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閑話 魔王軍幹部達は語らう その2

 

 魔族の王都ゲスランド。その都市の中心に聳え立つ魔王城の一室では、魔王軍の幹部たる十三魔将達のうちの十名が集まって会議が行われていた。


 が、会議とはいっても誰も何も語らず、ただただ重苦しい空気だけが流れていた。


 暫し重苦しい沈黙が流れるだけであったが、やがて一人が意を決したように口を開いた。


 


 ※ここから先より会話パートになります。


 

 1「……皆、既に聞いていると思うが、我らの序列第二位のアリスが勇者によって倒された」


 4「聞いた時はなんかの間違いじゃないかと思ったけど、やっぱり本当なのね……」


 1「現場に派遣した暗部が直接見たらしく、間違いないとのことだ」


 6「あのアリスが………。いまだ信じられんわい」


 5「ヒョヒョ………独断専行かつ我が儘で手に負えぬ性格ではあったが、その実力は本物じゃった。そのアリスを倒すとは………」


 10「やはり、勇者は侮れませんね………」


 2「チッ!なんてこった!いきなりアリスが殺られるとはよ!」


 7「………」


 8「我が剣に斬れぬものなし」


 9「オデハラヘッタ」


 2「チッ!こいつらはブレねぇな!ところで魔王様から今回の件について何か言ってねぇのか!そもそも姿が見えねぇんだが?」


 1「魔王様なら『アリスたんが?!嘘だろ?!』と、アリスが倒されたことに酷くショックを受け、今は部屋に閉じ籠っていらっしゃる」


 2「チッ!また閉じ籠ってんのかよ?!あれが魔王で大丈夫なのかよ?!」


 4「というか、魔王様はアリスのこと『アリスたん』って呼んでたの………」


 6「そういえば、例の押収された証拠品の中にアリスの水着特集があったような?」


 2「チッ?!おい………それって………」


 5「また開いてはならぬ扉を開いてしまった気分なんじゃが………?」


 1「貴様ら黙らぬか!!余計な詮索は魔王様への不敬と見なし反逆罪とするぞ!!むしろ、魔王様が部下にも色目を使うような、どうしようもない屑で下衆野郎であることを誇るのだ!その下卑た品性こそが魔の中の魔!真なる魔王の証であろう!!」


 4「だから、あんたが一番不敬じゃない?」


 6「この組織、本当に大丈夫なのか?」


 5「ヒョヒョ……。まあ、気になることや無視できないこともあるが、今はこれからのことを話そうぞ。それで真面目な話、勇者をどうするぞ?」


 4「どうする………って、言われてもねぇ。本当にどうしようかしら?」


 6「アリスを倒すほどの実力者だ。正面からいってもまず無理だろう」


 2「チッ!悔しいがその通りだ。謎の七大罪に目覚めた奴をも倒したやつだ。俺の実力じゃ、まず返り討ちに合う」


 5「儂もじゃな。そもそも儂は戦闘には向かないからのぅ………」


 10「策を巡らすのが良いかと思いますが、それにも現状では情報が足りなさ過ぎますね」


 6「やはり情報か………。確かに、勇者に関する情報が足りなさ過ぎるからな。お前らはどう思う?」


 7「………」


 8「我が剣に斬れぬものなし」


 9「オデハラヘッタ」


 2「チッ!こいつらは使いものにならねぇな!俺もまずは情報を得ることが先決だと思うぜ!」


 4「脳筋のあなたにしては建設的な意見ねぇ」


 2「チッ!うるせぇな!!」


 4「誉めてるのよ。それで、やっぱり今アンデル王国に潜入させているペトラって奴に勇者を探らせる訳?」


 1「ウム。今も勇者にバレることなく付近で情報を収集中らしい」


 5「ほう………なかなかに優秀な奴じゃのう」


 6「確かに。それでアリスをサポートできる強さがあれば尚よかったのだかな」


 1「情報収集に特化してる故、戦闘に向かないらしいので仕方あるまい。だが、それ故にバレることなく情報を収集できているのだ。幸いと言えよう」


 5「それは言えていよう。では、暫しは下手に接触せずに様子見に徹しようぞ」


 6「それがよかろう」


 4「私も賛成よぅ」


 2「チッ!俺もだ!………ところで、今日はそいつが一言も喋ってねぇがどうしたんだ?」


 4「そういえばそうね。どうしたのよボク?」


 3「………あっ?ボ、ボクですか?」


 4「そうよぅ。ずっと黙りだけど、体調でも悪いのぅ?」


 6「そういえば、心なしか顔色が悪いのぅ」


 3「い、いえ、何でもないです。す、少し考えごとをしていて………」


 2「チッ!ならいいが。ところで、その考えごとってのは、もしかして勇者に関してか?」


 3「えっ……と……。は、はい、そうです……」


 5「ヒョヒョ……。勇者への対抗策でも練っておったのかのう?」


 3「あっ………はい。そんなところで………」


 2「チッ!マジか?!なんか作戦でもあんのか?」


 4「あら?何か案があるならぜひとも聞きたいわぁ」


 3「えっと………」


 6「遠慮することはないわい。もとより案らしき案が出ておらんのだ。何かあるなら言ってみよ」


 5「ヒョヒョその通りじゃ。若いもんの意見が是非とも聞きたいのう」


 10「私も是非是非聞きたいと思います」


 3「あの………その………」


 1「戸惑うことはない。皆の言う通り、何か案があるならば遠慮せずに申すが良い。なんらかの参考や指針にはなろう」


 3「そ、それならば………。ボ、ボクは情報収集に専念して何もしないというのには反対です」


 1「ホウ?というと?」


 3「ゆ、勇者に対し、刺客を送るべきです」


 5「刺客じゃと?それは下策じゃろう。そもそも、勇者に関する情報が少ないからこそ、手が出せずにおる。故に、その勇者の情報を仕入れ、対策を練るべく暗部の情報を待つと言っておるのじゃ。その情報を得られぬうちから刺客を送ったところで無駄に返り討ちに合うだけじゃろうて」


 4「私もそう思うわぁ」


 2「チッ!俺もだ!そんな無駄なことしたところで被害がでかくなるだけだ!」


 6「フン。儂もそう考える。が………お前がそれを考えておらぬ訳がなかろう。何か訳があって刺客を送ると言っておるんだろう?」


 2「チッ!訳だと?そうなのか?」


 3「は、はい。まず、皆さんが勇者の強さに脅威を感じているのは分かります。で、ですが、よく考えてみてください。ゆ、勇者がこちらに召喚されてから、まだそれ程長い日が経っている訳ではないのです」


 1「そうだな。暗部の情報によると、勇者が召喚されてからまだ数ヵ月しか経っていないそうだな」


 4「数ヵ月でアリスを倒すって………。とんでもない奴ね………」


 2「チッ!それで本当にヤベェ奴だ!なら、尚更慎重にいくべきだろ!」


 5「ヒョヒョ………。儂もそう考えるが………その話が刺客を送ることとどういった関係があるのじゃ?」


 3「お、大いに関係あります!勇者が召喚されてからまだ数ヵ月!数ヵ月でアリスを倒すほどに成長した!なら、これから更に強くなる恐れがあるではないですか!」


 2・4・5・6「?!」


 3「げ、現状の強さに目を奪われていますが、これから更なる力をつける恐れがあります!以前の勇者も旅をしながら力を少しずつ増していったといわれます!ならば、それは今の勇者にも言えること!いつか、本当に手が付けられなくなる程の脅威となる前に、今のうちから何らかの手を打っておくべきです!」


 4「それは………」


 10「………確かにそうですね。勇者は成長する。ならば、今以上の脅威となるのは明白」


 6「ならば、少しでも力をつける前に排除しておくべきと?」


 3「は、はい。情報収集も大切でしょうが、それに専念し過ぎて勇者が成長してしまったら意味がありません。今の勇者は力はあるでしょうが、まだ雛のようなもの。ならば、大空に羽ばたき爪を剥いてくる前に始末すべきです!」


 1「ムウ。成長過程……か。なるほど。確かにそうだ。失念していたな。今の脅威に目を取られ、先のことを考えていなかったな」


 6「ウム。そいつの言う通りだ。より強くなった時に対策を考えるも遅すぎる。ならば、今から刺客を送った方が被害が少なくすむやもしれぬ」


 2「チッ!確かにそうだ。だが、今でさえアリスを倒せる程の力なんだぜ?半端な奴を送ったところで返り討ちだぜ?」


 5「そうじゃな。理由を聞けば刺客を送ることには賛成できる。しかし、誰を送るつもりなのじゃ?現状でアリスを倒せるような者に?」


 3「そ、それには考えがあります!な、何も刺客は一人でなくともいいのです!そもそも戦力の小出しなど下策!な、ならば強力な刺客を複数送って確実に殺るべきです!」


 4「強力な刺客を複数?確かにそれならばいけるかもしれないけど、ますます誰を送るつもりなの?」


 3「そ、それは、やはり、今、魔族で強いとされる者達から複数を選んで送るべきです!」


 5「今、魔族から?」


 6「強い者達?」


 2「チッ!オイ、それってまさか………」


 


 


 


 


 


 会議が終了して暫し経った後、とある暗い部屋の隅でひとつの人影が水晶に向かってボソボソと喋っていた。


「し、指示されたとおり、十三魔将の中から二名をそっちに送り出すことに成功したよ!」


『───────!』


「えっ、いや、さ、三人以上?そ、それは無理だよぅ。こっちにも色々あるし、最大で動かせたのは二人までだったよぅ。これでも大分頑張って………」


『────?』


「ひっ?!ご、ごめんなさい!べ、別に口答えした訳じゃ………」


『──────────』


「は、はい。わ、わかったよ……。う、うん。な、なんとか頑張ってみるよ………。ただ、あ、あんまり無理は言わないでね?ぼ、僕もいつ疑われるか………」


『───────?』


「い、いや、信じてない訳じゃないけど……。う、うん。本格的に危なくなったら連絡するよ。じゃ、じゃあ、そろそろヤバイから切るね」


『──────』


「じゃ、じゃあ、そっちもあんまり無理はしないでね!そ、それじゃあね………………


 


 


 

アベッカ姉さん 。」

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