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132話 Aブロック一試合・二試合


『さあ、いよいよ第1試合開始です!まずは青コーナー!森からやって来た子供達の人気者!ファイティグ・インセクトです!』

 

 イロハの紹介に合わせ、人型カブトムシとクワガタが手を振りながら入場する。彼らの入場に子供達が沸き立つ。

 

『続いて赤コーナー!燃える闘魂改め闘根!大地からの刺客!2000万プランターズです!』

 

 既にリングへと入っているトゥルキングとバハネロは、無言で腕組みしながらファイティグ・インセクトの入場を待っていた。

 

『さあ、いよいよ試合開始ですが、ジャンクさんはこの試合はどうなると思いますか?』

 

『どちらも未知数過ぎて判断がつかねぇよ……。樹木VS昆虫って……。解説するなら、せめて人間同士の闘いであってほしかった…』

 

『ということです!どちらも実力は不明!試合が始まるまでわからない!ならば、とっとと試合を開始しましょう!では、レディ……ファイト!!』

 

 カーンッ!!

 

 イロハがゴングを鳴らし、試合開始を告げる。

 同時に、リング内に残ったカブトムシが対峙するトゥルキングへと突っ込んでいった。

 

「プランターズだか何だか知らないが、我ら昆虫の力の前に沈むがいい!喰らえ、デッドホーン!」

 

 角を構え勢いよく突っ込むカブトムシ。必殺技名を叫ぶだけあって、その一撃は凄まじいものがあった。

 

 だが……。

 

「ハア!!」

 

「な、なにぃぃぃ?!」

 

 なんと、トゥルキングはカブトムシの角の一撃を難なく片手で受け止めたのだ。

 

「ば、馬鹿な?!ドラゴンをも一撃で突き殺す我が角が……?!」

 

「ならば我がドラゴンより強いだけのこと。次はこちらの番だ!貴様らに恨みはないが、我が目的のために倒させてもらおう!」

 

 驚愕するカブトムシを他所に、トゥルキングはカブトムシの角を両手で掴むと、そのまま身体ごと勢いよく振り回し始めた。

 

「フンフンフン!」

 

「グワァァァァァ?」

 

「カ、カブトムシ!?」

 

 体重200㎏近いカブトムシがいとも簡単に振り回される様子に相方のクワガタが戦慄する。

 トゥルキングはそんなロープ際で硬直しているクワガタ目掛け、カブトムシを勢いよく放り投げた。

 

「なっ!?グワァァァァァ?!」

 

「ギャアアアア?!」

 

 ぶつけ、ぶつかったカブトムシとクワガタが絶叫を上げる。そんな二体へと、トゥルキングが追い討ちをかけた。

 

「本当の角の一撃を見せてやろう!」

 

 カブトムシ達へと突っ込んでいくトゥルキングだが、そんな彼の頭部の枝の一本が急速に伸びていく。

 

 やがて、その枝は巨大な牛の角のような形へと変貌した。

 

「喰らうがよい!ドラゴンをも切り刻む我が一撃!プラントミキサー!!」

 

「「ギャアアアア?!」」

 

 トゥルキングの枝の角による一撃がカブトムシとクワガタを纏めて薙ぎ払う。二体は揃って場外まで吹き飛ばされ、地面へと落下。

 

 落ちたカブトムシ達にレフェリーが駆け寄り様子を伺うが、彼らはピクピクと痙攣するだけで完全に意識を失っていた。

 

 レフェリーが腕で×を作り、首を横に振った。

 

 勝敗が決した。

 

 カンカンカーン!

 

『け、決着ぅぅぅ!?勝者2000万プランターズだぁぁぁぁぁ!!』

 

 会場から一斉に歓声が沸き起こる。

 

『互いに実力は未知数でしたが、終わってみれば何とも一方的な展開でした!!プランターズのトゥルキング選手一人でファイティグ・インセクトの二名を倒してしまいました!何という実力でしょう!』

 

『まあ、前にカオリ嬢ちゃんを追い詰めた程の奴だし、これぐらいはやるだろうな。対するカブトムシは、聞いた話じゃ先日セミに負けたらしいしな。つか、強いならセミ出せよ。なんでセミは来なかったんだ?』

 

『あー……情報きてますね。全員、天寿を全うしたと』

 

『あー……セミだもんなぁ……』

 

 なんとも悲しい事実が知らされたが、試合の興奮に沸き立つ観客達は特に気にもとめなかった。

 

『さあ、それでは勝利者にインタビューです!トゥルキングさん!今の試合はどうでしたか?』

 

『どうということはない。我が敵はただ一人。それ以外は眼中にもないわ』

 

 そう言ってトゥルキングはある場所を睨んだ。

 

 そこには玉座に座った香がおり、彼女は※グラスを片手に不敵な笑みを浮かべながら観戦していた。

 

 ※中身はブドウジュースです。

 

『なるほど!狙うは頂点ということですね!ありがとうございました!』

 

 試合に勝利したトゥルキング達を称賛する拍手の中、彼らはリングを後にした。

 

 そして興奮冷めやらぬ中、次の試合が始まった。

 

『それでは第二回戦です!青コーナーは、チーム名のせいで先ほど舞台裏でみっちり説教を受けた鬼嫁こわいんズ!』

 

 試合前なのに既にげっそりした顔の中年二人がトボトボと入場する。そんな二人に観客席から渇が入った。

 

「あんた!負けたら承知しないよ!小遣い減らすからね!!」

 

「だらしない姿を見せたら、家に帰れると思うなよ!」

 

「「ひっ?!か、かあちゃん?!」」

 

 見た目から肝っ玉母ちゃんという風貌のふくよかなおばさん二人の声にタケゾウ達が顔を青くする。

 

「「「とうちゃ~ん!がんばれ~!」」」

 

 そんな青ざめた表情の中年達の味方は子供達だった。彼らの子供達、合わせて総勢16人が手作りの旗やら看板を一生懸命に振っていた。というか、子宝だな。

 

「お、お前ら!?お、おし!頑張るぞ!子供達にいいとこ見せようじゃないか!!」

 

「だな!子供らの前でカッコ悪いとこは見せられねえ!なにより、この応援で勇気百倍だ!誰だろうがかかってこいや!」

 

 タケゾウ達が気を持ち直し互いを鼓舞する。

 子供達の後押しもあり、彼らの闘志はみなぎっていた。

 

 普段は嫁に尻にしかれる冴えない中年。されど、たまには父親のカッコいいところは見せたいと常々思っていた二人。

 

 ならば、この大会こそがその場ではないか?

 

 そう決意し、たるんだ腹に渇を入れ、筋トレを行い、なんとか予選を勝ち抜きここまできた。

 

 嫁に言われるまでもねぇ!俺達がてっぺん取ってやるぜ!そして格好良い親父の背中を魅せてやる!嫁も惚れ直すだろう!

 

 ここが父親の威厳を見せどころ!タケゾウ・シゲル共に46歳!今こそ、真の漢を魅せるときだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでは対する赤コーナーは、女性二人のタッグチーム!『痴女連合』です!』

 

「どうぞ、お手柔らかに」

 

 ミロクが舌舐めずりしながら微笑んだ。

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