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25話 大樹の墓場の遺跡 その1

「よお、嬢ちゃん!ザッドハーク!元気してるかい?」


 ある朝、ギルドに併設された酒場で朝食を食べていると、ジャンクさんが機嫌もよく声をかけてきた。


「フム。随分と機嫌が良いな。何か良いことでもあったか?幼子(おさなご)とぶつかったとか?」


 ザッドハークがバフン豆の茶を飲みながら予想を口にするが、私は図鑑みたいな厚さのベーコンをかじりながら否定した。


「そんなんじゃ、ジャンクさんの欲求は満たされないでしょう。きっと幼女のパンツを覗いたのよ」


「成る程」


「成る程………じゃねぇよ!?なんで俺の機嫌が良いだけで、そんな評価がされんだよ?!お前ら俺をなんだと思ってんだよ?!」


「「幼女性的趣味思考変態者ロリコン」」


「オッケー。お前らが息ピッタリで、どう考えているかは理解できた。ちょっと裏で泣いてくるわ」


 

 ――数十分後。


 

「泣き終わった?」


 二枚目のベーコンに取り掛かったところで、ジャンクさんが目元を少しだけ赤らめて戻ってきた。


「止めもせず、慰めもしないで本当に泣かせるとは思わなかったわ」


「汝が泣いて来ると言ったのであろう?」


「そこは止めろよ。一応は仲間だろ?仲間という関係なら、少しは気遣えよ」


「大体私達の関係って、いつもこんな感じだけど?」


 寧ろ、私はもっと酷い目にあってるし。


「オッケー。嬢ちゃん。俺が悪かった。マジですまねぇ。確かにそうだったわ」


 ジャンクさんも色々と思い至ったのか、ザッドハークと私を交互に見た後、納得したように向かいに座った。


「それで?モゴフっ………幼女関係じゃないなら、ガブリゥ……何が理由でそんなに機嫌がいいの?」


 二枚目のベーコンを食べ終え、特大ウインナーをかじりながら理由を聞いた。


 すると、ジャンクさんはどこか遠い目をしながら私を見ていた。


「なんだか………嬢ちゃんも随分と逞しくなったよな………」


「鍛えられましたし、あんだけ濃い日々を過ごせば当然です」


 ここ数日の濃くて忘れられないような日々を過ごせば、こうもなるだろう。


 というより、適応せざるを得ないでしょう。


 討伐とか、事件とか、エロとか、討伐とか、事件とか。


 すると、そんな濃い日々を思い出して辟易する私を尻目に、ザッドハークがウンウンと頷いていた。


「ウム。我の教育の賜物よ」


「反面教師………というなら納得するわよ?」


「仲いいなぁ…………」


 私とザッドハークのやり取りを、ジャンクさんは微笑ましそうに眺めていた。


 解せぬ。


「して、本題を申してみよ。下らん話ではあるまいな?」


 ザッドハークがお茶を飲みながら言うと、ジャンクさんは辺りをキョロキョロと見回してから、小声で本題を切り出してきた。


「あぁ、じゃあ本題だが………お前らは遺跡とか、お宝とかに興味あるか?」


 


 


 




「「詳しく」」


 


 ◇◇◇◇◇◇


 


 そこからジャンクさんの話を纏めるとこうだ。


 昨日、ジャンクさんがいつも通り、東の森で簡単な採取と討伐の依頼をこなしていたらしい。だけど、その日は依頼のギロギロウルフが中々見付からず、いつもとは違う場所を探索していた。


 探しているうちに、大樹の墓場と呼ばれる、古い枯れた巨木が立ち並ぶ、普段は余り人が立ち入らない場所の近くについたそうだ。


 そこまで来て、戻ろうと来た道を引き返そうとした時、崖から足を滑らせて………。


「偶々落ちた先で、枯れ木と枯れ木の間にあった、古い遺跡の入口を見つけた………ということ?」


 私が確認をすると、ジャンクさんは興奮したように頷いた。


「あぁ。あそこに遺跡があるなんて話は聞いたことがないし、ギルドの記録を調べても出てこなかった。となれば、俺が第一発見者なのは間違いねぇ。ということは、手付かずのお宝があるかもしれねぇぞ」


 テンション高めに語るジャンクさん。


 確かに遺跡の第一発見なんて興奮するし、お宝があるかもしれないとなれば尚更だろう。


 発見者じゃない私でも、聞いているだけでドキドキするんだからね。


 それに冒険者にとって、遺跡探索とお宝発掘は夢みたいなものだからね。


「フム。話は理解した。つまるところ、遺跡を探索はしたいが単独(ソロ)で、独り身で、親しい友人もいない寂しい身の上の自分だけでは探索は不可能。故に、我らの手を借りたいと?」


「そういうことだ。ちょっと、もう一回泣いてきていいか?」


「ハイハイ、ジャンクサンハイイコデシュネー?ナカナイデネー?」


「なぁ、半端な慰めならいらないぜ?もう、いいや。で?行くのか?行かないのか?」


 半ば諦めたようなジャンクさんが、行くのかどうかと聞いてきた。


 私とザッドハークは、一度目を見合わせてから答えた。


 


 


 

「「行くに決まっている」」


 


 


 今日準備を整え、明日出発することになった。


 ◇◇◇◇◇◇


 


 翌日の早朝………太陽が顔を出し始める前の早い時間から、私達一行は東の森へと向けて出発した。


 そして、昼前くらいには目的の遺跡があるという、大樹の墓場と呼ばれる場所に無事着くことができた。


「ここが大樹の墓場…………な、なんか不気味な雰囲気の場所ね………」


 私は目の前に広がる不気味な森を見て、ブルッと身震いした。


 東の森には頻繁に来ているが、こんな場所があるとは知らなかった。


 森を奥へ奥へと進んでいき、更に崖を下って行った場所にそこはあった。


 古く、白色に枯れた巨木が密集した地帯で、ここだけ森の中から切り離されたような光景をしていた。


 石灰のように白く太い枯れた木々は、互いに重なり合うように生えていたり、折り重なるように倒れていて、侵入者を拒むような雰囲気を醸し出していた。


 更には白い木々に対して全体は奇妙な程に薄暗く、そこが不気味さに拍車をかけている。


 何とも不気味な場所で、墓場と呼ばれる理由も納得できる。


「ここは森のはじまりの場所でもあるらしいが、今となっちゃ寿命を終えて石化した木々が並ぶだけの場所になっちまった。草も生えねぇ場所だから、生物も住み着いてねぇんだよ」


 私の隣でジャンクさんが森を見ながら説明をしてくれた。


 石灰っぽい色だと思ったけど、あれは本当に石化していたらしい。


 しかし、緑溢れる森の中で緑の無く、生物が住まない地があるというのは本当に異様だな。


「本当に木の墓場ってかんじですね」


「だろ?こんな不気味な場所だから、普段から人が入らないんだ。一昨日も、あっちの崖の方で落ちなければ入ろうなんて思わなかったしな」


 ジャンクさんは私達がいるところとは逆の崖を指差した。


 そこには結構な高さの崖があった。


 どうやらそこから落ちたらしい。


「あそこから落ちたんですか?よく無事でしたね?」


「ポーションがなけりゃ、ヤバかったぜ………」


 怪我はしたらしい。


 まだ使ったことはないけど、ポーションは結構な怪我でも回復できるらしいからね。


 ジャンクさんもポーションで直る怪我で済んでよかったよ。


 備えあれば憂いなしってね。


 あれ?そういえば、さっきからザッドハークが黙りっぱなしのような気がするけど…………。


 普段だったら、横から余計なことをごちゃごちゃ言ってくる筈なんだけどな?


 そう思って見ると、ザッドハークが難しい顔付きで大樹の墓場を眺めていた。


「どうしたのザッドハーク?妙に難しい顔をしてるけど?」


 そう聞くと、ザッドハークはチラリと横目で私を見てきた。


「ムッ?いや、何。この場所に見覚えがある気がしてな…………しかし、どうにも思い出せぬ。随分と昔の記憶のようでな………」


 何かを思い出そうと、必死に考えていたらしい。


 うーん………ザッドハークが見覚えがある…………。


 …………嫌な予感しかしないな。


 凄く嫌な予感しかしないし、録な目に合わないような気がする。


 だけど、遺跡は見てみたいし……。


「ねぇ、ザッドハーク。思いだしたらで良いから、私に絶対教えてよ?良いね?」


「ウム?了承したが、そんなに急くこと………」


「いいね?」


「わ、わかった…………」


 強めに言い聞かせると、ザッドハークは気圧されたようだが了承してくれた。


 こういう時は、事前に釘を刺しておいた方が効率的だからね。


 これで思いだせば、逐一報告してくれるだろうし、何とか危険を回避できるかもしれない。


 …………か弱い保険だけど。


「おっし!じゃあ行くぜ!俺が先導するから、お前たちは後から付いてこいよ?」


 ジャンクさんはそう言うと、大樹の墓場に向けて歩きだした。


 私達もジャンクさんの後に続いて行く。


 そんな先導するジャンクさんを最近見てて思うんだが、ジャンクさんって基本的に器用だ。


 剣士並みの剣技ができるし、簡単な治療魔法もできる。斥候役もこなし、商人並みの知識もあるとなれば、パーティーにいれば必ず役立つ人材だ。


 そんな有能な人がソロで活動してというのは、何とももったいない。


 パーティーを組めば、大活躍できるはずなのだ。


 私達のパーティーに正式に加入してもらってもいいのだが、私達はいずれ旅立つ身のため、無理に誘う訳にはいかない。


 となれば、ジャンクさんは私達がいなくなったら、再びソロ活動ばかりになるのだろうか…………。


 それもこれも、あの性癖のせいなんだよね………。


「如何したカオリよ?浮かぬ顔をしておるが?」


「いや………。やっぱり、ロリコンっていうのは罪なんだなぁ………って、思ってね」 


「何を言うかと思えば。そんなのは当たり前であろう。我としては、傲慢・怠惰・暴食・強欲・色欲・嫉妬・憤怒の七大罪に続き、幼女趣味を加えるべきと常々考えている程だ」


「うわぁ。そんなに罪深いんだ。確かに、幼女趣味って聞くだけで気持ち悪いし、生理的に受付ないもんね」


「同性からも拒絶される咎故に道理であろう。世界中の幼き娘を持つ親ならば、ゴブリンよりも憎き存在よ」


「確かにー。てか、ロリコンって絶対に父性と性欲を一緒に…………」


「お前ら、せめて俺が聞こえない声で話せよぉぉぉぉぉぉ!!」


 


 


 


 先頭を歩くジャンクさんが、半泣きで魂の慟哭を上げた…………。


 


 


 ◇◇◇◇◇◇


 

「ここが遺跡の入口だ」


 大樹の墓場を奥に暫く行った場所に、それはあった。


 朽ちて石化し、傾いた樹と樹の間。


 まるで木々に覆い隠されるように、石でできた高さ5メートルはある巨大な扉があった。


 丸い目玉のようなものが真ん中に描かれた扉で、まるで私達を睨んでいるようで不気味でたまらない。扉の左右には、朽ちかけた何かの動物を型どった石像があり、雰囲気に更に拍車をかけていた。


 な、なんか、ゲームのダンジョンの入口みたいだなぁ。


「これが見つけた遺跡の入口らしき扉だ。最近、石化した表の木が崩れたことで、現れたみたいだな。なんだか浪漫を感じるたろう?」


 ジャンクさんが扉から少し離れた場所にある倒れた木を指差す。


 確かに、そこには倒れて真新しいような木々が並んでいた。


「成る程ね。でも、浪漫………なのかなぁ?不気味な雰囲気しか感じないけど?」


 目の前の遺跡に対する印象が私とは違うらしい。


 多分、男と女の感性の違いというやつかな?巨大ロボットに、私達女子が何も感じないのと同じような?


 そんな感じだろう。


 ザッドハークはどうなのかと見れば、扉に描かれた目玉みたいな絵?紋章?を見て、首を傾げていた。


「これも見覚えがあるの?」


「ウム。どこかで見たのは確かなのだが…………喉元まではきているのだが、肝心なことが思いだせぬ」


 喉の辺りをトントンと叩きながら考え込むザッドハーク。


 あー………その出そうで出ない気持ちは分かる。思い出せないと、凄くモヤモヤするんだよね………。


 だけど早めに思いだしてくれ。


 ザッドハークの縁ある地って、絶対まともじゃないから。


 ちょっと遠い目で扉を見ていると、ジャンクさんが扉の前へと近づき、コンコンと叩いて調べだした。


「じゃあ、取り敢えず扉を開ける仕掛けか、他の入口をないか調べてみるわ。その間、魔物が近づかないように見張っててくれ」


「仕掛け?扉を押したり引いたりすれば開けられるんじゃないの?」


「馬鹿言え。こんな巨大な扉が手動で開く訳が無いだろう?大概こういうデカイ扉には、開閉用の仕掛けや通用出入口があるもんなんだよ。よしんば手動で開いたとして、どんなデカイ人間だよ」


「ハハハ!確かにそうですね。よく考えればそうですよね。こんな扉が仕掛けなく開けられる訳なんてないし、だとしたら、どんだけデカイ…………」


 と、そこで私とジャンクさんはあることに気づき、とある方向を向いた。


 そこには、身長3メートルはある巨漢のザッドハークがいた。


 奴ならば………この扉を普通に開け閉めができても問題のないサイズだ。


 えっ?まさかとは思うけど、やっぱりザッドハークに関係のある遺跡なのかな?ザッドハークの住みかだったとか?こいつ謎が多いし、自分のことは大阪の飲兵衛並みに話さないし!それに遺跡には見覚えがあるって言っていたし………。


 そう思ってザッドハークを見れば。


「フム。趣味の悪い扉だ。我ならば、骸骨の絵を描き、その下に銃と槍を交差したものを描くな」


 と、扉の批評をしていた。


 うん。違うらしい。


 どうやらザッドハークに直接的に関係のある遺跡ではないらしい。


 内心『そのデザインも趣味が悪いし、海賊の旗みたいじゃね?』とも思ったが、敢えて無視した。


 まぁ、杞憂だったことに胸を撫で下ろし、見張りにつくか。


 ジャンクさんも同じ気持ちだったらしく、扉の調査を再開していた。


 いや、まぁ、まだ心配は終わった訳ではないけどね。


 ザッドハークが見覚えがあるって時点で心配しかないしね。


 そんな事を考え、見張りをしながら暫く待っていると、調査が終わったのかジャンクさんが近付いてきた。


「調べ終わりましたか?」


「あぁ。調べ終わるには終わったんだが……付近には仕掛けも入口もねぇ。あるのは目玉みたいなエンブレムの下にある鍵穴らしき穴だけだ。どうやら、純粋に鍵を使って開ける仕組みらしい」


 ジャンクさんが扉の状況を説明をしてくれた。


 鍵穴……じゃあ、鍵がないと入れないということなのかな?


「鍵がないと………駄目ってことですか?」


「あぁ、そうなる。鍵を無理やり開けようにも、俺は本職の盗賊並みの解錠方法はできねぇ。というか、見たとこ鍵穴に魔法による何らかの措置がされてやがる。多分、正規の鍵じゃねぇと開かねぇ仕組みだ………」


「そんな…………」


 目の前に遺跡があるというのに、ここまで来てそれは結構キツイな。


 まず、扉を開けるには正規の鍵から探さないといけない。だけど、そもそもとして手掛かりもない。


 完全にお手上げ状態だ。


「悔しいが、鍵を探すか正規の盗賊や魔術士を連れて出直すしかねぇな。鍵が見つかるかも、盗賊や魔術士に開けられるかも分からねぇがな………。こんだけの遺跡なら、お宝もたんまりあるんだろうが…………すまねぇな」


 ジャンクさんが気落ちしたように、項垂れながら謝罪してくる。せっかく誘ったのに、無駄足を運ばせたことを謝っているのだろう。


 確かに遺跡に入れないのは残念だ。


 だが、一番残念がっているのはジャンクさん自身だろう。


 ギルドでは、ワクワクと子供のようにはしゃいだ様子で私達を遺跡探検に誘ってくれたのだ。私達よりも冒険者生活は長いし、楽しみや期待もひとしおだっただろう。


 私達なんかよりも、その落胆はかなりのものだと思う。


 後、最近ほぼ毎日マインに餌付けをしているため、物理的にも大量の儲けも必要だっただろうに………。


「いえ、気にしないでください。誘って頂いただけでワクワクしたんで楽しかったですよ。それに遺跡が無理なら、帰りにゴブリンでも狩って帰れば儲けはでますよ」


 私がそう提案すると、ジャンクさんは顔を上げて私を見た。


「すまねぇな。というか、本当に逞しくなったな嬢ちゃん。最初の頃のゴブリン殺して、吐いてたのが嘘みてぇだな………」


「もう、慣れましたし」


 狼の解体なんかもやったし、かなり血肉に対して免疫はできた。


 まだ一月も経っていないが、既に猟師並みの精神力は養えたと思う。


 暫し私を見ていたジャンクさんは、一度息を吐くと、未練を立ちきったような清々しい顔付きとなった。


「よし、切り替えるか!遺跡は逃げる訳じゃねぇしチャンスはまだある!鍵については、追々調べればいい!今日のところはゴブリンを狩って帰って、酒を飲んで寝るか!」


 気持ちをすっかり切り替えた様子のジャンクさん見てホウと感心する。


 最近見ていた気付いたのだけど、冒険者なんて仕事は当たり外れが激しい職業で、全体的に見れば思い通りに事が進まない方が多い。


 だから、こういった時の切り替えは早く、直ぐに次の依頼や冒険へと取り掛かる準備に入れる。


 そういった気持ちの切り替えや、失敗を次に活かせる心構えは、冒険者の美徳だと思う。


 私はそんな冒険者らしい気持ちのジャンクに感心しながらも、ザッドハークに街に帰ることを伝えようと視線を移した。


 すると、ザッドハークが扉の右側にある石像のところで、何かゴソゴソとやっていた。


「?………ザッドハーク?何をやってるの…………?」


 そう聞くや否や、ザッドハークはその石像を台座ごと持ち上げ、横にずらして置いた。


 そして、台座があったところを更にあさりだした。


 その様子を、私とジャンクさんは唖然と見ていた。


「えっ?ちょ………ザッドハーク!?何をやって………」


「ムゥ?あったぞ。鍵だ。これであろう?」


「「……………………はっ?」」


 台座があった辺りをあさっていたザッドハークは、そこから銀色の細長い鍵らしきものを取り出した。


 そして、その鍵らしきものを迷わず扉の穴に差し込んで回した。


 すると…………。


『ゴゴゴゴゴゴゴゴ………ガァン』


 扉が重い音を立てて開いた。


 

「「……………………」」


 

「ウム。やはりな。鍵の紛失を恐れ、像の台座下(ここ)に隠していたか。大概の遺跡の鍵の隠し場所の定番だな。他にも、伝書用の動く石像(ガーゴイル)の口の中や、絨毯の下などもあるがな。どうやら、この遺跡を管理していた者は用心深さが足りぬようだ。こんな隠し場所、バレバレであろうに………」


 鍵の隠し場所から、管理者の用心深さの足りなさを嘆くザッドハークを、私とジャンクさんは唖然と眺めていた。


「フム。まぁ、その警戒心の薄さのお蔭で、中に入ることができるな。では、参ろうか」


 そう言うと、ザッドハークは躊躇いなく遺跡の中へと入っていった……。


 


 


 


 


 


 


 


 

「「留守中の家かぁぁ?!?!」」


 


 

 私とジャンクさんの悶々とした叫びが、大樹の墓場に響き渡った。

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