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153話 決着と大爆発


 勝敗は一瞬で決した。

 

 バハネロの奥義・闘我羅死トウガラシがミロクの覇威受離乱舞ぱいずりらんぶよりも早く彼女の身体を捉え、その肉体に尋常ならざる辛味成分を叩き込んだ。

 

 そのスコヴィル値と言えば、激辛料理のリアクション芸で定評のある出◯や、あば◯るくんでさえ『これは無理』と、素で食べることを拒否するほどであった。

 

 そんな奥義を受けたミロクだが、艶かしい喘ぎ声を上げながらぶっ飛び、そのままリングへと落下。そして、所謂『アへ顔ダブルピース』状態でピクピクと痙攣したまま動かなくなった。

 

 その様子たるや、エロ漫画でよくある、ヤリサーに散々エロ漫画媚薬を射たれた末にやり捨てられた女子大生のようであった……。

 

 バハネロはそんなピクピクと痙攣するミロクを見下ろしながら呟いた。

 

「当方がこれまで出会ったことのない、恐ろしい相手であった……。だが、当方の勝ちだ」

 

 そう言って踵を返しつつ、最後に小さく呟いた。

 

覇威受離乱舞ぱいずりらんぶ……。非常に興味はある技であった。いずれ、どこかで披露してもらおう……ミロクよ」

 

 カンカンカァァァァァン!!

 

 試合終了のゴングが鳴り響いた。


 勝者:2000万プランターズ

 試合時間:6分24秒

 決まり手:闘我羅死トウガラシ

 

 

『試合終了ぉぉぉぉ!!勝者は2000万プランターズでした!』

 

『何とも激しい試合でしたね。具体的には観客の被害が』

 

『まあ、場外乱闘はよくあることですし、仕方ありませんよ。なんか文句言ってきたら、握らせるもんを握らせるか、権力ってやつを見せつけてやるまでですね!』

 

『闇が深い……。人間怖い……』

 

『まあ、観客の被害はさておき、素晴らしい試合でした!それでは皆様、改めて2000万プランターズに盛大な拍手を!』

 

 すると、会場中から盛大な拍手が鳴り響いた。主に、野郎共からだ。

 

 彼らは満足した顔をしながら『よくやった!』『仕事人だな!』『興奮した!』と、バハネロを誉め讃えた。

 

 そんな彼らを女性陣は路傍の小石でも見るかのような目で見ていた。

 

 プランターズはそんな彼らの声援と拍手に腕を上げて応えた後、もときたゲートの方へと帰っていった。

 

『さて、それでは続いて第2試合──といきたいところですが、リングが凄いことになっているので、一度リングの片付けをしたいと思います!』

 

『ローションまみれだからな……』

 

『それでは片付けの間、眼帯少女ズの歌をお楽しみください!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『眼帯わっしょい!眼帯わっしょい!眼帯わっしょい!眼帯わっしょい!眼帯わっしょい!眼帯わっしょい!あぁ~眼帯わっしょい!』

 

『ありがとうございました!眼帯少女ズによる『眼帯音頭』でした!』

 

『人間の音楽センスかわからない……』


『大丈夫です!私も分かりません!』

 

『じゃあ、なんで歌わす?』

 

『という訳で、次の試合の準備が整いました!』

 

『私の話聞いてる?さては言葉は通じるが、話が通じないタイプか?』

 

『さあ、選手の入場です!まず、赤コーナーからは、金とピンクの美女コンビ『ゴージャスレディース』の入場です!』

 

「「「「ワァァァァ!!」」」」

 

 イロハの紹介とともに赤コーナーのゲートからゴルデとシルビの二人が入場する。二人は観客達に手を振りながらリングへと入っていった。

 

『続いて青コーナーからは、初々しくも情熱的な恋人タッグ(チッ)、LOVE & LOVE'sの入場です!』

 

 青コーナーからハンスとローズの二人が手を繋ぎながら入場してくる。それを見た観客席の四割はその初々しさにホッコリし、残りの六割は盛大に舌打ちした。

 

 そんな舌打ちを他所に、ゴージャスレディースとLOVE & LOVE'sがリング上で対面した。

 

『さあ、この個性溢れ過ぎる選手達の中においては比較的まともな者同士により試合となりますね!』

 

『?……私もまともですが?』


『寝言は生まれ変わって人間になってからほざけ、このカブトムシが。それで、カブトムシさんはこの試合をどう見ますか?』

 

『えっ?生まれ……。あ、はい。試合ですか。試合はそうですね……。私はゴージャスレディースが優勢と考えています』

 

『ほう。それはどういった理由でしょう?』

 

『ゴージャスレディース……特にシルビ選手の服。あれの効果は凄まじい。あらゆる攻撃を無効化しつつ、一方的に攻撃する。普通に考えてどうすることもできません』

 

『確かに』

 

『それにそもそも、ハンス選手達は一回戦は相手の自滅で勝ち上がってきただけですからね。まぐれも二度は続かないでしょう。経験・実力。どちらを見てもゴージャスレディースの勝ちは揺るがないでしょう』

 

『なるほど、確かにそうですね。これはLOVE & LOVE'sの分が悪いか?』

 

 などと実況しているイロハ達をゴルデは見ていたが、ゆっくりと対面するハンス達へと顔を向けた。

 

「で、あんなこと言われてるけど?」

 

 ゴルデがそう言うと、ハンスは苦笑いした。

 

「まあ、間違ってはいませんからね。実力で二回戦まできた訳じゃありませんから。でも……」

 

「でも?」

 

「ここからは全力で頑張って勝たせてもらいます。ローズのためにも…親方達の仇をとるためにも!」

 

 ハンスは拳を構え強い眼光でゴルデを見た。

 

 そんな彼の姿にゴルデは微笑みを浮かべた。


「言うじゃない。流石は男の子ね。でも、私達だって負ける訳にはいかないわ。優勝賞品……もあるけど、カオリに灸を据えなきゃいけないからね…」

 

「ええ。こんな恥ずかしい格好を人前に晒したんだから、絶対に賞品は私達が手にするわ。あと、ハンナは殺す。絶対だ」

 

 ゴルデとシルビからは優勝したいという強い想いと、それ以上にやりたい放題の香達を一発ぶん殴ってやりたいという強い想いが伝わってきていた。

 

『おっと両チーム睨み合っております!早くも火花が飛び散っておりますね~』

 

『これは試合が楽しみですね。そういえば、今回の試合の方式はなんでしょうか?』


『あっ、そういえばまだ決まってませんでしたねが……って、何?えっ、私がクジを引くの?じゃあ、こっから引けばいいのね。えっと……』

 

 実況席に突然クジが入った箱を持った黒子が現れイロハにそれを掲げる。イロハは戸惑いながらも一枚のクジを引き、中身に目を通した。

 

「試合形式……ね。カオリが裏で糸を引いてるだろうから、きっと碌なものじゃないわね」

 

「それは同意します。燃えるリングやら電流リングやら……嫌な予感しかしませんよ」

 

「さ、流石に怖いけど、ハンスがいれば頑張れそう。それにどんな状況下でどちらが勝ち上がってもカオリを倒したい者同士だから、そこは安心かな?」

 

「まあ、どんな過酷なリングだろうと私の魔法少女用戦闘服(妖精メイドタイプ:対象年齢12歳)の前では無力だけどね(泣)」

 

 各々が嫌な予感を感じつつもどこか落ち着いた様子でクジの結果を待つ。普通だったらソワソワと落ち着かないだろうが、これまで散々香からの暴虐を受けたメンツだけに、どこかその対応に慣れきっていた。まさに香限定の歴戦の猛者である。

 

 そんな猛者達が待っているなか、イロハが引いたクジの内容を発表する。

 

『えっと、試合形式は……』

 

 燃えるリングか?

 はたまた電流が迸る感電リングか?

 毒蛇やら金網があるような過酷なリングか?

 

 ゴルデ達が様々な予想を立てる中、いよいよクジの結果が読み上げられた。

 

『えー……厳選な……本当に厳選なクジの抽選の結果、今回の試合形式は【足元注意!ドキドキ地雷源バトル!】……だそうです』

 

 一瞬、ゴルデ達は何を言われたのか分からなかった。イロハの言葉に皆が怪訝そうに眉をひそめたあと、真顔で「ハッ?」と呟く。

 

 それほどクジの内容が衝撃的かつ意味不明だったのだ。

 

『えークジに書いてある内容によれば、リング上の至るところに地雷が仕込んであるので、それを上手く回避しながら戦う過酷な試合形式だそうです。過酷すぎやしませんかね?』

 

 微妙な表情をしながら説明するイロハ。そんな彼女にフリーズしてたゴルデが叫んだ。

 

「いや、ちょ?!な、何よ、その試合形式は?!過酷云々以前に理不尽すぎるでしょ?!地雷って何よ?!そんな危ないもんリングに仕込んでじゃないわよ!?」

 

 喚くゴルデにイロハが困ったような顔をする。大会役員に雇われた身のイロハからは何も言えないしできないのだ。彼女らの健闘を願うしかできない。

 

「ま、まあまあゴルデさん。地雷って言ってもそこまでの威力じゃないのでは?僕らの戦いがメインだし、せいぜい驚かす程度の威力とか……」

 

『尚、地雷の威力は一個でリング一つ分の面積を爆破する程度のものと書かれています』

 

「一個踏み抜いたら終わりじゃない?!」

 

 実質、踏んだら試合終了も同然である。そんなどちらも圧倒的ピンチのなか、ただ一人……シルビだけが笑っていた。

 

「シルビ……?あんたなんで笑ってるの?」

 

「フフ…忘れたのゴルデ。私が今着ている服の性能を?」

 

「あっ!」

 

 そう、シルビが着用する魔法少女用戦闘服(妖精メイドタイプ:対象年齢12歳)はあらゆる攻撃を無効化する。ならば、地雷による爆破だって平気なはずだ。

 

「フフ……。ハンスくん達には悪いけど、今この場で圧倒的に有利なのは──」

 

『なんか地雷について書いてありますね。使われてる地雷は精霊無効化地雷というやつで、精霊の力を無効化するご都合主義の地雷と…』

 

「チクショウがぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 シルビが雄叫びを上げた。既に対策をされていたようだ。

 

『えー、では試合開始です!』

 

 試合開始のゴングが鳴らされた。

 

「くっ!!もう地雷は作動したの?!あなた達、無闇に動かないで!まとめて殺られるわよ!」

 

「「は、はい!」」

 

 と、全員がゴルデの指示に返事をした同時に、彼女らの前に何かが投げこまれた。

 

 それは骨だった。何の骨かは知らないが、何かしらの肉料理を食べた後に残る食べ残しらしきものだった。多分、スペアリブかなんかの骨。

 

 ゴルデは骨が投げられた方に視線を移す。そこにはVIP席でスペアリブを頬張りながら満面の笑みを浮かべる香の姿があった。

 

 彼女はゴルデの視線に気付くと、声を出さずに口だけでパクパクと彼女にメッセージを伝えた。

 

 それは……。

 

『オ・ツ・カ・レ・サ・マ・♥️』

 

 リングに投げ入れられた骨が床に落ち、そこから『カチリ』という明らかな作動音が鳴った。

 

「カ、カオリィィィィィィィ!!」

 

 ゴルデの怒声とともに、リングが大爆発を起こした。

 


 勝者:なし

 試合時間:48秒

 決まり手:地雷

 

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