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15話 装備を得た代償は・・・・

「フム。我ながら中々に良い装備を揃えたものだ。正に勇者に相応しき姿よ」


 満足そうに頷くザッドハークを横目で見ながら、私は鏡に写る自分の姿を見て装備を鑑定する。




『鑑定結果』


 頭:デモンソウルヘルム

 状態:呪い(狂戦士化)

 効果:魔力超上昇・耀きの吐息

 説明:狂気に取り付かれ、悪魔と契約せし名工が造りし悪魔の顔を模した兜。装備せし者の魔力を限界以上に高めるが、反動で装備者の意思を奪う。


 体:反逆の鎧

 状態:呪い(狂戦士化)

 効果:筋力超増強・反逆の時

 説明:かつて、生まれた理由から王に疎んじられ王位を継げず、故に反逆を起こせし王子が着用せし鎧。力を上げる能力を有するが、未だ晴れぬ王子の呪いにより、装備者の判断力を奪う。


 右手:破壊の剣

 状態:呪い(狂戦士化)

 効果:破壊力倍増・破壊の咆哮

 説明:かつて最強の剣を求めし刀匠が、最後に己の魂を捧げることで打った最凶の剣。あらゆるものを破壊する力を有するが、使い手の狂暴性が増す。

 

 左手:嘆きの盾

 状態:呪い(狂戦士化)

 効果:魔術反射・死者との会話

 説明:幾多の戦場を渡り、数多の戦死した亡者の怨念を取り込みし盾。あらゆる魔力を反射し、死者との会話を可能とする力があるが、装備者の精神を汚染し狂化する。


 アクセサリー


 その1:暴君のマント

 状態:呪い(狂戦士化)

 効果:火炎無効・冷気無効

 説明:とある滅びた国の最後の王が纏ったマント。数多くの魔術師の血を含ませた糸で編まれたマントは、あるゆる吹雪や炎を遮断するが、纏った者を怨念で狂化する。


 その2:無慈悲の指輪

 状態:呪い(常時生理痛)

 効果:クリティカル確定

 説明:酷い生理痛に悩まされた女王がはめていた指輪。イライラで使用人を殴っているうちにクリティカル効果が付与された。ただし、生理痛の呪いも付与されている。





「ウム。素晴らしい装備だ」


「コレユウシャチガウ」


 ザッドハークの満足気な言葉に片言で反論する。


「ウヒヒヒヒ。お目が高い」


「オメガヒクイ。メガジメンニメリコンデルワ」


 駄目だぁ!?片言にしか喋れねぇ!?


 チクショォォォォ!?何とんでもねぇ装備させてくれてんじゃぁぁぁ!?


 完全に悪役の見た目だろうが?!勇者からもっともな縁遠い装備だよぉ!?


『大丈夫大丈夫』


『似合う似合う似合う』


 と、おだてられて装備なんかするんじゃなかったぁぁ?!


 ザッドハークを信じた私が馬鹿だったぁぁ!?


 あの血管浮いたような変な刺だらけの鎧を着せられた時点で止めるべきだったぁぁ!?変におだてるから、その気になっちまった過去の私の馬鹿がぁ!!


 なんでこんな、もれなく呪い付きの装備をつけにゃあならんのよぅ?!イジメか?!


 説明もまともなものがないし、全部に曰く付きじゃねぇか!?せめて隠せよ!?日本の不動産屋でも、もっと上手く事故物件の痕跡は消すぞ!!


 しかも、装備全部に狂戦士化の呪い付き!!どんだけ狂戦士化させたいの!!


 そして指輪だけ『常時生理痛』ってなんだ!?拷問か!?いてぇよ!!


 しかも、お約束で外れねぇぇぇぇぇし?!


 段々と頭フワフワしてきたし、体痛いし、イライラするぅぅぅぅ!?指輪ぁぁ!?こいつは特に乙女の天敵だぁぁ!?いっそ、全部狂戦士化で揃えろよぉぉ!!イライラ倍増だわぁぁ!!


 なんか内から凄い破壊衝動が沸き上がるぅぅぅぅぅ!!


「Gaaaaaaaaaaaaa!!」


 これが狂戦士化なのかぁぁ!?


「ノロイ。ソウビ。ヤバイ。ハズセ」


「フム。言語が不自由になっておる」


「装備のせいだよ。早く楽にしてやりな」


 何故か感心したようなザッドハークに、メル婆が呆れたように呟く。


 するとザッドハークは、『ウム』と頷くと、衝動に身を委ねようとしる私へと無造作に近付き、片手で頭を掴んできた。


 えっ?何をする………。





「静まれぇぇぇぇぇい!!!」






 室内に凄まじい怒声が響き、同時に覇気が飛んでくる。


 一瞬あまりの声に意識が飛び掛ける。


 しかし、なんとか耐え凌ぎ、ザッドハークの怒声が止むのを待つ。やがてザッドハークの声は止み、辺りに静寂が訪れた。


「えっと…………何?」


 突然の怒声の意味が分からず、呆けた顔で状況を確認すると、ザッドハークが満足気に腕組みをする。


「フム。押さえ込めたか」


「もっと早くにやってやりな。あんたは知らないかもしれないが、生理痛は女の最大の障害なんだからね」


 何やら訳知り顔で話出すザッドハークとメル婆。


 完全に置いてきぼり状態だ。


「えっ?ちょっとメル婆?ザッドハーク?何がなんなのか説明を………あれ?」


 そういえば体が急に楽になった?頭もスッキリするし、どこも痛くない。


 イライラも収まったし、言語もスラスラだ。


 あれ?呪いが止まった?まだ装備してるのに?


「フム。気付いたようだな。そなたの装備にかけられた狂戦士化の呪いを押さえ込み、その性質を比較的安全なものに変化させたのよ」


「えっ!押さえ込んだ?」


 そんなことができたのザッドハーク!?素直に驚きしかないんだけど?!


「ウヒヒヒヒ。そうじゃよ。その装備類は呪いこそ掛かっていたがどれもこれもが一級品。狂戦士化の呪いがなければ、装備としてはかなりの上物じゃ。それを呪いを押さえ込むことで、普通に装備できるようにしたのじゃ」


 な、成る程………確かに呪いさえなければかなり凄い装備のようだしね。


 見た目はあれだが………。


「でも、それなら装備前に押さえ込んでくれてもよかったんじゃ………。生理痛が本当にきつかったんだけど……」


 そう言うと、メル婆が申し訳なさそうに説明をしてきた。


「それはすまないと思うよ。じゃが、実は呪いという効果は装備者を蝕もうとする特性故か、防具が装備者の体に自然と一致するようになっておるのじゃ。ほれ、装備に違和感を感じるかい?」


「そういえば…………」


 言われてみれば全く違和感がない。まるで最初から自分用に造られたようなフィット感だ。


 体を動かしてみても、全く阻害するような感じがない。


「まぁ、押さえ込めるるものがいるからこそできる、呪いの効果を利用した裏技じゃな。呪いが完全に押さえ込まれたらサイズは変更せんからのぅ。少し苦しむことを折り込み済みで呪いが付いた状態でやらしてもらったんじゃ。すまんのう」


 深々と頭を下げるて謝罪してくるメル婆に、私は焦って頭を上げるようにお願いした。


「いや頭を上げてくださいよ!私のためにやってくれたことですから!確かに早速下着が汚れましたけど……必要な犠牲ですよ!!」


「『無慈悲の指輪』だけは最初から浄化した方がよかったのぅ。下着と……それ系の道具は詫びで後でサービスするわい」


「…………お願いします」


 こればかりは素直に甘えよう。


 乙女の必需品だし。


「でも、ザッドハークさんは、意外な特技を持ってたんですね?驚きましたよ」


 気を取り直し、身に纏った鎧を見ながらザッドハークにそう告げると、ザッドハークは満更でもない様子で頷く。


「ウム。我にかかれば呪われし道具など、赤子を捻る如しよ。如何なる呪具であろうと、我が手にかかれば性質の変化も容易い。とは言え、危険な狂戦士の呪いの性質を変化させ、比較的安全なものにしただけだ。解呪と違い呪いが完全に消えた訳では無い故に扱いには注意せよ」


「へぇー………」


 よく分からないけど凄いのかな?


 呪いを押さえ込んじゃったんだし。


 まぁ、珍しく………本当に珍しくザッドハークが有能性を見せたんだし、素直に誉めてもいいかな?


 てか、これ見た目はどうにかならないかな?中身は呪いも押さえ込んだし……もうちょいまともな………。


 あっ。そういえば、呪いを押さえ込んだことで、性質が変化したって言ってたけど、どう変わったんだろう?


 一応は確認しとくか。


 私は鏡に自分を写しながら呟いた。


「『鑑定』」



 『鑑定結果』


 頭:デモンソウルヘルム

 状態:呪い(女子力減少)

 効果:魔力上昇・耀きの吐息

 説明:狂気に取り付かれ、悪魔と契約せし名工が造りし悪魔の顔を模した兜。装備せし者の魔力を限界以上に高めるが、反動で装備者の意思を奪う


 体:反逆の鎧

 状態:呪い(バスト減少)

 効果:筋力超増強・反逆の時

 説明:かつて、生まれた理由から王に疎んじられ王位を継げず、故に反逆を起こせし王子が着用せし鎧。力を上げる能力を有するが、未だ晴れぬ王子の呪いにより、装備者の判断力を奪う。


 右手:破壊の剣

 状態:呪い(か弱さ減少)

 効果:破壊力倍増・破壊の咆哮

 説明:かつて最強の剣を求めし刀匠が、最後に己の魂を捧げることで打った最凶の剣。あらゆるものを破壊する力を有するが、使い手の狂暴性が増す。

 

 左手:嘆きの盾

 状態:呪い(漢気急上昇)

 効果:魔術反射・死者との会話

 説明:幾多の戦場を渡り、数多の戦死した亡者の怨念を取り込みし盾。あらゆる魔力を反射し、死者との会話を可能とする力があるが、装備者の精神を汚染し狂化する。


 アクセサリー


 その1:暴君のマント

 状態:呪い(恋愛運減少)

 効果:火炎無効・冷気無効

 説明:とある滅びた国の最後の王が纏ったマント。数多くの魔術師の血を含ませた糸で編まれたマントは、あるゆる吹雪や炎を遮断するが、纏った者を怨念で狂化する。


 その2:無慈悲の指輪

 状態:呪い(サゲマン)

 効果:クリティカル確定

 説明:酷い生理痛に悩まされた女王がはめていた指輪。イライラで使用人を殴っているうちにクリティカル効果が付与された。ただし、生理痛の呪いも付与されている。










「ザッドハァァァァァァァァク!!」









 ◇◇◇◇


「しかし、お主は凄いのぅ」


 メル婆が様々な日用品などを手にしながら口ずさむ。


「早速装備の力をこれほどに活用できるとはのぅ」


 そしてチラリと店内の片隅へと目を向ける。


 そこには眼窩から青白い炎の瞳が消え失せた骸骨騎士が、口から泡を吹いて倒れていた。


「カオリ。ヨユウ」


「しかも押さえ込んだ筈の狂戦士化を引き出し、制御しておるとは。とんだ逸材じゃウヒヒヒヒ」


 乙女としての存在価値を汚された私は、己の中に渦巻く衝動を一点に絞ることにより、封じた筈の狂戦士化の力に制御することに成功し、自由にいつでも発動することを可能とした。


 これはメル婆もザッドハークも全く予想外のことであり、本来は不可能なことらしい。


 だが、出来たんだから仕方がない。


 まぁ、そのまま衝動をザッドハークにぶつけたおかげで、装備の力と使い方を学ぶことができた。


 発動中は多少言語が不自由になるけど仕方あるまい。


 特に『無慈悲の指輪』については素晴らしいの一言だ。


 ザッドハークの意識を一瞬で刈り取ったのだから。


 流石の代償を払っただけの力だ。いい仕事をしてくれた。


 だが、早く教会に行かねば。


 ………駄目だ。意識しないと心の内側まで漢っぽくなってしまう!!


 そんな風に頭を悩ませてる間にも、メル婆の手は止まらない。


「さて……装備に着替えに日用品。旅の必需品等に……多少の保存食と。準備はこんなもんかのぅ」


 メル婆が机に並べられた品々を見ながら呟く。


 見れば、そこには様々なものが置いてあった。


 数日分の着替えに予備の服や靴。ランプに水筒にナイフや皮袋。テントや縄といった他にも、何に使うか分からない玉や瓶にはいった薬らしきものなど、ありとあらゆるものが並んでいる。


 ザッドハークが気絶したために、メル婆に旅に必要な一通りのものや、お薦めの品を揃えてもらったのだ。


「まぁ、これが大体の旅に出るのに必要な大体ものかのぅ。後は必要になれば買い足すなりすればよいな」


「ドウグ。イッパイ」


「もう狂戦士化を解きな」


 ハッ!そうだった。


 メル婆の言葉に、意識を集中し心を落ち着かせる。凪いだ水面をイメージし、心をひたすらに落ち着かせると……。


「よし……狂戦士化解除」


 頭がスッキリし、体が軽くなる。


 狂戦士化の解除に成功だ。


 そんな解除に成功した私をメル婆が驚愕の表情で見ていた。


「本当に成功しておる……。どういう理屈じゃろうか?」


「気合いと根性です」


「盾の影響かのう………」


 嘆かわしそうな目でメル婆が私を見てくる。


 聞かれた内容に答えただけなのだが………解せん。


「さて、支度は終わったが………この道具はどうするんじゃ?なんなら、とっときの魔法の道具袋もサービス価格で提供するが?」


「それなら大丈夫です……『収納』!」


 メル婆の前にある道具に手をかざしてスキルを唱えると、道具が一瞬にして消えてしまう。


「ほう………これが噂に聞く勇者の収納スキルかい。ほぼ無限に収納できると聞いちゃいたが大したもんだ」


 ほうほうと感心したようにメル婆は頷く。確かに物を手間も場所も取らずに運べるなんて、凄く便利なスキルだもんね。


「それで………色々と買ったけど、総額はいくらぐらいかな?」


 一応金貨は一万枚あるけれども、それでも詳しい物価が分からないから心配だ。


 まして、装備を一通り揃えたんだし、結構な金額をしている筈だ。


 私の言葉にメル婆が算盤を取りだし………あるんだ算盤………カチャカチャと計算を始めた。


「そうだね……服は割引で、装備も元々は在庫を余しておったから割引して……日用品と食料品……薬品類ときて……更にテントに簡易魔道具数点で……フム。端数は切り捨てて、しめて金貨3000枚でどうだい?装備が呪われていたとはいえ全て魔法付与。それもS級の装備だ。かなりの特価だとおもうがね?」


「3000枚………分かりました」


 払えない額ではないね。払っても半分以上残るしね。


「ところで………収納にしまったものを出すにはどうすればいいんです?」


 収納したはいいが、それを出す方法は聞いていなかったからね。


 アドバイザーは今も泡を吹いているし、メル婆に聞くしかないね。


「収納にしまったものをかい?それなら出したい物をイメージしながら手をかざし、『解放』と唱えるんだよ」


「成る程」


 メル婆が教えてくれたので、言われた通りに机の上に手をかざして金貨をイメージする。


「『解放』」


 教えられたとおりに唱えると、かざした手のひらの先が光り、そこから先程しまった金貨の袋がボンと出てきた。


 巨大な袋が2つ、何も無いところから急に出てくるというのは中々に凄いな。


 すると、そんな出てきた袋をメル婆が、これまた驚いた顔をして見ていた。


「あんた………これまた、一体どれくらいの金が入っているんだい?明らかに尋常じゃない量だよ………」


 驚きと呆れが混じったような口調で話してくるメル婆。


 うん。薄々思ってたけど、やっぱ普通の量じゃないのね。


 流石はザッドハーク。やらかしてくれるわ。


「まぁ……王様からの心付けってやつなのかな?魔王との戦いに備えて、金貨一万枚を……って貰ったんだけど……」


 そう言うと、メル婆は更に目を見開いて驚く。


「金貨一万枚?!あの凡愚で女遊びの酷い王にしては太っ腹だね!!噂じゃ、愛人やらに貢ぐ『愛人貯金』なんてものをしてるって噂もあったが、眉唾だったかね。世界を守るために財を投げうつなんて大したもんだ。見直したよ」


 すいません。多分これがその『愛人貯金』です。


 ザッドハークが洗脳で貢がせた汚い金です。


 というより、そんな噂が流れてしまう程に女好きな噂があったのかよ王様。金貨を貰った罪悪感が薄れてきたよ。私が使った方が、まだ国のためになると思うよ。


 本当にあの王様で大丈夫なのだろうか、この国は。


 一抹の不安を感じながらも、気に為ったことを質問することにする。


「あと……聞きたいんですが、金貨の価値や物価が分からないですが、教えてもらえますか?」


 袋を開けて金貨を数えだしてメル婆に物価について聞くと、目をギョロっと向けてきた。


「物価を?あぁ……そう言えば異世界から来たからそういったものも分からないのかい。いいだろう、教えてやるよ」


 そう言うと、メル婆は服のポケットをゴソゴソと漁りだした。


 うん。このメル婆って見た目はおっかないけど実は優しくて面倒見がいいよね。こういう人程アドバイザーに欲しかったなぁ。


 ザッドハークじゃなくて。


 そんな事を考えている内に、メル婆はポケットから複数のコインを取り出して机に並べた。


「これがほとんどの国々で共通で使われている硬貨だよ。右から石貨、小銅貨、銅貨、銀貨、金貨だよ。後は上に貴金貨、王金貨なんてもんがあるが、これは王族や貴族が大掛かりな取引で使うもんだから除外しようかね」


 そう言って並べられたのは、その名の通りの黒っぽい石と、金銀銅で造られた硬貨だった。


 ほう。これがこの世界の貨幣なのか。金貨しか見てないから分からなかったけど、民間に出回っている中では金貨が一番上の価値があるんだね。


 日本で言えば、一万円みたいなものかな。


 まじまじと硬貨を見ていると、メル婆は銅貨よりも一回り小さい石貨を手にとった。


「こいつが一番価値が低い石貨じゃ。これが十枚で一小銅貨。小銅貨十枚で一銅貨。銅貨十枚で一銀貨。銀貨が十枚で一大銀貨、大銀貨が十枚で一金貨となるんじゃ」


 へぇー。成る程成る程ね。ということは、日本円にすれば石貨は一円。小銅貨は十円で銅貨は百円。銀貨が千円、。金貨が一万円ってところか。


 となると………あれ?


「ついでに、物価については、大体パン一つで銅貨一枚ってとこじゃろうな。宿屋であれば安い宿屋が銀貨3枚で泊まれるのぅ」


 パ、パン一つが銅貨一枚。と、となるとやっぱり価格的に日本円でパンが百円だから………。


 今の手持ちが…………。


「いっおくぇぇぇぇぇぇぇぇん?!」


「ほわぁ!?なんじゃい!!」


 メル婆がビクリと飛び上がって驚くも、私はそれ以上の驚きで心臓が飛び出すかと思った。


 ザッドハーク!ど、どんだけぼってんのよ?!いくらなんでもボリ過ぎでしょうが!?日本円価格で約1億円をぼるってなんなの!!や、やり過ぎでしょうが!?


 てか、王様!?どんだけ愛人に貢ぐつもりだったのよ?!馬鹿なの?馬鹿なんでしょう?!貢ぎ過ぎでしょうがぁぁぁ!!


 そ、そして、このお店でのお支払が約三千万円!?三千万円?!そんなお高い買い物を何気なくしてたのですか私はぁぁぁ!?!?


 とんでもねぇ、買い物してたぁ!!


 というか私、そんな額を街中で引きずってたの?馬鹿なの?馬鹿なの私?


「どうしたんじゃ?急に叫んで?まだ、狂戦士化が解けておらんのかえ?」


「えっ?いや、あの、と、とんでもない額を持っていたんだなって、思って………」


「今さら………いや、詳しい金の価値を教えとらんザッドハーク(こやつ)が悪いのだろうのぅ………」


 メル婆は余りの金額に驚く私を哀れみの目で見た後、更にザッドハークを横目で見てから呆れたようにため息をつく。


「まぁ、今後は無闇に金を人前で出さぬことじゃな」


「は、はい………」


「取り敢えず、品物の代金は貰っておくからのぅ」


 そう言うと、メル婆は袋から金貨を取り出し、黙々と数えだした。


 その光景を見ながら、私は心の中で固く誓った。


 ………今後は本当にお金の管理は気を付けよう。


 マジで。

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