヤバい……この人、女神のムラムラの化身……」
『何を言ってるんですか??』
私も何言ってんだと思う。
「ホウ……つまり女神の欲求が溜まりに溜まった末の力……仮に言うなら『ムラ力』による影響で誕生した聖女の亜種であり、ムラ力の権化に相応しき性知識と技量に長けた存在であると?」
いつも通り復活したザッドハークがまるで鑑定詳細でも読んだかのような説明をしてきた。
ただムラ力ってなんだよ?
『は、はあ?何を言って……そんなのある訳……』
「マジそれ」
『当たってるんですか?!』
肯定する私を、ハンナが信じられないといった表情で見てくるが、これが残念なことに当たってるんだよね……。
ザッドハークの性に関する読解力は凄いようだ。
誉めないし誉める要素がないが。
「左様です。私は性女。自分でもよく分かりませんが、なんか精力の強い女です」
「十分に分かっていらっしゃるかと」
ミロクもミロクでやたらでかい胸をグイッと強調しながら肯定した。
糞が。モゲロ。
「フム……性女か。どれミロクとやら。汝の性女の力とやら、我がためしてくれアッフゥゥ」
「ややこしくなるから黙ってろカス」
隙あらば余計なことをするザッドハークの股関を蹴り上げて黙らせた。
「これは……流石は勇者様。なんの躊躇もなく仲間の股関を潰すとは……。ああ……これから私はどうなってしまうんでしょうか……」
「なんもしないよ?!」
何故か背筋をゾクゾクと震わせ、紅潮した頬を両手で抑えながら、恍惚とした表情で私を見つめるミロク。
なんか知らんが琴線に触れてしまったらしい。
明らかに何かいやらしい想像をしてやがる。
ミロク……ヤバい。
本ぅぅぅぅぅう当にヤバい!
なんか唐突にまた変な奴が仲間入りしてきやがったんだけど……?
これ、本当に仲間入りさせなきゃ駄目?
女神だかも何考えてんだよ?
丁重にクーリングオフしたいんですが?
そんなことを思っていると、不意に腹部に違和感が……。
ハッと振り返れば、いつの間にかミロクに背後を取られていた。
嘘だろ?!まったく動きが見えなかったぞ?!
そして何故か私に密着し、腹部に手を回してサワサワと指先で撫でてきた。
「ヒウッ?!」
「フフフ……勇者様は本当に敏感なんですわね」
腹部を撫で回していたミロクの手は徐々に上へと昇っていき、やがては私の胸へと到達した。
「ちょ……あふっ……そこ胸……」
そして、胸へと到達したその指先はグルグルと円を描きながら、徐々に胸の外側から内側へと移動していく。
その動きに戸惑いと恥じらいと僅かな快感を感じていると、ミロクが私の耳元へと唇を寄せてきた。
「それでは勇者様……コンゴトモヨロシク……」
そう言うと同時に耳元に吐息を吹き掛け、指先で私の胸の先端を軽くつねってきた。
「ンホウウウウウウ?!?!」
なんとも言えぬ痺れるような絶頂がビリビリと私の体を襲った。
そんな絶頂と快感に身悶えしながら、私は思った。
本当にとんでもない奴が来やがった……と。
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