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6話 勇士候補達………?

「こちらの者達が我々が自信をもって送り出せる、勇士に相応しき者達です。それでは、カオリ様から見て右側の者から紹介致します」


 王子様は五人の前に進み出て、そこに並ぶ勇士候補の人達一人一人の紹介を始めた。



「まず始めに。我が国の王国騎士団より選ばれた者です。新鋭ですが、その剣の腕前は既に騎士団長に継ぐとされる程の一流の腕前を持つ若き騎士。シュナイゼルです」


「どーも初めまして勇者様!会えて光栄だぜ!」


 最初に紹介されたのは、短い茶髪に勝ち気な顔をした剣士だった。多分、年は私と同じか少し上くらい。鍛え抜かれたであろうガッシリとした体格をしており、重そうな鎧を難なく着ている。顔付きも中々男前であり野性的で、将来は凄く期待できる。腰には立派な造りの剣があり、柄を見る限りでは中々に使い込まれているようだ。


 剣士か……旅の仲間としてはスタンダードだけど、頼りになる存在だ。前衛として戦ってくれるだろうし、剣を教えてもらえるかもしれない。


 しかも、中々のイケメン。一考の余地ありね。


「次は隣国にある、かつての勇士の1人。『知謀の勇士』を初めとした数々の優秀な魔術師を送り出し続ける魔法学院の名門。アトワーゼ魔法学院を僅か12歳にして主席で卒業した我が国きっての天才魔術師。アリスです」


「…………どうも」


 次に紹介されたのは私よりも背の低い可愛いらしい少女だった。ただ人見知りなのか、神経質そうなジト目をしているのが特徴だ。髪は水のような水色で、髪を後ろに纏めて三つ編みにしている。服装はこれぞ魔法使いといった黒いローブと帽子を被っている。


 わぁ!魔女っ子だ!本物の魔女っ子だよ!!コスプレじゃなくて本物だよ!!やっぱ異世界といったら魔法使いは欠かせないよね!しかも、12歳で主席卒業って凄いんじゃないの?!頼りになりそう!仲間になれば、魔法とか教えてもらえるのかな?


 それに、こんな可愛い妹みたいな子との旅も悪くないかも?こ、これも一考の余地ありだね………。


「それでは次は、この世界の国教である女神様を崇める『ケストミリア教』の教会より派遣された若き神官にして治療魔法のエキスパート。クルク神官です」


「勇者様に会えたことを女神様に感謝致します」


 次に紹介されたのは青い服に身を包んだ神官さんだった。長い金髪に青く澄んだ瞳で、丸い眼鏡をかけている。物静かで優しげな雰囲気の顔付きに、細身で高い身長。王子様に引けを取らない高レベルのイケメンさんがそこにいた。


 う、うわぁ?!イケメンだ?王子様と同じくらいのイケメンだぁ!!系統的には王子様とは違うけど!物静かなイケメン理系生徒会長みたいな?しかも、治療魔法の使い手?怪我した時とか最高じゃん!!確保でしょ?これ確保しかないでしょ?!


「では四人目ですが、こちらは世界中に存在する冒険者達が所属する組織。通称、冒険者ギルドより選ばれた、若き天才狩人にして斥候職のプロ。ミルケです」


「うにゃー!勇者さまに会えるだなんて、皆に自慢できるニャー!!」


 四人目に紹介されたのは何と!何と!獣人の少女だった!!赤いショートの髪型に、健康的にやけた肌が所々露出した身軽な軽装をしているのだが、その頭やお尻からは特徴的な猫の耳や尻尾がでている。腕や足も、肘から先がフサフサの毛で覆われた猫の手になっている!


 きたよファンタジー種族!!異世界に来て魔法を見た時以上の衝撃だよ!

 リアル猫耳少女だよ!!ヤバいよ!これはヤバい!そっち系じゃなかったけど、リアルに見たらハマっちゃうよ!メチャクチャに耳をモフモフしたいぃぃ!!


 うわぁぁ?!ここまで四人を紹介されたけど、誰もかれもが仲間になってほしいぃぃぃ!!能力的にしろキャラ的にも欲しい人材ばかりだぁぁ!


「それでは最後の五人目を紹介します」


 ハッ?!そ、そうだ!まだ五人目がいるんだ!!ここまで野性的なイケメンにジト目魔女っ子、知性系イケメンに猫耳少女と続いて、次は何ですか?!エルフですか?エルフを希望で!!エルフのイケメン男子を!!


「暗黒殲滅騎士のザッドハーク殿です」


「コォォ……貴様が勇者か………」


 


 そこには異形がいた。


 


 身長は3メートル近く、全身に黒く禍々しい鎧を纏っている。顔には黒い角が生えた銀色の骸骨のヘルムを被っており、その素顔を伺い知ることはできない。ただ、ヘルムの眼窩の奥には青白い炎が漂っていて、唯一それが眼であることは理解できた。


 装備は右手には私よりも巨大で最早『鉄塊』と言った方が良いような黒く錆びた大剣を持っていて、左手には骸骨のレリーフが装飾された巨大な黒い大盾を持っている。


 そんな全身真っ黒の骸骨騎士は、全身からこれまた真っ黒な障気(オーラ)を放ちながら、当然のようにそこに佇んでいた。


 


 

「……………………」


「以上の5名が勇士として相応しい者として紹介できる者達です。どうです?いかがでしょうか?」


「いや、何か1人だけ異物が紛れ込んでませんか?」


 うん。一回落ち着いて並んだ者達を見るけど、確実に異物がいる。もう、隠す気がない程の異物が。


 言うなれば、羊の群れの中に悪魔がいるような。


「おや?カオリ様のお気に召しませんでしたか?獣人は苦手だったでしょうか?」


「にゃ?!た、確かにこの中でアタシだけが人間じゃにゃいけど、精一杯頑張るつもりニャー!!それとも、猫耳が駄目だったかニャー?!」


「いやアンタじゃないし、そこじゃない。そんな耳とかの些細な違いじゃなく、もっと全面的というか………全身的というか………」


「も、もしかして私………ですか?確かにこの中では小さいし、子供っぽいですけど………」


「魔女っ子。君じゃない。もっとこう………勇士側(こっちサイド)魔王側(むこうサイド)が入り込んでいるような………」


「も、もしや………私が協会側からの回し者とお疑いですか?た、確かに大司教の権限で無理矢理に候補入りしましたが………まさか、それを見抜いて?!」


「そ、それを言ったら俺だって……。勇者様と共に戦いたいから団長に無理言って、この場に………」


「なんで真っ先に自分を疑うの?そしてどんどん自滅するの?脇見ろよ脇。明らかに毛色が違うのいるじゃん」


 何で誰もそいつ(ザッドハーク)を疑わないの?明らかにおかしいでしょ、そいつ?完全に悪サイドの外見だよね?


 そんで奴は奴で、何で自信満々でそこにいるの?一番自分を疑うべき奴が何で余裕で佇んでいるの?


「どうされましたカオリ様?何か問題でも?」


「あるかないかで言ったら凄いある」


 王子様も何で不思議そうにキョトンとしてるの?こっちがキョトンとしたいよ。


 そこの骸骨騎士は何?何で疑問に思わない?てか、身長からして人間じゃないでしょ?約3メートル近くもの巨大な人間見たことないよ?完全に魔王側の差し金だよね?


 というか、こいつが魔王って言われても納得する覇気を纏っているんですけど?禍々しいオーラが立ち上ってんすけど。


 そもそも、他が騎士やら魔法使いやら神官やら斥候といった基本職が揃う中、暗黒殲滅騎士って何?ジョブが斜め上にぶっ飛んでるんだけど?


 暗黒の殲滅する騎士って何?


 暗黒だけで不穏なのに、殲滅が付いてより一層不穏さと殺伐さが増してるよ。何?殲滅するの?殲滅する騎士なの?なんなのその職?どうやってなるの?


「はて?確かにシュナイゼルとクルク神官は多少コネを使ったようですが、実積等は申し分ありません。他の者達も各方面からの折り紙付きです」


「いや……あの……実積とかじゃなく、その……端の人?ザッドハーク……さん?が明らかにおかしいのでは?」


 もうハッキリと言ってやった。


 なんか遠回しに言っても聞いてくれないので、直で。まるで、皆してザッドハークについての言及を避けているかのように不自然だし。


 なんだ?皆して弱みでも握られてんの?脅迫されてんの?


 そう指摘したら、王子様がまるで悪事がバレたかのようにギョとした表情となった。


 この顔……やはり問題に気づいていて見ない振りをしていたのですかい?


「やれやれ……バレてしまいましたか。流石は勇者であるカオリ様です。その目は誤魔化せません」


「いや、寧ろ誤魔化せると思ってたんですか?」


 王子様は刑事ドラマで全ての悪事がバレた犯人のように、不敵な笑みを浮かべる。


 なんぞ訳があって、こんな異形を紛れ混ませたんだろうが、紛れさせるならしっかりと隠すべきだろう?


 頭隠して尻隠さずどころか、全身を隠してないよ。


 かくれんぼをしてるのに隠れずに鬼を迎え討つ構えだよ。


「フフフ……流石はカオリ様です。実はそう……そのザッドハーク殿。この中では頭1つ飛び抜けた実力の持ち主なのです」


「ちがう。おかしいってのはそういうことじゃない」


 なんだよ!話が噛み合わないよ!私が言いたいのはそう言うことじゃないのに!


 何で骨董品の中から国宝を見つけましたね?みたいな話になってんの?国宝じゃないよ?爆弾だよ!私が見つけたのはとんでもない爆弾なんだけど?


 内心でそうツッこんでいる間にも、王子様は私の心情を無視して話を続けていた。


「このザッドハーク殿は我が国でも最強と名高い暗黒殲滅騎士でして、最も勇士に相応しいのではと噂されていたのです」


「名高い暗黒殲滅騎士って何ですか?」


 名高い騎士なら分かるが、名高い暗黒殲滅騎士については同意も糞もない。全く共感すらできない。


 おい、暗黒殲滅騎士よ。そこで自慢気に胸を張るな。障気を漏らすな。


「剣の腕は一流で、ドドンボを一刀のもとで両断にすることなど朝飯前ですし、単身でドドンボの群れを殲滅する力と技量をもっています」


「まず、ドドンボを知らないから凄さが伝わらない」


 王子様が骸骨騎士の凄さを伝えようとしてくるが全く伝わらない。ドドンボって何よ?動物?動物なの?


「あぁ、ドドンボか。あいつらは皮膚が硬てぇから普通は一太刀で両断なんか中々できないんだがな……」


「………魔法でも、難しい。あいつら……魔法抵抗の力が……あるから」


「一匹でも厄介なのに、ましてや群れなど……考えただけで寒気がします……」


「ニャー。うちら冒険者の間では一匹をパーティーメンバーみんなで囲んで戦うのが基本ニャー。だから、単身で戦えるザッドハーク様は凄いニャー」


 な、なんだ?勇士候補の方々が口々にドドンボの厄介さを話出したぞ?そんなに強い生物なの?間抜けな名前なのに?なんなんだドドンボ?


 更にはついでとばかりにザッドハークの凄さまで……。


 止めて。本当に止めて。この流れだと私、ザッドハークと旅立つことになるから。


 骸骨騎士と二人旅なんて寒気しかしないから。


「さて………カオリ様がザッドハーク殿の実力に気付いたのは流石であり、気になるのは仕方のないことと存じます」


「その言い方だと、私がメチャクチャザッドハークを仲間に欲しいみたいですよね?」


「しかし、他の候補達も譲れぬ強い思いをもってこの場にきております」


「あの、話聞いてます?」


「ですので、ここは勇士の選別に公平を期すためと、カオリ様との相性をみるために、カオリ様から皆に質問をしてもらいます。そうすることで互いに息があうかどうか等が判断できると思います。よろしいですね、カオリ様?ザッドハーク殿?」


「いや、話聞いて下さいよ?」


「無論」


 無論じゃねぇよ?何であんたが当然のように王子に返答してんの?そもそも王子様は何で骸骨騎士(こいつ)にまで同意を求めてんのよ?意味が分からん。


 どういう関係なのよアンタら?


 尚も不信感募らせる私なのだが、王子様は気にした様子もなく、私へと微笑みかけてくる。


「さぁ、カオリ様。この者らに何でも質問をなさって見てください。そうすることで、見た目からは想像できない情報や性格が分かるかもしれませんので」


「えっ?まぁ……ハァ……」


 いつもの優しげな雰囲気で話しかけてきた王子様に、つい返事をしてしまう。


 いや………質問って言われても。


 しかし、大事か?質問?見た目からは得られない情報があるかもしれない……。


 見た目からは………う、うん?そうなのかな?そう…だよね。確かにそうだよ。見た目からは判断できない情報ってあるよね?怖そうに見えて優しかったり、その逆だったり………。


 うん。質問とか大事……かな。


 あの骸骨騎士だって私が外見で判断しているだけで、中身は案外普通かもしれないしね?寧ろ、周りがこんだけ普通に接してるんだから結構良い人なのかもしれない………。


 そもそも、ここは私が住んでいたのとは違う異世界なんだ。あんな感じの人が結構いるかもしれない。私の常識で決めつけるのはいけないよね!きっと!


 いくら見た目が魔王でも、中身は案外と普通の人かもしれないからね。


 そうと決まれば色々と質問をしてみてみよう!


 意外とギャップがある可愛らしい性格だったり……。


 


「さぁ……掛かってくるが良い。世界の命運を担いし勇者よ。この我が、貴様のどのような問いにも答えてしんぜよう。然れど覚悟せよ?下らぬ問いには、その命をもって償ってもらうこととなる故にな。フハハハハ!!」


 


 


「この人、やっぱ魔王じゃね?」

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