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130話 決意表明

「なっ?!カ、カオリ?!貴様、このトーナメントとやらに参加する気か?!」

 

 トゥルキングが達が驚いたように仰け反るが、何を驚いているのか理解できない。

 

「無論。戦と聞けば闘わずにおれぬのが戦士の定めなれば、これも宿命として受け入れよう」

 

「先程、自分は戦士ではないて言っておらなかったか?!」

 

「時代は常に千変万化。理は常に変化するもの。それは人も同じ。先は乙女、今は武士もののふに変わっただけのことよ……」

 

「いや、完全に賞品狙いで気が変わっただけだろう、これ………」

 

 トゥルキング達が困惑したような目で見てくるが関係ない。私は私の思うままに戦い、欲するものを手にするまでよ。

 

『カオリ』

 

 ハンナが私へと手を差し出してきた。

 

 その目を見て………私は全てを理解し、手を握り返した。

 

「共に逝こうぞ」

 

『我らが宿願を果たさん』

 

 ハンナとガッチリと握手を交わす。同じ志を持つ彼女とならば、きっと『乙女の雫』を手にすることができるだろう。

 

 そして、モテモテハフハフな逆ハー生活が……。

 

「では、ハンナよ……分かっているな?」


『合点承知の助』

 

 私とハンナはエマリオさん達に背を向けた。

 

「エマリオよ。試合の報せを待つ」

 

 そう言い残し、私達は揃ってギルドを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 そして、残されたトゥルキング達は唖然と去り行くカオリの後ろ姿を見ていた……。

 

 が、いち早くトゥルキングが我へと返った。

 

「これは……一応はカオリと戦えるということか?」

 

 誰に向けたものか分からないトゥルキングの呟きに、サーモンマンが返した。

 

「そのようだな。ならば、そのトーナメントとやらに出るしかあるまい……」

 

「オデ、ハラヘッタ」

 

「彼は『人間如きの案に乗るのは癪だが、これで勇者と戦えるならば話は早い。我らもトーナメントとやらに出るとしよう。そして、勇者カオリを……我らが倒す』と仰っています」

 

 ビック=ボーイの発言を皮切りに六人が睨みあった。

 

「ほう……随分とデカイ口をほざくものだな。なあ、バハネロよ」

 

「そうだな。後で後悔するぞ?カオリと戦うのは我々十大植傑チームだ」

 

「フン!その言葉、そのまま返そう。カオリを倒すのは我々海鮮帝国なり!シャケケケ!」

 

「作用!中途半端な植物と魔族如きは恥をかく前に田舎に帰りな!サババババ!」

 

「オデ、ハラヘッタ」

 

「我が剣に斬れぬものなし」

 

「彼らは『勇者カオリの首を取るのは我らだ。去らぬならば、貴様ら諸とも首を狩ってやろうか?』と仰っています」

 

 六人がバチバチと火花を散らす。

 

 まさに一触即発。

 

 だが、六人はまるで示し合わせたかのように互いに背を向けた。

 

「まあ、いい。ここは見逃してやる。決着は試合でつけようぞ」

 

「それはこちらの台詞だ。試合で我らの力を見せつけてやる。シャケケケ」

 

「我が剣に斬れぬものなし」

 

「彼は『魔族の真なる恐ろしさを見せてやる。試合の日が貴様らの命日だ』と仰っています」

 

「「「エマリオとやら。試合の報せを待つ!」」」

 

 そう言い残し、それぞれの方向へと去っていった……。

 

※ギルドの出入り口は一つなので、結局そこでかち合うことなるのだが。

 

「おっと、こうしちゃいられません!試合の手配と準備をしなければ!あとは、他にも参加者を募って……」

 

 エマリオも何やらブツブツと呟きながら、足早にギルドを後にした。

 

「何やらおも……騒がしくなってきたものだな」

 

 ザッドハークがジョッキに入った酒を飲みながら呟くと、ジャンクや村長達はやれやれと肩を竦めた。

 

「なんだか妙なことになったな。乙女の雫を賭けたトーナメント戦か……。まあ、嬢ちゃんを釣るには持ってこいの餌だな」

 

「そうですな。しかし、あのエマリオとやらも中々に商魂逞しいですな。カオリ殿という危け……何をするか分からない方を使って儲けようとするとは」

 

「だな。しっかし、他にも参加者を募るなんて呟いてたが、あんな危な……個性的なメンバーが集まる大会に参加する物好きなん───」

 

 ガタンガタリ。

 

 ジャンクの言葉を遮るように、ギルド中の各所から音が響く。

 

 見れば、あっちこっちで冒険者が……正確には女性達を中心に席から立ち上がっていた。

 その中には、ゴルデやシルビ達といった身近な女性陣もいた。

 

「あれ?あの………ゴ、ゴル───」

 

「ちょっと用事思い出したわ。行こう……シルビ、ブロズ」

 

「ええ、そうね」

 

「いきましょう」

 

 ジャンクが声をかける間もなく、ゴルデ達が足早に去っていく。他の席でも女性陣が次々とギルドを後にしていった。

 

 残っているのはゴアとミロクとアリスという、女子力に興味ない面子だけである。

 

「な、なあ………これって………」

 

「うむ。皆考えることは同じようだ。どうやら、トーナメントとやら………荒れるぞ」

 

 ザッドハークの言葉通り、このトーナメント開催が発表された直後、アンデル王国中の空気が一変することとなった。

 

 国中の女性が殺気と闘気を剥き出しにし、来るべき日に向けて修練に励む姿が目撃されるようになった。

 

 こうして、アンデル王国中を巻き込む一大騒動の幕が上がろうとしていた………。

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